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俺がそう言うと、翔は写真をスクロールしながら言う。
「これも。あとこれも」
そう言って見せてきた写真は俺と冬馬先輩がお互いにシュークリームを食べさせ合っている写真。
「なんで…」
俺は、昨日のことを思い出す。あの時見た人影。
(あの時の人影、気のせいじゃなかったんだ)
「なんか、SNSで出回ってるみたい」
翔は携帯をしまいながらそう言う。
(何でこんな事…そうだ、先輩は…)
「先輩、大丈夫かな」
「いや…わかんないけど、多分学校全体で出回ってると思う」
(先輩のとこに行かなきゃ…)
俺はそう思って席を立つ。そのままドアに向かおうとすると、翔が俺の腕を掴む。
「ちょっと。どこ行くの?」
「どこって、先輩のところだよ」
「ダメだよ。今はやめたほうがいい」
「でも…」
「春人」
真剣な顔でそう言う翔を見て、俺は踵を返す。そのまま席に座り、俯いた。周りからは様々な声が聞こえる。
「二人は付き合ってるのかな?」
「春人に狙われたらどうしよ〜」
「佐野先輩ゲイなのか〜」
そんな声が聞こえる中、俺はただ俯いている事しか出来なかった。その後の授業も全然集中出来なかった。俺は授業中に考える。
(俺があんなことしなければ…いや、そもそも文化祭誘わなければよかったんだ。俺のせいで冬馬先輩が色々言われちゃって。俺のせいだ…)
授業が終わり、昼休みになる。俺は翔と弁当を食べていた。だが、食欲が湧かず、おかずを箸でつついていると、翔が心配そうに言う。
「春人、全然食べてないけど大丈夫?」
「全然食べる気になれなくてさ」
俺がそう言うと、翔は自分の弁当から卵焼きを取り出し、俺の弁当に入れる。
「ほら。春人の好きな卵焼き。これなら食べれそう?」
「ありがとう」
俺がそう言うと、近くにいた男子がヘラヘラと笑いながら言う。
「おい翔やめとけよ〜。好きになられるぞ〜」
そんな男子に翔は怒った様子で言う。
「うるせぇな。お前がそういう事言うと春人が傷つくってわかんねぇの?」
「うわ、怒った〜!春人の事好きなんじゃね〜?」
男子はそう言って再びヘラヘラと笑う。そんな男子に翔は立ち上がり、近づく。
「好きだよ。友達として。大事な友達が傷つけられて、黙ってられるわけ無いでしょ?」
「あーもう分かったよ。ごめんごめん」
そう言いながら男子はその場を去っていった。それを見て翔は席に戻る。
「まったく。なんでああいうこと言うかな」
「ごめん翔。ありがとう」
「春人が謝ることないでしょ。あいつが悪いんだから。それよりほら、卵焼き食べて」
「うん」
俺はそう言って卵焼きを頬張る。
「美味い。最高」
「よし。じゃあその調子で弁当食べて。ご飯食べるの大事なんだから」
「うん。食べるよ。ありがとう」
俺が笑顔でそう言うと、翔は安心したような表情で言う。
「いや〜。俺の母ちゃんの卵焼きは最強だな〜」
「そうだね。翔の母ちゃんの卵焼きも最強だし、翔も最強だね」
「俺も?」
「うん。翔のおかげでちょっと元気出たし」
俺がそう言うと、翔は照れたように笑う。
「まぁ、春人が元気出たなら俺も嬉しいよ」
笑顔でそう言う翔に春人もニコっと笑って弁当を食べた。
それから少しして、翔と話していると、クラスメイトに呼ばれる。
「春人、先輩来てるよ」
そう言われてドアの方を見ると、委員長がこっちを見ていた。
「ありがとう」
俺がそう言って委員長のところに行くと、後ろから翔もついてくる。
「急にごめんね。冬馬の代わりに柳くんの様子見に来たの」
「代わりにですか?」
「うん。冬馬に今は会わない方がいいって言ったんだけど、どうしても柳くんが心配だって言うから、代わりに俺が見に来たの」
「なるほど。そういうことですか」
(冬馬先輩、俺の事心配してくれてたんだ…)
「うん。それで、柳くん大丈夫?」
「まぁ、色々言われてますけど、翔が元気づけてくれたんで大丈夫です」
俺が笑顔でそう言うと委員長は安心したような表情をする。
「良かった。柳くんは強いんだね」
「いや、俺は全然。翔が最強なんですよ」
俺がそう言うと、横にいた翔がドヤ顔で言う。
「”俺”じゃなくて、”俺の母ちゃんの卵焼き”が最強なんです」
「翔くんのお母さんの卵焼き?」
「そうです。俺の母ちゃんの卵焼きはいつも春人の胃袋を掴みます」
ドヤ顔でそう言う翔に委員長はふふっと笑う。
「すごいね。翔くんのお母さんは」
「はい。なんか春人に頼みごとがあったらちょっと難しい頼みごとでも母ちゃんの卵焼きでイチコロです」
悪い顔をしてそう言う翔に俺は怒った口調で言う。
「ちょっと。俺はそんな単純な男じゃないよ」
「え〜?いつも卵焼きあげたら割と頼みごと聞いてくれるけどな〜」
「うわ〜。そうやって翔の母ちゃんが愛情込めて作った卵焼きを交渉の材料に使うなんて、母ちゃん悲しむだろうな〜」
「その愛情は春人にちゃんと伝わってるから大丈夫」
「いやお前が受け取れよ〜」
俺がそう言うと、委員長はふふっと笑う。
「元気そうでよかった」
「まぁ、翔のおかげです」
「春人の事は俺に任せてくださいって佐野先輩に伝えといてください」
翔はドヤ顔でそう言う。そんな翔に続いて俺はニコっと笑って言う。
「俺は翔に元気づけてもらうんで冬馬先輩の事、お願いしますね」
「うん。任せといて」
委員長はそう言ってニコっと笑った。
それから2週間ほど経って、図書当番が来た。今回は冬馬先輩との当番だ。
そして昼休み、図書室に向かうと既に冬馬先輩がカウンターに座っていた。あれから一度も会っておらず、久しぶりに会った冬馬先輩はやっぱりイケメンで、胸がドキドキした。俺はカウンターに入り、冬馬先輩の横のイスに座る。
「なんか久しぶりですね」
「そうだね。もう2週間も会ってなかったから」
「誰がやったんですかね。あんな事」
「分からないけど、俺を好きな人か逆に俺を嫌いな人かな。どっちにしろ俺のせい。ごめんね」
先輩は申し訳なさそうにそう言う。
「先輩のせいじゃないですよ。俺なんかが先輩と仲良くするなんて、間違ってたんですよ」
「そんな事ないよ。春人くんは俺の大切な友達なんだよ?」
「俺が先輩と居ると、先輩に迷惑がかかるんです。だから俺は…」
そう言う俺の言葉を遮るように先輩は言う。
「迷惑とかそんなの、気にしなくていいよ。俺は迷惑なんて思わないし。俺はただ、春人くんといれればそれで…」
「あの」
そう声をかけられ、声のする方を見ると、女子生徒が本を持って立っていた。
「本返したいんですけど…」
「あ、はい。すみません」
俺はそう言って本を受け取る。その後、俺たちは必要なこと以外は話さず、昼休みの当番が終わった。
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