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「……ゲーム、セット! ウォンバイ、北高!」
審判のコールと同時に、遥が崩れるようにコートに膝をついた。
「遥! 大丈夫!?」
私が駆け寄ろうとすると、審判台から降りてきた小谷先生が、私よりも一歩早く遥の前に立った。
「動くな。……朝倉、お前は救急箱からコールドスプレーと伸縮包帯を持ってこい。凌、すぐに成瀬を呼べ」
先生の指示は、驚くほど速くて的確だった。
「先生、でもさっき『戻れ』って……」
「……無理に動かして傷を広げないためだ。いいから早くしろ」
先生は膝をつき、大きな手で遥の足首を慎重に固定した。その手つきは驚くほど丁寧で、遥も痛みで顔を歪めながらも、大人しく先生に従っている。
「……小谷先生、すみません。俺、最後……」
「……勝てばいいというものではない。自分の限界を把握するのも選手の仕事だ。今回の件は、後でたっぷり説教してやる」
口調は相変わらず鋭くて怖いけれど、先生の視線は遥の怪我の具合を細かくチェックしていて、そこには確かな「教え子への責任感」が滲んでいた。
そこへ、凌先輩に呼ばれた成瀬先輩が血相を変えて走ってきた。
「ちょっと先生! 無理させたんじゃないでしょうね!?」
「……成瀬、騒ぐな。応急処置は済ませる。朝倉、お前は遥を保健室まで肩を貸してやれ。成瀬は俺と一緒に相手校への挨拶だ」
先生は私から受け取ったスプレーを一気に吹き付けると、最後に一度だけ遥の頭を乱暴に撫でて立ち上がった。
「……朝倉。しっかり見ておけ。これが無理をした代償だ」