最終話:そして春が来る
春、まだ少し肌寒い風が吹く日。
陽翔は自分の部屋の窓を開け、深呼吸をした。
あの日、決めたことが本当に現実になったのだと実感しながら、手に持っていた手紙を軽く振った。
「今日は、大事な日だ」
真白との約束、これからのこと――その全てを胸に秘めて、陽翔は歩き出した。
⸻
──午後、真白の家
陽翔が玄関を開けると、真白がいつものようにソファに座って待っていた。
「遅いじゃん、何してたんだよ」
「いや、ちょっと思い出してた。
…あの夜、言ったこと、今でも大事だって思ってるからさ」
「お前、たまに真面目だよな」
「うるせーな、ただの照れ隠しだよ」
陽翔は真白の横に座って、深呼吸。
そして、自分の心の中で何度も繰り返してきた言葉を、ようやく口にした。
「真白先輩、俺……ずっと一緒にいてくれますか?」
その言葉に、真白の目が少し見開かれた。
「お前、今さらだな。
ちゃんと決めたのか?俺が隣にいていいのか?」
「最初から、俺は決めてた。
10年後、俺は絶対先輩と結婚するって」
真白は言葉を飲み込んで、じっと陽翔の目を見つめた。
「俺もだ。お前が言った通り、10年後に指輪を持って、必ずプロポーズする。
だから、それまで一緒にいてほしい」
陽翔は頷き、真白に手を伸ばした。
「約束しよう。俺たち、ずっと一緒だって」
真白はその手をしっかり握り返し、優しく微笑んだ。
「もちろん。お前となら、ずっと」
⸻
──数ヶ月後、春が過ぎて
陽翔は自分の選んだ道を歩きながら、また少しだけ成長した気がした。
前に進んでいること、そして真白と一緒に歩んでいけること、それが彼のすべてだった。
数年後、陽翔が言った通りの未来が来たとき、彼と真白はまだあの約束を守り続けていた。
ふたりは、確かな足取りで、未来を築いていく。
それは、どんなに遠くても、どんなに時間がかかっても。
そして、春の風が彼らを包み込む。
“ずっと”一緒に歩むために。
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