テラーノベル
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俺は慌てて快の傍に寄る。
「快?」
「ん…恭也…」
快の様子がおかしい。
なんだかぐったりしているし、元気の無さそうな声だ。
快の様子を見て、陽雅さんは零斗さんの肩を掴む。
「一旦退いて。いつまで跨ってんの」
「あぁ…」
零斗さんは気まずそうに快の上から退く。
「熱吸ったの? しかもこんなになっちゃうまで」
「熱ですか?」
不思議に思い聞くと、零斗さんが答える。
「俺、サーモっていって感情の熱をエネルギーにしてんだよ」
「へぇ〜…」
俺が頷くと、零斗さんは続けて言う。
「客じゃねぇし流石にダメだろって我慢したけど、すげぇいい匂いするから…」
「我慢出来てないじゃん。なにしてんのもう…」
「悪ぃ…」
零斗さんが俯いてそう言うと、陽雅さんはため息をつく。
「てか、なんで恭也の友達が? 恭也、連れて来たの?」
「いやっ、連れてきてないです。駅は同じところで降りましたけど、そこで別れたんで」
「後つけてきてたって事? なんで?」
「なんででしょう…」
何となく理由が分かっていながらもそう誤魔化すと、零斗さんが口を開いた。
「なんかよく分かんねぇけど…」
─────────
ー数十分前ー
鍵を忘れた泰輝にチャイムを押され、中に入れた俺はリビングに戻る。
先にリビングに行っていた泰輝は自分の客に愛想を振り撒き、二階に行くよう促した。
そのまま立ち去ろうとする泰輝を俺は止める。
「おい。俺にありがとうとかねぇの?」
「なんで俺が零斗さんにお礼言わなきゃいけないんですか?」
「はぁ? 鍵開けてやったのもお前の客対応しといてやったのも俺だろうが」
「あーはいはい。ありがとうございました」
泰輝は棒読みでそう言う。
「お前なぁ…」
「うるさいです。お客さん待ってるんでもういいですよね?」
「はっ? …もういい。早く行けよ」
泰輝は無愛想に目を逸らし、そのままリビングを出ていった。
「ったくなんだよ…可愛くねぇな…」
(あー…腹減った…)
客がそろそろ来るはずだから、あと少しの我慢だな。
それから少しして、家のチャイムが鳴る。
(やっと来たか…)
玄関の扉を開くと、一人の青年が立っていた。
今回は新規の客。名前は確か…。
「よく来たな。ヒロ」
微笑んだら、しかめっ面をされた。
(やべ…名前間違えたか…?)
「あー…」
「恭也、居ますよね?」
「あ? 恭也?」
恭也って確か、あおの本名だよな。
「あおなら今取り込み中だけど」
「あお?」
ソイツは考える素振りを見せ、黙り込む。
沈黙が走る中、ふと彼から美味そうな匂いがしてくる。
(あぁやべぇ…余計に腹減ったわ…)
ソイツを見つめていると、急に俺を押しのけて中に入っていった。
「はっ? ちょっ、おい! 勝手に上がんな」
そんな俺の呼びかけを無視してソイツはリビングの扉を開けた。
俺も慌てて後を追いかける。
「おい。聞いてんのか。勝手に上がんなって」
「恭也、どこに隠したんですか?」
「隠したって…別に隠してねぇよ」
「もういいです。自分で探します」
そう言って歩き出す彼の肩を俺は掴んだ。
「ちょっちょっ、待てって。一旦落ち着けよほら、座って」
とりあえず落ち着かせようと、両手で肩を掴んで、ソファーに座らせる。
「まぁ、もうすぐ終わると思うからさ、ちょっと待ってろよ」
「終わるって、何がですか?」
「いや…なんつーか…」
(なんて説明すればいいか分かんねぇ…)
「…まぁ、とにかくもうすぐ終わるから」
ソイツはイライラした様子で辺りを見回している。
なんでコイツ、あお探しに人の家乗り込んでんだ。
あおの彼氏かなんかか?
