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#異世界転移
花月夜れん
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設楽理沙
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耀聖(ようせい)
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耀聖(ようせい)
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「ごめん下さい」
ご丁寧にも挨拶をしながら屋内へと入っていく宜辰に続き、辺りの様子を伺いながら煜峰も足を踏み入れた。
店の中は無駄な装飾品はなくがらんとしていて、小さな棚が1つと、取引用の為の卓と椅子とが置かれている。
「初めて見るな。紹介状は?」
接客をする部屋の奥に、さらに部屋があるのだろう。煜峰達に気が付いた店員が、奥から出てきた。
1、2、3……。この男を含めて6人。
気配を探り、何人と相手をする事になるのか目算を付ける。
「ない。店主に用がある」
「店主は俺だ」
「それなら話は早い。今から一時程前に、女性客が立て続けに2人来たであろう? その内、後から来た者は春画を売りに来たはずだ」
「……あんた、何者だ?」
「その女性の前に来た客は何を買った? それさえ答えてくれれば大人しく帰ろう」
「お前が何者かって聞いてんだ!」
短剣も持ってきておいてよかった。狭い室内で長剣は振るいにくいから。
武器を片手に奥の部屋から出てきた男たちの攻撃をするりとかわして、死なない程度に斬りつけていく。
殺し屋の手配はしても、この店の者達は殺し屋ではない。
人数も多くなかったことから、宜辰と二人で何とかなった。
店員達を昏倒させて、最後、宜辰に組み伏せられている店主の顔元でしゃがんだ。
「私が何者かは、聞かない方がお前たちのためだ。もう一度聞こう。女は何を買っていった?」
「いっ……言わねぇ。顧客の情報は流さねぇよ」
「手を前に出させろ」
宜辰に指示すると、片腕を封じまま、もう片方の手を煜峰の足元に無理やり出させた。
「なにを……? うあ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ!」
「まずは一本。答えなければ1本ずつ指を切り落としていく」
「こっ……こんな事をしてタダで済むと思うな。俺たちの顧客が黙っちゃいねぇ」
「もう一本」
再び男の絶叫する声が、室内に響いた。
「無駄愚痴を叩くな」
この店の顧客がどのような者なのかなど、わざわざ教えてもらわなくても検討はつく。
殺し屋を仲介したり、毒や呪具を売る店だ。ただの一般人ということはあるまい。
「聞き方を変えようか」
店主の前髪を掴み、その瞳がよく見えるように顔を持ち上げた。
「呪符で間違いないな?」
「…………」
僅かに開いた瞳孔。
「脈が変わりました」
組み伏せている宜辰が、煜峰に「当たり」を告げる。
「用済みだ。眠らせておけ」
こんな危ない店に出入りしていたとは、度胸があるのか、それとも自分の「好き」にただ忠実なだけなのか。
麗霞には別の販路を紹介しておいた方が良さそうだと考えているあたり、自分もどうかしている。
ただの駒に、そこまでしてやる義理などないのに。
首の後ろに手刀を振り下ろされ、ぱたりと動かなくなる店主を眺めながら、煜峰はそんなことを考えていた。
***
揚げたての、まだ熱い胡麻団子の効果は絶大だった。
姜弘の機嫌はすこぶる向上し、ようやくいつものスピードで絵を描いてくれるようになったので、ご機嫌取りに忙しかった麗霞の仕事も捗るというもの。お言葉に甘えて、馬車に乗って帰ってきた甲斐があった。
煜峰と言えばあの日の後、火鼠に春画を売りに行くことを禁じられてしまった。それだけじゃない。なんと別の販路を紹介してくれたのだ。
街中にある書店へ煜峰から貰った紹介状を見せると、あっさりと春画を買い取ってくれた。
以前、麗霞が売りに行った時は門前払いだったのに。
