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2話のおまけ

誰もお前を助けないから

無性に試したくなった。失敗作だけ愛されて僕達は愛されない、同じにされるのは反吐と虫酸が同時に込み上げてくるが、同じクローンなのになんで僕達は愛されないの?

あんな失敗作なのに僕達はあいつと違うのになぜ失敗作ばかりがいいのだろう。そう点々と考える。

失敗作と言えど同じクローンとしてはなんだから洞察力やらなんやらは同じなのに見つからない。じゃあ試してみるか

ニヤケながらそう考える1人のクローンはある女に外出許可を申し出した。

✩.*˚✩.*˚✩.*˚

『なんだよ……』

『あっはは〜!そうカッカしなーいの!今回は君を潰しに来た訳じゃないから★』

『じゃあ尚更なんで来たんだよ』

俺と同じ顔の男、俺だけどそうじゃない違う俺がいる。

目の前の俺が中王区の命令でここに来たのではなければどうしたのか、不思議でしょうがない。ここは探りを入れるしかない。

カチャ

『お茶なんていらないのにー!!!』

むー!と怒ったかの様な顔を作る彼は今の僕より”作られた”僕に近かった。

『で、?なんの用?』

あっはは〜!とまた笑いながらこちらに一言そう言った。

『お前は捨てられる運命だ』

ニヤと嫌な顔をしながら耳元でそう囁いた。薄気味悪く感じ同じはずのその低い声、何もかも嫌になりそうでゾッとする。

捨てられる運命とはなんの事か、中王区にはもう捨てられ奇跡を信じる俺。

posseに捨てられると言うのだろうか?そんなことありもしないはずだ。

『神宮寺寂雷』

『っ!』

はっとした。そうだ、彼がまだ居たでは無いか、言われた瞬間気づき嫌な感覚を覚える。

ニヤニヤする彼を見つめ思い返す。

“絶対に助ける”その言葉は嘘なのか?

『お涙頂戴の三文芝居なんてしてたけどー?僕ほんっとにムカついたんだからね?』

俺が喋る間もなく続けられる。

『飴は取られるし、おネーサンには叱られるし、お前だけ幸せそうだし、奇跡信じてるとこ悪いけど寂雷は助けてくれないからね?』

助けてくれない?それが本当だとしたら俺は奇跡を信じるのは本当に無意味なのだろうか。

悪足掻きしてからくたばってやりたくて、馬鹿みたいなことに乗っかっていた、アイツらといることがそれほどに楽しかったから。

『……あはっ、いい顔』

笑われながら言われるが今俺はどんな顔をしているのだろうか。

『ありえないって顔してるよ?虫が良すぎるのにさー?』

『どーせヨツツジを助けるんだからいい加減諦めな』

アイツの子も同然、親代わりをしていた寂雷、僕なんかより大切な相手。

確かにその選択なら俺は助からない、気持ち悪い、なんなんだこの感覚。

目の前の俺の顔を見てるだけで嫌な気分になる。あいつの好きは偽物で俺は助からない、そんな考えをするだけで嫌になる。

『あっはは、そこで蹲ってなよ、僕がかわりになって、あ・げ・る★』

『お前なんかが俺の代わりになんてなれるはずがッ!!』

『何言ってんのさ?』

『……は?』

『お前と同じく、腕も細くて声もおなじ、体重も身長も足の大きさも、顔だってそう。ぜーんぶ同じなのに代わりになれないの?』

『そ、それはっ!』

クローンだからと言ってやりたい、俺はオリジナルで唯一無二、そのはずなんだ。あいつらと同じじゃない、あいつらにあんな仲間いない。

『じゃっ、ばっいばーい』

✩.*˚✩.*˚✩.*˚

side Ramuda Amemura (Clone)2

ピロロロロロ

音を立ててインターホンがなる。

インターホンで覗かれているのであろう。声が聞こえた。

『連絡もよこさずに何の用だい?』

『中身はあんまりないけど、ちょー!大事!』

ガチャ

『君から来ることなんて珍しいですね』

『そう?』

『そうですよ……それに』

『それに……?』

『私の知ってる飴村くんじゃないことも珍しいね』

『…………は?』

理解が追いつかなかった。何が違うんだ?そう思わせるこの重い空気は濁っているような感じで息苦しかった。

神宮寺寂雷のその真剣な眼差しは僕に向けられてない、あの失敗作に向けられている。恋をしているような瞳。

ウザったくて嫌いだ。

『……何が言いたいの?センセー』

『君は違う』

『きのせーだよ』

『…………そうかい』

『そうだよ、ほら入れて!』

はいはい、と呆れる顔見せて言う。あいつもいつもこうなのだろうか?

