TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
練習

一覧ページ

「練習」のメインビジュアル

練習

2 - 第2話  誓いを立てて君と契約しよう

2024年06月15日

シェアするシェアする
報告する


冷たい風を想像して喚いてしまうような暑い日に、天気の良い青空の下で、愛する恋人を題材とした曲を片耳から流しながら聴いていた。

隣にはこのひたすら好きな人を想って執着しているような曲を創り上げた本人が、チラチラとこちらを確認しながら同じように片耳に音楽を流していた。

感想を求めているのか、曲が終わった後も中々離れようとしない。面倒だけどそれでも人の曲を聴いたからには、何か言ってやらないと可哀想だと思って簡単に感想を述べる。

hr「……まぁ、良いんじゃない?こういうのは女子に聴かせた方が曲の解像度高くなると思うけど」

ur「んー、俺は聞いて欲しい人に聴いて貰ってるし、勿論適当に決めてる訳じゃないよ?」

hr「ふーん…別にそんなら良いけど」

イヤホンを外して立ち上がると丁度予鈴が鳴ったので、教室に向かって歩き出した。曲の仕上がりはかなり良かったが、正直俺は曲に興味がないし聞くだけ無駄だと思う。

男なら早く告れよと何となく思ったけど、それはお節介かと思い直して、記憶から抹消した。どうせ俺には関係ないことだと廊下の窓を見ながら呟いた。

「あっ、ヒロくん!何処行ってたの?」

hr「屋上……w」

「マジ!?」

学校の屋上は基本的に開いている学校が少なく、屋上の鍵は職員室に置いてあることが多い。うちの学校は生徒が先生とかなり仲良しなので、特定の先生に頼むと開けてくれることがある。

勿論時間は限られてるし問題があれば閉められてしまう可能性大だけど、今の所は大丈夫だった。

hr「……だからその先生に頼むと良いよ」

「鍵閉めたん?」

hr「うり、アイツ鍵持ってるし」

「あぁ~ね」

hr「授業始まるわ……行こ」


授業は先生が変わってからちゃんと聞いている人が増えて、静かな教室の中で聞こえる鉛筆の擦れる音や鳥の鳴き声、教室独特の香りを嗅いで随分と変わったなと思った。

隣の女子を見るとちょくちょく先生の顔を見て嬉しそうにでも恥ずかしそうに顔を赤らめていて、多分何となく付き合ってるんだろうなと冷たい視線を向ける。

犯罪だとか言うつもりはないし、別に行為をせずに付き合うならどうぞご勝手にとは思うけど、他の奴らはからかうだろうなと段々とニヤケてくる。

俺も王子だ何だ言われているけど、その前に男だし女子達が勝手に王子にしているだけで、関係はないので妄想だってするしクラスメイトへの嫉妬なんて数知れず。

(まぁ、こんなもんだよな)

一方うりのやつは何でか分からないが微笑ましいとでも言うような、朗らかな表情をしている。俺と同じことを思ってるんだろうが、考え方が全く違うことが見てとれる。

俺は何となくムカムカしてそっぽを向いた。

校庭では体育の授業をしていて、校庭の周りを何周も走っているのが見えた。俺は小さい欠けた消しゴムみたいな大きさの人間達が、団体で走ったり協力したりしてるのを横目に、配られたプリントをひたすら解いた。

キーンコーンカーンコーン~♪

「終わったぁ」

「んな、しんど……あぁ~……てか先生が呼んでたよ?」

「マジ、?だっrrる」

「乙w」


放課後になり教室には誰も居なくなって、温くなったお茶を口から喉へと滑らせた。謎の虚無感に浸っているとガラガラッと扉が開いて、からくり人形達がテクテクと歩いてくる。

(やっとか……)

鞄から専用の御札とナイフを持って目を離さないようにしながら構える。

すると一人の人形がこちらを向いて歩いてくると、手に持っているお盆の上の茶碗を前に向けて渡そうとする。所詮は茶運び人形だが常に緊張感を持たないといけない。

ゼンマイの音が鳴りやみじっと人形が見つめてくるので、攻撃してこないことを注意して見ながら茶碗を取り、口元に持ってくる……

ふと頭によぎったものが俺の手を止めた。

宵越しのお茶は飲むなという言い伝えを知っているだろうか。

昔の言い伝えで有名な話だと、忍者が放置したお茶で毒薬を作ったと噂されている。昔の常識は今の常識とは外れていることが多いが、この言い伝えは本当だと言われている。

質の良い茶を濃いめに入れて竹筒に注いだ後、そのまま四十日間土の中で放置することによって、お茶が毒薬に変わってしまうらしい。現在のティーバッグ等も該当することがあり、特に一度入れて急須に残ってしまった茶葉等が危険とされる。

ちなみに毎食に数適飲み続けると七十日程で死に至るという結果が出ている。一度に多く飲むと死ぬことはないが、吐き気や下痢……酷ければ動けなくなる等の症状が現れ、これから起きるであろう戦闘に不向きである。

