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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「ん…。」


目を開くと、天井が見えた。


体を起こすと、どうやら布団に寝かされていたみたいで、周りを見渡すと、和室の畳の部屋だった。


見覚えのない部屋…。


畳の懐かしいような香りがふと鼻をくすぐる。


ここは…、どこなのだろうか…。


急いで起き上がり、大きな丸窓から外をのぞくと…。


「うわぁぁぁぁ!」


窓の外には、とんでもない景色が広がっていた。


なんと表現したらよいのだろうか…。


城下町…のように。


たくさんの建物や提灯の光であふれていて、先ほどまで朝だったのに、なぜか空は暗い。


全く見覚えのない景色だが、この場所がどれほど高い場所なのかが分かるほど、周りの光は小さかった。


「起きましたか、おはようございます。いや、もうおはようございますと言えるような時間帯ではございませんね。」


「わっ、びっくりした…、あ、え…?」


急に背後から聞こえた声に驚き、急いで振り向くと、そこには見覚えのないような少年が立っていた。


「え…。」


「こちらが、水です。ずっと寝てらっしゃったので、のどが渇いてらっしゃるかなと思い…。あ、毒などの変なものは一切入れてませんので、ご安心ください!庭園の清らかな井戸水からくみ上げたものなので。本当に安全なので!」


なぜか、毒は一切入れてないと焦って主張する目の前の少年。


「あ、ありがとうございます。」


一口飲もうとコップに口を近づけると、少年はまじまじと見ていた。


「あ、どうしましたか…?」


そう問いかけると、少年ははっと我に返ったように首を犬のようにふるふると振り、慌てて謝った。


「ご、ごめんなさいっ、こんな…見られてたら…安心して飲めませんよね…も、申し訳ございませんでしたっ。」


「あ、大丈夫だけど、どうしたのかなぁって思って…。」


「いやっ、なんていうか、人間の方でもお水を飲まれるのだなぁと思って…。」


「え…?」


「あ、いえ、何でもないです。ど、どうぞごゆっくり!」


そういうと、少年は急いで部屋から出て行った。


どすっ


「痛っ…。」


「お前…、いつも俺が言ってんだろ?落ち着いて行動しろって…。はぁ…。だからいつまでも出世できねえんだよ。」


先ほど少年が出て行った扉から大きな物音がして、声変わりの時期のような少しハスキーな子供の声が聞こえてきた。


気になり、扉を開けると、そこには二人の男の子がいた。


いや…男の子…というより…え、えっと…なんていうのだろうか…


一人の黒い着物を着ている男の子は腰に手をあて、床を呆れたように見下ろしていた。


その少年の呆れた目線の先には…


白い着物を着た少年が倒れていた、、、。


先ほどの、水を運んできてくれた少年だ。


いや…少年…なのか…?


なんというか、なんというか…


二人の少年は絶句している私の存在に気づき、急いで床に手をついた。


「「お客様!!お見苦しい所をお見せしてしまい…申し訳ありませんでした!!」」


「………。」


無言の空間。


白い少年の頭と背中には、驚くべきものがついていたのだ。


ゆっくりと遠のいてゆく意識…


あ、私…やばいかも…


「え…だ、大丈夫ですかっ…!?」


「え、これ、やばくね…?」


二人の少年の焦った顔が目の前からぼんやりと消えてゆき、目の前は真っ暗になった。


本日二回目の…気絶でした。


はい。





目を開ける…。


天井だ。


あ、どこかで見たことのある光景…。


あ、そうか…


さっきもこうして倒れていたんだっけ…。


「あ、起きた!!黒蓮、起きたよっ!」


「お前…静かにしろって…客に迷惑だろ…つーか、俺も見てたから起きたことくらいわかるって。」


先ほどの二人の少年が、のぞき込んでいた。


やはり気になって、白い着物を着た子の頭を確認してみると…


「あ…ある…。」


やはり、ある。


真っ白の狐の耳と、ふさふさと少年の背中で揺れている、九つの尻尾が…。


「だ、大丈夫ですかっ…?」


「いや…ちょ、ちょっとめまい。めまいが…。」


「ねぇ、黒蓮!?死にそうだよ、この人間!死にかけてるよっ!ど、どうする?僕ら、クビかな…、あー、どうしよう…この前も間違えてロビーのオブジェ壊しちゃったのに、また失敗しちゃったって!ね、ね、黒蓮!どうしよ…死んじゃったって事が支配人様の耳に入ったら…ああ、だめだって…確実にとばされるよ…。」


え、いや…死んでないよ…?多分。


死んでないと…思う…。


「いや、よく見てみろ…まだ死んでない。つーか、これくらいで死んでたら、生き物じゃねーよ。」


「ほんと…?」


「ああ。おい、人間、生きてるかー?」


「黒蓮!人間って言っちゃダメだって!大切な『お客様』でしょ!?」


「あー、あー、分かった、分かったから。おい、客、生きてるかー?」


「『客』じゃなくって、お客様でしょっ!?大女将様に怒られるって!」


「あー分かったよ、めんどくせぇ…。おい、お客様…、生きてるかー?」


「あ、はい…」


なんだこの、ほんわかとしたやり取り…


「お客様、大丈夫でしたか…?」


「あ、はい…ただ、み、耳が…」


「はい?」


「み、耳ですっ…」


「耳…?」


白い着物を着た子はイマイチ理解できてないのか、不思議そうな顔をしている。


「あ!お、お前…ちょっ…ば、馬鹿っ…。」


急に黒い着物を着た少年が何か悟ったような顔をし、もう一人の少年を怒鳴りつけた。


「お前…術が解けてるって!馬鹿っ!阿保!間抜け!」


「ん?うわぁぁぁぁっ!!!」


白い着物を着た少年がたちまち顔を真っ赤にしたと思えば、突然。


ぽんっ


音が弾け、急に白い煙が上がる


「わっ…な、なに…?」


煙が消えると、そこには一匹の真っ白い九尾弧がいた。


「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「!?」


自分でも自分の声量に驚いた。


すると、今の悲鳴に合わせてぽんっと音がし、黒い煙が上がる。


煙が収まると、そこには黒い九尾弧がいた。


「えええええええええええええええええええええええええっ!?」


わ、我ながら…恥ずかしいほどの声が出てしまった…。


いや、そんなことも気にしてられないほど、状況が把握できていない。


え、え?


っていうか、今更だけど、ここ、どこ?


なに?この狐?


どういう…状況?

ここは、あやかし専門宿屋です。

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