麗霞だって初めはまともな店で売ってもらおうと書店を訪ねたが、無名の女流画人の絵など見る価値もないと、絵を見せる前に追い返されてしまった過去があったりする。
他人の手を借りるなど癪に障る。なんてプライドは持ち合わせていないので、ありがたーく煜峰の威光をお借りすることにした。
それに本音を言えば、毎回火鼠に行くのはちょっと怖かった。
路地裏の薄暗い道を通らなければならないし、買い取ってくれる人も何だか怪しげだったし……。
絵を売る為だと我慢していたけれど、あそこに行く必要が無くなったのは何よりだ。
いい事が重なって、自然と鼻歌を歌ってしまう。
今麗霞は、雲嵐に頼まれた画材が全て揃っているか、頭の中の記憶を頼りにチェックしているところ。
煜峰と雲嵐は両者とも、宮廷が誇る美男子と称されているが、麗霞が推すのは断然雲嵐の方。
脳内の妄想が捗るのはやはり、下が付いている方だ。
でもこの前、友達の葉青から驚くようなリクエストを貰ったお陰で、新たな境地に到達しつつあるかもしれない。と、胸元に隠し持っている絵をチラリと見て麗霞はほくそ笑んだ。
後で調香院へ寄って、葉青に新作の春画を渡さなければ。
「よしっ、全部揃ってる」
頼まれた画材が全て揃っていることを確認し終えた麗霞は、それらをひとまとめにして、雲嵐のいる画院内の作業所へと向かった。
「雲嵐様、頼まれ……」
た画材をお持ち致しました。と言い終える前に、麗霞は反射的にドアから身を離し隠れた。
ちょちょちょちょっと待って。
今、雲嵐様の他に女性が居たよね? 官女だった??
女性が居たといっても、ただ居ただけでは麗霞だって隠れたりはしない。
二人の距離が異様に近かったのだ。
これはもしかして、もしかすると……逢い引き?!
いけないわ、麗霞。悪趣味よ。
でもこんな機会は滅多にないじゃないと、もう一人の自分が頭の中で囁く。
妄想ではなく、生で見れる。
そう思うと我慢ができず、ドアの隙間からそーっと、二人の様子を覗き込んでしまう。
あら? あの女性って……。
官女の方をよく見ると、見覚えのある顔が再び。
「右さんだわ……」
右がスっと雲嵐の方へと寄ると、二人の距離は更に縮んだ。
いやぁぁぁっ! 右さんったら大胆!!!
なんと右の手が雲嵐の胸元へ伸び、その懐へと差し込んだではないか。
そっ、そうよね。
女性も待つだけではなく、積極的に攻める時代だわ。
この先も見たい。見てしまいたい。一部始終、一切合切、全て見たいっ――!!!
大きく息を吸って……吐いて……。
スー……ハー……。
よし、ちょっと落ち着いた。
ドアのすぐ脇に持ってきた画材道具を置いた麗霞は、足音をたてないように雲嵐の作業所から離れて、画材置き場へと戻っていった。
「危なかったわ。あれ以上見ていたら、人の道を踏み外すところだった……」
いくら麗霞が変態でも、実際に人様が致しているところを見るのは良くない。
最後の一線をよく踏みとどまったと、自分で自分を褒めてあげたいくらいだ。
「やっぱり男同士より、男女の方がいいわよね」
葉青に頼まれてこんな絵を描いてしまったけど、自分はノーマルの方が好きなのだと改めて思う。
……いや、やっぱりこっち系も捨て難いかも。
うーむ。と考え込み、胸元に差し込んである絵を少しだけ引っ張り出して見ていると、ドアの開く音が聞こえた。
「麗霞か。何をしている」
煜峰が入ってきた。
チラ見していた絵を慌てて懐へとしまい込む麗霞を、やはり彼は見逃してはくれなかった。
「いえ、なんでもありません」
「新しい絵を描いたのだろう? 見せてみよ」
「この絵はちょっと……ああっ……!」
絵を隠そうとする麗霞だったが、無駄な抵抗に終わった。
胸元からするりと絵を抜き取られ、新作の春画は煜峰の手に。
「どれ」といいながら折りたたまれた紙を広げた煜峰の顔色が、サッと変わった。
コメント
1件
うわあ、今回もすごかった……! 最初の火鼠での拷問シーン、煜峰の冷徹さがゾクゾクしたし、最後に麗霞が描いた新作の春画を煜峰に見られて顔色変わるラスト、めっちゃ気になる! 麗霞が雲嵐と右さんの逢い引きを見て興奮しつつも踏みとどまる描写、可愛くて笑っちゃった。次どうなるの…!?