テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
.✴︎ 凛緒@ペア画中
50
ちぃ✩.*˚
303
シャワーを浴びてリビングに戻ると、ソファーに横たわる快の傍に寄る。快はただ、ぼーっとしていた。
「快、寝てて大丈夫だよ」
「分かった」
相変わらず、眠そうでゆっくりとした口調だ。
静かな快なんて、なんか新鮮だな。
俺は思わず笑みがこぼれる。
「おやすみ」
「おやすみ」
ゆっくりと目を閉じる快の頭を俺はそっと撫でた。
立ち上がると、ソファーの後ろから陽雅さんが来る。
「仲良いんだね。お友達と」
「はい。まぁ、小学校からの付き合いなので」
「やっぱり昔から仲良いんだ。こんな所に乗り込んでくるくらいだもんね」
陽雅さんはなんだか不機嫌そうだ。
お客さん以外が来たらさすがに迷惑だもんね。
「あー…ほんとすみません。起きたらちゃんと話すので大目に見てくれませんか?」
「別にそれはいいんだけど…」
それはいい。
だったらなんでそんなに不機嫌なんだろう。
「すみません。俺、なんかしちゃいましたかね」
「別に何も。どうしたの? 急に」
「いや、なんか表情が暗い気がして。陽雅さん」
しばらく沈黙が続いた後、陽雅さんは口を開く。
「仕事モード解除しただけだよ。俺、風呂入ってくるから」
陽雅さんは不機嫌そうにそう言い、風呂場に向かっていった。
(どう見ても不機嫌だけどな…)
疑問に思いながらも食卓の椅子に座る。
向かいに座る零斗さんはただ快を見つめていた。
こんな事態になってしまったし、来る予定だったお客さんには断りを入れたらしい。
「零斗さん、そんな顔しないでくださいよ。快の事なんで、ちゃんと謝れば許してくれると思いますよ」
「快…か」
「はい。快です」
「快っていつもあんな感じなのか?」
快を見たまま、零斗さんが問う。
「あんな感じがどんな感じか分かりませんけど、元気ですよ。すごく」
「お前に怒ったりもすんのか?」
「まぁ、そうですね。まさか乗り込んでくるとは思いませんでしたけど。俺が変な人好きになったんじゃないかって心配してて」
俺がそう言うと、零斗さんは何か思い出したような顔をした後、俺に視線を向ける。
「あっ…そういやぁソイツ、俺の事陽雅だと思ってんぞ」
「え? そうなんですか?」
「あぁ。だからなんか俺が怒られたわ」
「俺じゃないって言わなかったんですか?」
「まぁ、言えばよかったんだろうけど腹減っててそれどころじゃなかったし、言ったら陽雅の部屋乗り込みそうだったしな」
危ない。快に行為見られる所だった。
「すみません。ありがとうございました。お陰で助かりました」
「ん。まぁ、気にすんなよ」
零斗さんはそう言いながら再び快に目を向けた。
しばらくして、陽雅さんがリビングに戻る。
「恭也、夜ご飯食べるよね。アレルギーとかある?」
「いや。無いです」
「じゃあ、ちょっと待ってて。作ってくるから」
陽雅さんはニコッと笑ってキッチンに向かった。
俺は食卓に座ったまま、晩御飯を待つ。
キッチンからはいい匂いがして、食欲がそそられてくる。
しばらく待っていると、料理の盛られた食器を持って陽雅さんが歩いて来た。
「お待たせ」
陽雅さんが机に料理を置く。そして、隣に座った。
「ありがとうございます。すげぇ美味そうです」
「ありがとう。でも、味はどうかな」
そう言って料理に目を向ける陽雅さんを見て、俺は手を合わせる。
「いただきます」
一口食べると、口の中に旨味が広がった。
「ん! めっちゃ美味いです」
「良かった」
陽雅さんはニコッと笑い、箸を取って一口食べる。
「美味しいね」
俺を見つめて笑いかける。
心臓がドキッとした。
