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:D ream C0RE

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:D ream C0RE

22 - 第22話 共鳴因子(コア エンゲージ)

2025年06月08日

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——どうすればいい?
リクの脳裏に浮かぶのは、砂に倒れたまま動けないロビンとアイビーの姿。そして、茨の奥からゆっくりと歩み出る、異形の人型。

セラフィム。再生したその肉体は以前よりも艶やかで、光沢すら帯びている。致命傷を与えたはずの個体が、なおも彼らを嘲笑うように現実へと戻ってきた。


「……俺じゃ、勝てない」


声に出すことはできなかった。

だが心の中で、何度も何度もその言葉が反響した。


HP12万。どこをどう切り取っても、今のリクでは届かない。

避けきれるわけもなく、一撃でももらえば終わりだ。盾もない。回避も限界がある。


『……5分。たったの、5分だけでいい。』


思考は過去へと巡る。

崩れる天井の下で、必死に手を引いてくれたロビンの腕。

泣きそうになりながらも「大丈夫」って言ったアイビーの顔。

彼らがいたから、ここまで歩いてこられた。

でも、今は——


「俺しかいない……!」


リクは、心の奥底から湧き上がる恐怖と絶望を噛み殺した。

震える指先に力を込める。握りしめたままの武器が、重い。


「逃げる?……できるわけないだろ」


逃げて、もし助かったとして、二人を失って生き延びて、それで何になる?


「俺が——5分稼ぐ。絶対に、守る」


喉の奥が焼けつくようだった。心臓がうるさくて、自分の声すら聞こえない。


だが。


目の前の化け物に立ち向かうため、リクは一歩、砂を踏みしめた。


「俺が——5分稼ぐ。絶対に、守る」


その瞬間だった。

リクの意識の深い底で、何かが——静かに“ひび割れ”た。


頭の奥で、冷たい風が吹いたような感覚。

脳が急速に覚醒し、心臓の鼓動が次の拍動を拒むように、時間が止まる。


《……起動条件、確認。適合率、閾値超過。コード解放。》


耳の奥に、誰かの声が響いた気がした。だがそれは外からの音ではなく、リク自身の体内から“流れ出す”ようなものだった。


砂を踏む足元が、わずかに揺れる。

まるで周囲の空間がリクを中心に**「呼吸」**しているかのように。


「これは……俺の……?」


胸に熱が宿る。

心臓の奥、もっと深く。魂の芯に、火が灯る。


それはスキルでもアイテムでもない。

けれど、確実に“何か”がリクの中で目覚めた。


《未知スキル“共鳴因子《コア・エンゲージ》”発現》


リクの全身に流れる回路のような光が、砂の上に紋様を描き出す。

圧倒的な存在感を持ったセラフィムが、わずかに足を止めた。


(なにかが……変わった)


