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結婚するまでは、寝室にしている部屋一面に白斗のポスター貼ってたけれど、光貴と結婚してからは一緒に暮らすようになったから、一面白斗ではなくなったけれど、唯一のポスターが残ってる!

寝室に堂々と飾っているのは、アウトラインの森やんから無償で譲ってもらった非売品のポスターだ。サイン入りで、この白斗がめちゃくちゃカッコイイから、片づけられずに今に至る。


あぁぁぁ。それにフォトスタンドもあるぅぅぅぅ!

白斗オンリーのフォトグラフで、彼の上半身アップのモノトーンでセクシーなヤツだ。普段はスタンドを倒して裏向けにしているけれど、多分今日はそのまま…。


あぁぁぁぁ。寝室の中身を新藤さんに見られたくない。筋金入りに白斗が好きというのは伝わっただろうけれど、イタイ女だと思われるのが嫌ぁ。


新藤さんはRBに精通してるから、非売品のグッズを飾ってることも、見てわかるだろう。ファンクラブ限定で買った白斗モデルのアクセサリーと時計を飾っていることに気づかれそうだ。


「緊急事態なので、失礼しますね」


「きゃっ」


軽々と抱きあげられた。「軽いですね。これからしっかりお食事して、体重を増やさないといけませんよ」


鋭い目線。意外に逞しい二の腕に触れて驚いた。

それよりお姫様だっこされているこの状況って、一体なに!?

なにがどうしてどうなった!!!!????


できることなら隠しておきたかった寝室に入られ、窓際に置いてあるフォトスタンドの中の白斗と目が合い、RBのサイン入りポスターの白斗とも目が合った。


うう…。新藤さん絶対気づいているよね……。


「律さん、私はこれからコンビニへ行って、なにか買ってきます。すぐ戻って来るので、一時的にご自宅の鍵を、お借りしてもよろしいでしょうか?」


白斗の写真については言及されなかったけれど、彼の提案に目を剥いた。


「あのっ、私、もう大丈夫です。だから、もうお帰り下さい。こんなにしていただいて、申し訳ないです」


「律さん」


新藤さんは私の顔を覗き込むようにして、ベッドのすぐ傍に腰を下ろした。


「貴女は私の妹に、よく似ています。だから困っているのをどうしても放っておけなくて。押し付けがましくご迷惑だと思いますけれど」


「そうでしたか。とても親切にして頂いて私はありがたいのですが、ご迷惑になっていないか心配でした」


「過保護ですみません」


新藤さんが笑った。柔らかい笑顔に胸の奥がきゅんとなる。

惹かれてはいけないのに、どういうわけか心が動かされる。


「でも、過保護になるには理由があるのです。私の妹は病弱で、妊娠すると同時に体調を崩したんです。私がもっと気に掛けるべきでしたが、傍についていてやることができずに……ああ、すみません。こんな話をしてしまって」


新藤さんの顔つきが暗いものになっている。


「いえ、気にしないでください。それであの……妹さんは無事に出産をされたのですか?」


悲痛な新藤さんの顔を見て、嫌な予感が脳裏をかすめた。彼は静かに首を振り、私の回答に無言で答えた。


「そんな・・・・」


妹さんは、助からなかったという……こと?

そんな……。


「私情を挟んで申し訳ないのですが、そういう経緯があったものですから、どうしても律さんの体調が気になってしまいまして」


「そうでしたか……」


返す言葉が見つからない。新藤さんが私に親切にしてくれているのは、当時できなかった罪滅ぼしなのだろう。そういう背景があったのなら、この親切にも納得がいく。


「本当は一晩中私が傍にいて差し上げたいのですが、そういう訳にもまいりませんので、食料を調達したら帰ります」


再び新藤さんが優しい笑顔を見せてくれた。「飲みやすいドリンクと、炭酸飲料を買ってきます。コーヒー等はカフェインがきつくあまり摂取しない方が賢明ですので、適当に見繕ってきます。お任せいただけますか?」


「はい。ありがとうございます」


「では、鍵をお借りして行っても宜しいでしょうか?」


「ええ。鍵は、玄関横のフックにスペアキーがかかっています。長い鍵で、サルのストラップが付いています」


そのストラップのサルが光貴に似ているからと、買ったものだ。


「承知いたしました。それでは、行ってまいります」


新藤さんは頭を下げて、寝室から出て行った。そのすぐ後にマンションの鉄扉が閉まる音がした。

DESIRE -堕ちていく あなたに奪われる- ~この愛は、罪~

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