『いつもは連絡を入れてくれるのにね』

とぽぽと音を立ててお茶を淹れられる。

いつもは連絡を入れてくれるのにという言葉に耳を疑った。あいつがこいつに?とハテナを浮かべたが笑って誤魔化した。

『ねぇ、寂雷ほんとに僕のことスキ?』

『ええ、とても』

『ふーん』

『なんでそんなことを?』

問われるもそれには答えず寂雷に近づく、そのまま語りかけた。

『もし他の僕が死んじゃったら?』

『……いい気はしませんね』

『本物の僕だったら?』

『中王区を、壊したくて仕方がありませんね』

『そっかぁ……』

衢をあんなにされて中王区を壊しに来ないのはよく分からないがあいつだったら壊したいと言ってる。

それほどまでにまだあいつが好きなんだろう。

ガチャ

『はぁっ、はぁっ……やっぱりここかよ』

『飴村くん……?』

『わっ、僕のこと殺しにでも来たのー?』

『もしそうだとしてもお前は演技するんだな』

バレてしまったか、寂雷の言う本物の僕だ。

『どー?試せたのかよ』

『?』

その僕への問いかけに寂雷はハテナを浮かべる。まだ試せてないから僕が聞いてあげよう。

『ねぇ、寂雷、僕と衢どっちを選ぶの?どっちかだよ?』

『え、?』

『っ!!!』

その言葉を目の前で浴びせられてる寂雷を見て失敗作はどんな気持ちになるだろうか。きっと僕に苛立ちを覚えるだろう。

またものすごい顔をしている。

『あっはは〜!』

バッ

寂雷に抱きついていた僕は寂雷本人に振り払われた。

目の前で見せられるその状態はとても虫唾が走る。

『うーわ、うわうわ』

『じゃく、らい?』

『やはり変だと思いましたが……はぁ、貴方は何がしたいんですか』

失敗作を庇うような姿勢を摂る。何がしたい?分かりきってる事だとでも思ってたが、分からないか。

なんで失敗作ばかり愛されて幸せそうなのか、それに苛立ちを覚えた僕のこの感情は変だろうな。

『お前さ、ヨツツジだったらどーすんの?』

『な、なんで』

『だってお前』

泣きそうじゃん

目元は赤く、鼻も赤い、涙を堪えるその瞳はうるうると輝かせていた。

『あーあ、誰もお前を助けないから』

『そんな訳が無いでしょう?私が助けて』

その言葉を遮るように叫ぶ。

『じゃあ衢はどーすんだよ!』

静まり返るその空気や光景に耐えられない。気づけばシワができるくらい自分のシャツを握っていた。

『結局お前だけ愛されるのかよ、じゃあもう帰る。バイバイ』

吐き捨てるようにそういいその場を去る。

次はどこに行こうか

そして適当に歩き出した。

☆彡.。☆彡.。☆彡.。

カチッ

ボワっ

赤い、目の前が赤色に染る。暖かいのかそれより暑いのか、もう分からない。

『なんだあれ、』

『燃えてない?!』

飴村乱数が死んだなんて思われたら大変だな、と跡形もなく燃えるよう火を強くする。

誰も俺を助けないから

✩.*˚✩.*˚✩.*˚

side Ramuda Amemura (Clone)1

『どこにも行くなよ……』

涙を流しながらそう言った。

『もちろん行きませんよ』

頭を撫でられる。暖かい。

この暖かさから抜けられない、抜けたくない。

『うわぁぁぁぁぁぁん』

もっと泣いてもいいんだよと言うかのように抱かれる。寂雷の胸の中でまた泣き叫んだ。

☆彡.。☆彡.。☆彡.。

『シンジュクで───』

テレビでの報道を見た。そこには火事が起きたと言われている。

『火事か、怖いね』

『私達も気をつけなきゃいけないね』


────────────誰も俺を助けないから

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