見上げた空は、まだ昇らない夜。

だが、リクの視界は不思議なほど澄んでいた。


「かかってこいよ、セラフィム……!」


それは挑発ではなく、誓いだった。

5分——いや、何分でもいい。


いまこの瞬間、この場に立つ理由が、彼にはあった。


……起動確認。  

——アクセスキー『R-CODE_01』認証完了。


■ 共鳴因子《ENGAGE CODE》──  

 対象との精神リンクにより、未知のエネルギー干渉を成立させる“適応型模倣機能”。


▼ 機能概要  

 本因子は、周囲存在の“生命波長”を捕捉・解析し、  

 一時的にその能力・特性を使用者へ転送(借用)します。  

 転送に必要なプロセスは以下の通り。


 1. 共鳴:使用者の精神と対象の“存在音”を同期させること。  

 2. 借用:共鳴強度に応じ、能力・記憶・現象の一部を使用可能。  

 3. 反動:使用後、負荷の蓄積により肉体・精神へ影響を及ぼす場合あり。


▼ 警告  

 本因子の使用は、共鳴度が極端に高まった際、  

 “存在同調(UNISON MODE)”を引き起こす恐れがあります。  

 その際、使用者の意識・肉体構造が一時的に不安定化する可能性があります。  

 ……因子の誤使用は、取り返しのつかない変質を招きます。


■ 補足  

 適合者:唯一認定コード【Riku_0001】  

 推奨使用制限:中共鳴以下/1日3回まで  

 記録対象:周囲環境・生態・記憶体・残留想念


——データ同期完了。  

——共鳴因子、起動可能状態。


セラフィムの赤い双眸が、ふと揺らぐ。

それまでゆっくりとロビンへと歩を進めていたその脚が、突然止まった。


「…………?」


首を傾げるような、だがまるで獲物の気配を探る捕食者のような動作。

鋭利な指先がカチリ、と空を裂くように音を立てて鳴った。


「……反応、変化。対象:リク。鼓動数上昇。温度、異常上昇……?」


空気が震えていた。リクの身体の周囲に、小さく、しかし明確な“波”が生まれている。

あたかも何かとリンクし、内部から変質し始めているような――そんな気配。


「構造崩壊の兆候……否。これ、共鳴……?」


セラフィムの口元が、僅かに吊り上がる。

だがそれは笑いではない。獣が、未知の脅威に牙を剥く直前の、冷徹な本能。


「記録に……ない。想定外、想定外……排除対象、危険レベルを再設定。再設定完了。

対象:リク。分類、特異個体。優先度、最大。」


セラフィムの全身から圧力が弾けた。重く、鋭く、敵意を伴う視線がリクへと向けられる。


「ならば先に――潰す。」


地を砕くような足音とともに、セラフィムが動き出した。


目の前に立つセラフィムの気配を、リクは意識の外に追いやった。

 今すべきことはただ一つ。――仲間を、救うこと。


 全神経が茨へと向けられる。

 その刹那、リクの視界が一変した。


 ──視界を満たす、網目のような情報の海。

 ──白く軋む根。痛みに似た波長。呼吸する棘。

 ──《ブリリオン》。意識を持つ寄生種。拒絶する。だが、共鳴は通る。


「……お願いだ。少しだけでいい、力を、貸してくれ」


 リクの脳裏に、根が触れた。

 言葉を持たない植物が、わずかに“理解”を示したのかもしれない。

 次の瞬間――茨がわずかに、震えた。


 ロビンとアイビーを拘束していた神経毒の棘が、

 まるで命を与えられたかのように“自発的に”巻き戻る。


 棘がゆっくりと身体から外れ、滑るように地面へ沈んでいく。

 動けないはずの二人の身体が、ようやく地面に倒れ込んだ。


「……っ、よかった……!」


 リクは息をつく暇もなかった。

 セラフィムがすでに再び、狩人のごとくリクへと迫っていたからだ。


目の前に立つセラフィムの気配を、リクは意識の外に追いやった。

 今すべきことはただ一つ。――仲間を、救うこと。


 全神経が茨へと向けられる。

 その刹那、リクの視界が一変した。


 ──視界を満たす、網目のような情報の海。

 ──白く軋む根。痛みに似た波長。呼吸する棘。

 ──《ブリリオン》。意識を持つ寄生種。拒絶する。だが、共鳴は通る。


「……お願いだ。少しだけでいい、力を、貸してくれ」


 リクの脳裏に、根が触れた。

 言葉を持たない植物が、わずかに“理解”を示したのかもしれない。

 次の瞬間――茨がわずかに、震えた。


 ロビンとアイビーを拘束していた神経毒の棘が、

 まるで命を与えられたかのように“自発的に”巻き戻る。


 棘がゆっくりと身体から外れ、滑るように地面へ沈んでいく。

 動けないはずの二人の身体が、ようやく地面に倒れ込んだ。


「……っ、よかった……!」


 リクは息をつく暇もなかった。

 セラフィムがすでに再び、狩人のごとくリクへと迫っていたからだ。



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