(コイツらが仕掛けて来てる可能性アリなんだよな……)

hr「ごめんね…俺このお茶飲めないんだよ」

ギギギ……(顔を向ける)

hr「それよりも最近町を侵食し始めてる怪異って君たちのこと?」

なるべく話し合いで解決したいけど、この様子だと上手くいかなそうだな。怪異と戦う前には必ず渡された物を持ち、正々堂々と行うという約束をしないといけない。

怪異達はどちらかと言うと不意を突いたりするし、勝手に攻撃を仕掛けてくることもあるのでこの約束は人間側が正々堂々と行うという契約であり、一応怪異達は人間相手を殺さないという契約であり……

要するに約諾しなければ命はないということである。

(面倒だな……)

hr「さぁ、どうする?……戦うなら契約してくれよ」

ギギギガガガ……(ゼンマイが回り出す)


茶碗を置くと茶運び人形が180度旋回して、仲間の方に歩いていく。上から紙が降ってきてそれを合図に他の人形達が飛び出してくる。

人形達は小さいが強くて手段を選ばないし、それに気を取られていると人間に化けたからくり人形に攻撃される。

大きさは人形の時とは違って160から180程でかなりの人数が居るため、一人きりで戦うのはかなり難しい。


やベー忘れ物!…… 多分教室だなぁ

俺は大事な楽譜を教室の自分のロッカーに忘れてきたらしい。面倒なんて言ってる暇ないし早く取りに行かないと、!

教室前の廊下を走っていると大きめの物音がした。かなり遅い時間だし…何かあったのかと扉をソッと開けると、大量の人間と男の人が戦ってるのが見えた。

(……何だ、あれ)

男は俺の密かに想いを寄せている人で、よく彼の為に徹夜で作ったラブソングを聴いて貰っている。そんな彼が何故か同級生でもない全く知らない人間と戦っている。

ur「……ヒロくん……ボソッ」

ヒロくんの手にはナイフが握られていて、それは特殊な形をしており、コロコロと形が変わっている。口に紙みたいなのを挟んで大量の人間の心臓部分にある宝石みたいに綺麗なハートをナイフで突き刺している。

俺は冷や汗をかいて震えて力の入らない身体を、壁に任せてしゃがみ込むとじっと時が進んで終わるのを待った。


くそっ、量が多すぎる……

何とか持ちこたえているが、あまりの人数に体力が尽きようとしている。からくり人形の弱点はゼンマイ部分で、他にもたくさんの小さな部品を壊せば良いけど、人間になると心臓部分の宝石を突き刺して壊すしか倒す方法が無い。

御札を持っていると怪異が近づいてくるため、基本的に持つのは危ないけど俺みたいに専用のナイフを持って倒す方法を知っていれば、御札を持つことが許される。

宝石はカイヤナイト(藍晶石)やマラカイト、ルビー等多くの種類があり、その宝石には意味が込められていて人形の生前の死が関係するという。

マラカイトには危険な愛情、ルビーには愛の疑惑を消し去るなどの意味がついている。一番量が少ないカイヤナイトには心の呪縛を解き放つという石言葉がついている。

そういう奴は周りのせいで落ちこぼれてしまった人間が途中で自殺し、からくり人形に魂を拾われてしまったからだと俺の家では言われていた。

一方自分本意な言葉がついている宝石だと、その言葉通り自業自得としか言い様の無い人生だったんだろう。

hr「っ、くそっ」

考え事をしてたら足を捕まれてしまった。転ばないようにしながらだと、攻撃出来ないので足元の奴に札を貼った後肩を掴んで身体を浮かせる。

小さめの人間に上から飛び乗って御札を貼り、 そして後ろからの攻撃に下からおもいっきり蹴りをいれる。

すると動きが止まり攻撃されなくなるので、その間に宝石を突き刺して倒す。他の奴にも札を張るが、次々にやってくる相手の攻撃を避けながらは難しいので、札だけを貼って逃げながら攻撃する。

徐々に数が減ってきてようやく余裕が出てきた頃、残した四体を見ながら呟いた。

hr「……君たちは逃げなくて良いの?」

ギリギリ……ガガガ

hr「逃がしてあげる」

俺が強く手を叩いて御札を挟み、ナイフで御札を突き刺すと一瞬にして人形に戻り、パラパラと剥がれて消えて逝った。

何もしていない悪くない奴を殺すのはあんまり得意じゃないからな。疲れた身体を脱力して座り込み、ふーっと息を吐く。


hr「疲れたー!」

ガタッ……!

hr「んぇ、誰?」

ur「……ヒロくん」


……マジかぁ……バレたぁ……

そりゃそうだよな…放課後とはいえあんなに騒いでたもんな。仕方ない……ここは、

hr「ねぇ……うり?」

ur「ぇ、何?」


hr「もし良かったらさ……」


この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