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#青春恋愛(多分)
もな
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晶子にとってゴールデンウィークは午前中から塾通いの期間でしかなかった。そのはずだった。だが最後の連休の初日に塾から帰宅した証拠は真っ先に母親の所へ駆け寄った。
「ねえ、お母さん。塾の先生から連休の最終日はあたし休みって言われたんだけど。親から連絡あったって言われたよ。どういう事?」
母親はキッチンで鍋の中のシチューをかき回しながら目を合わせもせずに答えた。
「うん、あたしが電話でそうお願いしといた」
晶子は目をぱちくりさせて少し怒ったような口調で言った。
「どうしてよ? あたし受験生なんだよ」
「あのね、晶子」
母親は初めて晶子に顔を向けて顔の表情は柔和だったが、真剣な目つきで語りかけた。
「受験の事で悩んでるんだろうけど、最近の様子は何よ、あれ。一日ぐらい受験の事は忘れて遊んで来なさい」
「一日ぐらいって、その一日が大事なんじゃない。あたし高三の受験生だよ」
「たった一日塾休んだくらいで落ちるなら、どうせ見込みないよ。あなたこの間の模試でもC判定だったでしょ」
「あ、ひどい~。気にしてるのに」
「たまには気分転換、息抜きも必要よ。まだ五月なんだから」
「ううん、そう言われても、何していいか分かんないじゃん」
「そう言うと思ってこれ買っといたわよ。ほら」
そう言って母親は棚から紙のチケットを取り出して晶子に手渡した。それは東京ディズニーランドのワンデイパスだった。晶子はきょとんとして訊いた。
「あれ? どうして二枚? お父さんは行かないの?」
母親はニヤリと笑って答えた。
「一枚はカンナちゃんの分。二人で楽しんでいらっしゃい」
「いや、カンナにはバイトがあるよ。連休中はメイド喫茶だって忙しいだろうし」
「カンナちゃん、連休最終日は午前中でお仕事終わりなんだって。そこは本人に確認済み。午後早くから行けばゆっくり出来るでしょ」
「な、なんか手回し良すぎるなあ」
晶子が首をひねりながらも自室へ入った後、キッチンに立ちながら晶子の母親はいたずらっぽい笑みを浮かべながら独り言を漏らした。
「親には言いにくい事みたいだから、こういう時はカンナちゃんが頼りになるってものね」
コメント
1件
第80話、お母さんの晶子への気遣いがすごく温かくて、じんわりしました。受験生だからって張り詰めてる晶子に「たった一日休んだくらいで落ちるなら見込みないよ」って言い放つお母さん、ちょっと毒舌だけど愛があって最高です。しかもカンナちゃんまで手配済みって、手回し良すぎて笑っちゃいました。親には言いにくいことも友達がいれば、ってお母さんの独り言、晶子のことちゃんと見てるんだなあって思えて、心がぽかぽかになりました。こういう日常の優しさ、好きです。