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「遅いブランチの時間になりますが、もう食べられますか?」
「はい……」変わらずに並ぶ、文句の付けようもない料理の数々を見つめた。
じっとテーブルの上に目を落としたまま、いつまでも箸を付けられずにいると、
「……どうしたんですか?」
と、彼の方も箸を止めた。
「……。……昨日の夜、私、先生とは違いすぎるって……」
ひと息を呑んで、どうしてさっきははぐらかされてしまったのかを思い悩みながら、問いかけた私に、
「ああ、思い出されたのですね」
彼の方はさほど気にしてはいない風で応じた。
「……昨日は、酔っていろいろ言ったみたいなのに……どうして、先生は何も言わなかっただなんて……」
ぽつぽつと喋る私を一瞥して、
「無理に思い出させることでも、ないと思ったので」
彼が淡々と口にする。
「だけど……私、」
途中まで言いかけたところで、
「もう一度、蒸し返すのですか?」
と、言い被せられた。
「だって、本当に、私……先生とは、違うからって……」
尚も言いよどんでいると、「だから……?」と、冷えた目で見つめ返された。
「同じ話をしたところで堂々巡りです。昨夜には、もう話はついたのだから、それでいいでしょう?」
再び箸を手にして、彼が食べ始める。
「でも、昨日は酔ってたから……本当に、話がついたのかどうかなんて……」
自分自身はまだ食べ出すことができずに、箸を持て余していると、
「酔っていたから、気持ちに嘘をついていたとでも?」
メガネの奥から、上目遣いの視線が投げかけられた。
「そんなんじゃないけど……」
胸の中で納得のし切れない気持ちがわだかまり、口を閉ざして黙り込んだ。