「お前、あおの彼氏?」
「違いますよ。友達です」
「ふ〜ん。あおの事好きなの?」
「好きですよ。友達として」
ソイツは真剣な顔で続けて言う。
「恭也は大事な友達なんで、あなたみたいな誰にでも手出すような人と関わらせたくないんです。恭也の事、返してください」
(んな事言われても、俺陽雅じゃねぇし…)
「なんか勘違いしてるみてぇだけどまぁ置いといて、あいつ結構陽雅の事好きだぜ。今日お前が連れ戻してもまたここ来ると思うけど」
「それは俺が説得します。とにかく恭也出してください」
なるべく気にしないようにしてたけど、コイツからの美味そうな匂いは消えない。
むしろ、どんどん強くなっていく。
感情の熱が強くなるほど匂いが濃くなるから、多分すげぇ熱量だ。
(あぁ…この熱、吸いてぇな…)
「何俺見てお腹空かせてるんですか。もしかして、吸血鬼ですか?」
ソイツの言葉に俺は驚く。
なんで俺が腹減ってるって分かったんだ。
「あー。だから恭也の首元に絆創膏貼ってあったんですね。あれ、キスマだと思ってたけど、吸血痕ですか」
「いや、あれはお気に入りの印だけど…」
「お気に入り? やっぱり複数の人に手出してるんですね」
もっと濃くなった。美味そうな匂いが俺の体に広がって、酔いそうになる程だ。
(もう我慢できねぇかも…)
「やっぱり恭也を連れ戻すしか…」
「悪ぃ。我慢出来ねぇわ」
しかめっ面で俺を見るソイツの唇に俺の唇を重ねる。
そのまま押し倒してソイツの熱を吸い込む。
「んっ…!」
抵抗しようとしてるみたいだけど、全然力が入ってない。
そりゃあ熱吸われてっから、力なんて入らないよな。
「んんっ…!」
美味い。怒りの感情は強いほどピリっとしてて辛い。
でも、こいつの怒りの熱は辛いだけじゃなくて、旨さもある。
止まらねぇ。美味すぎて、全部吸ってやりたくなる。
「んっ…」
さっきまで抵抗しようとしてた手が下に下がった。
熱を吸いすぎると、吸われた相手はぐったりしてしまう。
(そろそろ止めねぇと…)
分かってるのに、止まらない。
コイツの熱は、他の奴と違う。
もっとだ。もっと欲しい。もっと吸いてぇ。
その時、後ろから陽雅の声がした。
「ちょっと零斗。こんな所で何してるの」
俺は慌てて顔を上げる。
ぐったりしたソイツを見て、やっと我に返った。
───────────
「って感じなんだけど…」
(快、俺の事心配して来てくれたんだ…)
「いくらお腹空いてたからって勝手に熱吸っちゃダメでしょ。これからお客さん来るんだし」
「そうだよな…」
零斗さんはそう言って俯く。いつもなら反論してそうなのに。
俺は快にもう一度声をかける。
「快。大丈夫?」
「…分かんない」
快は眠そうな目でゆっくりとした口調でそう言う。
「多分、一晩寝れば直ると思うけど…」
零斗さんがそう言うと、陽雅さんはため息をつく。
「どうするの。もうこの子立てないでしょ。家に連れてくの大変だよ?」
「ここに泊まらせるしかねぇか…」
泊まる。快一人で泊まらせたら、絶対起きた時暴れまわるでしょ。
「あの、俺も泊まります。快一人だと何かと心配ですし」
「あぁ…悪ぃな。ありがとよ」
そんなこんなで俺達はここに泊まることになった。
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#y.n
コメント
1件
ああ、読み終わりました…!もうほんとに、どきどきしながら読んじゃいました。 零斗さんの「我慢出来ねぇ」ってところ、切羽詰まった感じがすごくリアルで…。誰かを想う気持ちと本能の間で揺れるの、伝わってきました。でもそのあと我に返って「悪ぃ」って言うところに、彼の優しさも感じられて。 快くんが恭也を心配して後を追ってくるのも、ああいう形で表れるんだなって…静かな執着というか、不器用な想いがじわじわ来ますね。 恭也が「俺も泊まります」って言ったの、彼の責任感と優しさが出てて好きです。この三人、どうなるんだろう…続きが気になります!🌷