なんか、彼氏感やばいな。この人。
なんだか目が離せなくて、しばらく見つめてしまった。
そんな時、横から声がする。
「おい、美味そうな匂いさせてんじゃねぇよ」
声のする方を見ると、零斗さんがこっちを見ていた。
「あっ…零斗さんも食べます?」
「バカ。違ぇよ。お前だよ」
「えっ。俺ですか?」
零斗さんは陽雅さんをチラッと見た後、立ち上がり俺の傍による。
俺はそんな零斗さんに合わせて、体を向けた。
零斗さんは少し屈み、陽雅さんに聞こえないように小声で言う。
「陽雅への好きが溢れて匂いやべぇから。お前」
その言葉を聞いて、俺の体が熱くなる。
「そ、そんなにですか?」
小声でそう返すと、零斗さんはこくりと頷く。
どうしようかと困惑していると、部屋に低い声が響く。
「零斗、何してるの?」
その言葉で俺と零斗さんは顔をあげる。
陽雅さんの顔を見ると、冷たい目で零斗さんを見ていた。
「あ? 別に。ちょっと内緒バナシ」
「へぇ〜。美味そうな匂いするとか言ってたけど、まさか、恭也の熱吸う気じゃないよね?」
怖いほど冷たい目と声だ。
快の事もあったから怒ってるんだろうけど、流石に少し怖い。
「吸わねぇよ…だからそんな怖ぇ顔すんなって」
零斗さんのその言葉で、陽雅さんの目が緩む。
「…あっそ。恭也には手出さないでね。絶対」
「はいはい。じゃあ俺、風呂入ってくるわ。俺、邪魔だろうし」
零斗さんはやれやれといった感じで立ち去った。
そんな零斗さんを見送った後、陽雅さんは笑顔で俺を見る。
「恭也、気をつけてね。零斗も泰輝もお腹空いてたら歯止め効かなくなって無意識に手出しちゃうから」
陽雅さんは俺の首元に残る痕を指でなぞり、呟く。
「恭也は俺のお気に入りでしょ?」
体がゾクッとするような声。
俺の、大好きな声。
「…そうですね」
自然とそう言っていた。
俺の返事を聞いて、陽雅さんはニコッと笑う。
「ご飯、冷めちゃうから早く食べよ」
陽雅さんは料理を口に運び、再び笑う。
「美味しい」
その笑顔は、さっきの彼氏みたいな笑顔ではなくて、なんだか少し、支配されてしまいそうな笑顔。
そんな陽雅さんに目を背け、俺も料理を口に運んだ。
寝る時間になり、部屋割りを決める。
二階の空いている部屋にベットがあるらしく、そこに快を寝かせることになった。
俺はそんな快のベッドの横で布団を敷いて寝ることに。
俺は、ソファーで眠る快に声をかける。
「快。二階のベッド、貸してくれるって。立てる?」
「ん…」
快は眠そうに目を擦りながら頷く。
起き上がろうとしたのか、踏ん張るような声を出す。
だが、少しも体は上がらない。
「…むり」
「そっか…」
(どうしよう…)
俺が手引っ張って起こしてあげる?
でも、その後は?
おんぶして連れてく?
俺が苦悩していると、横から声がする。
「俺が連れてってやるよ」
零斗さんだ。俺たちのやり取りを見てたのかな。
「いいんですか?」
「あぁ。元々俺がまいた種だし。ほら、そこどけよ」
「はい」
俺は慌ててその場を退く。
零斗さんは快の前に立つと、快の背中と膝裏に腕を回し、軽々と持ち上げた。
「軽ぃな。コイツ」
抱き抱えられた快は、
「…お前…恭也の…」
とゆっくり呟き、零斗さんを睨んでいる。
「悪かったな。俺が責任もってベッドまで運んでやるから」
零斗さんはそう言って歩き出した。
コメント
1件
うお、完全にお邪魔ムーブかましてる快、気まずすぎる (笑) でも零斗さんが「元々俺がまいた種」って快をお姫様抱っこで運んでくれたの、渋くて良かったな。陽雅さんの不機嫌の原因が恭也への独占欲ってのが一番刺さった。首の痕なぞりながら「俺のお気に入りでしょ?」は反則だわ…。支配系的微笑みの彼氏感、たまらん。心臓ドキドキした。