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「なぁ、チェイス。誰かを笑い飛ばさなきゃ、自分を許せないようなくだらない人間のこと、どう思う?」
アイスコーヒーを手に取り、チェイスに尋ねる。
俺は昔、久しぶりに会う姉ちゃんにわざと明るく振る舞った。
姉ちゃんには心配をかけたくはなかったし、何より、笑顔でいて欲しかったからだ。
他にも進兄さんや特状課の人たちにも…。
ロイミュードの生みの親が、俺と姉ちゃんの実の親だとバレたくはなかったからだ。
そんな自分を許せなくなる時が度々あった。
そう考えていると、チェイスが水を飲むのをやめ、口を開いた。
「誰かを笑顔にしたい、俺はそう感じた。まだ、人間の感情を完全に理解はできていない。だが、少なくとも俺は、くだらない人間とは思わない」
チェイスは真剣な眼差しで俺を見た。
少し間をあけて、俺は「そうか…」と返事をした。
昔の俺なら、「ロイミュードのくせに、真剣に答えるなんてバカみたい。」と吐き捨てるように言うだろう。
だが、今の俺は少し、心が軽くなった気がした。
相変わらず、チェイスの顔からは、感情が読み取れない。
俺はアイスコーヒーを口へと運ぶ。
少し口にし、テーブルに置き、またチェイスに質問をする。
「なぁ、チェイス。他人の歩幅を眺めて、意味もなく駆け足になるつまらない人間のこと、どう思う?なぁ、チェイス…。」
俺は焦っていた時があった。
進兄さんがパワーアップアイテムを使い、俺よりロイミュードを多く撲滅していた時だ。
俺はものすごく焦り、りんなさんに無茶なことをお願いした。
本当は、一刻も早く俺の手でロイミュードを撲滅したかったからだ。
今はそんなこと思わないけどね。
チェイスは考え込んだ。
そして、答えに辿り着いたのか、言葉を口にする。
「それは、誰かと競い合っていたということでいいのか?もしそうだとするならば、とても良いライバルがいたということだろう。」
チェイスは水を飲み、再び言葉を口に出す。
「ライバルと競い合うことは、つまらないことではないと思う。前の俺と…進ノ介のように…。」
そう言い、また俺の方を見る。
「…そうだよな。」
俺はそう言い、下を向いた。