テラーノベル
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「……妃殿下に、菓子……でございますか?」
「ああ」
カイルは至極真面目な顔で頷いた。
「は、はあ……」
「片手で食べられるものも、いくつか頼む」
「片手で、と申しますと……」
料理長がおそるおそる問い返す。
「何か作業をしながら召し上がる可能性も?」
「……そうならないことを願っている」
カイルは目を伏せた。
「だが、あいつは俺より仕事に夢中だからな……」
「…………」
その声には、隠しきれない悔しさと寂しさが滲んでいた。
料理長はすべてを察したように、深々と頭を下げる。
「承知いたしました。妃殿下が思わず仕事の手を止めてしまうほどの、最高の菓子をご用意いたします!」
「頼んだ」
皇太子としての威厳を保ったまま、満足げに頷いた。そして厨房を去っていく。
残された料理人たちは、その背中を見送りながら、皆同じことを思った。
(殿下……そんなに妃殿下にかまってほしいのですね……)
***
「工房を管轄するギルド支部は、あまり治安のいい地区じゃないわ」
私は金庫を指さした。
「例の金ボタンも換金して、身元の確かな護衛と馬車を手配なさい。余った分は全部、あなたの出張費にしていいわよ」
「ええっ!? 全部いただいちゃっていいんですか!?」
目を丸くした。
「危ない場所に行かせるんだもの。当然でしょう?」
「お任せください! 私、ばっちり調べてきちゃいますからね!」
「期待しているわ」
「はいっ! 行ってまいります!」
アンナは頭を下げると、パッと身を翻して部屋を飛び出していった。
***
商業ギルドの受付。
「お待たせいたしました。こちらが工房の営業記録の写しです」
「わぁ、ありがとうございます! 休業期間も生産量の記録も、バッチリ載ってますね!」
アンナは受け取った書類を大事そうに鞄へしまった。
「よしっ!あとは――」
視線の先には、奥の資料室へ続く扉。鞄から三枚の受領証を取り出し、資料室へ続く扉を見る。
「この受領証ですねっ!」
ギルドの資料室。部屋の中央には、鈍い銀色をした巨大な鉄の塊――魔法複写機が鎮座していた。
「ひ、ひぃぃぃ……!」
アンナは最高級サファイアを両手でぎゅっと握りしめる。
「本当に入れちゃいますからね!? もう知りませんよ、お嬢様ぁ!」
覚悟を決め、投入口へ放り込んだ。
直後――。
ガリガリッ! バキバキバキッ!!
「ひゃあああああっ!」
耳を刺すような破砕音。粉砕された宝石から鮮烈な青い光があふれ、魔法回路を一気に駆け巡った。
(本当にやっちゃいましたっ!)
(100万ルクが、一瞬で魔力インクにぃぃぃ!!)
「……おい、今の見たか?」
「最高級品じゃなかったか?」
「触媒石に使うには贅沢すぎるだろ……」
周囲の職員たちがざわつき始める。アンナは三枚の受領証を複写機へセットした。
「よい……しょおぉぉっ!」
重たいレバーを両手で掴み、全体重をかけて引き下ろす。
ガコンッ!
歯車が腹の底へ響くような音を立て、回り始めた。青い光が三枚の受領証を包み込む。
やがて――。一枚目の複写紙が吐き出された。
「……ん?」
二枚目。三枚目。
表面上は、それぞれ異なる日付と番号が記されている。けれど、魔力インクによって浮かび上がった上書き前の情報は――。
同じ受領日。同じ受領番号。同じ受領印。
「……これ……」
アンナは三枚を並べた。何度見比べても、結果は同じ。
そして――目を見開いた。
「第二回も第三回も――第一回の受領証を元に作られちゃってますよっ……!?」
コメント
1件
ひよりさん、第16話読みました〜!🌸 カイル殿下がまさかの菓子発注で「仕事に夢中な妃殿下の気を引きたい」って料理長にバレバレなの、ギャップ萌えすぎてヤバいです…😭💕 そしてアンナ、100万ルクのサファイアを粉砕するってマジですか!? でもそのおかげで受領証の改ざん暴けたのは痛快! 「三枚とも同じ元から作られてる」ってラストの衝撃、続きが気になりすぎます〜!!✨
ひより
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鷹槻れん

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世羅 鈴🎨🎤
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百はな🍑
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