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#異世界転移
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コメント
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はる。だ。第32話「狩猟大会①」読了〜! うわ、冒頭から麗霞が腰を痛めてて「これ姜弘様正解だわ」ってなるの、めっちゃ分かる。山道のガタガタ、あれ響くんだよな……。 そんで煜峰からの「雲嵐に近付くな」指令がまた不穏すぎる!何かあるんだろうけど、理由を明かさないまま、結局足を挫いた官女の代わりで雲嵐の補佐をさせられる麗霞……。この「近付くなって言われたのに逃れられない」展開、すごくハラハラするわ。 麗霞の「春画しか脳がないのに察しろって無理」って自己評価もクスッときたし、一方で皇太子の警備とか暗殺リスクに気づく鋭さもあるのが良いキャラしてるなあ〜。次の話が気になる!
帝都から北にある広大な山林。
皇族が狩猟を楽しむ場として設けられているこの場所に、麗霞は痛む腰を擦りながら馬車から降りた。
「痛たた……」
舗装された街中を走る時ならいいのだが、山中のガタガタとした道を走られると体にこたえる。
よろよろになりながらも、休んでいる暇などない。他の人は天幕を張ったり荷物を運んだりと、既に動き出しているのだから。
昨日出発して、目的地に着いたのは今日の朝。準備が終わって昼過ぎには狩猟が始まるだろう。
「これは姜弘様が正解だわ」
画材道具の入った木箱を運びながら、姜弘が「行かない」と即答した訳を改めて思い知った。
以前同行した時も痛くて大変だった事は記憶していたが、こんなにキツかったっけ? と首を傾げたくなる。
「麗霞や、身体をお揉んでおくれ。もう痛くてたまらん」
「はい、ただ今」
皇帝陛下お気に入りのこの画人の機嫌を損ねてはいけないと、画院にいる人なら誰でも承知している。そういう訳で麗霞は天幕の準備や荷物運びやらは他の人に任せて、姜弘の体を揉むことにした。
麗霞のマッサージの気持ちよさに姜弘がうたた寝をし始めた頃、煜峰がこの後の日程を伝えにやって来た。
今日は宮廷内で着ている官服ではなく、袖口がもたつかないよう革製の腕カバーが嵌められており、動きやすそうな格好をしている。
まるで煜峰が狩猟でもするかのようだ。
「あと半時もしたら始まる。姜弘殿が円滑に描き始められるよう、それまでに準備をしておくように」
「承知致しました」
「それから」と続けた煜峰は、麗霞の耳元に顔を近付けた。
「姜弘殿から絶対に離れるな」
何故そんな当たり前のことを?
姜弘様のお世話係として付いてきたのだから、当たり前では?
キョトンとする麗霞に対し、煜峰は怒っているのかと思う程真剣な顔をしている。
「特に雲嵐の近くには寄るな」
「雲嵐様に?」
雲嵐には他の官女が付いているし、特別用がなければこの大会中にはそこまで関わらないはず。
「一体何故そんなことを……」
「雲嵐には近付かない。これさえ守っていれば良い」
事情を説明する気はなさそうだ。
そう難しいことを言っている訳でもないので、素直に頷き返した。
「分かりました」
程なくして狩猟大会がはじまった。
姜弘の寝起きの機嫌が良くなるよう甘味と茶を用意し、続いて何時でも描き始められるよう画材道具も準備。
今回の狩猟に皇帝陛下は参加していないが、皇子が幾人かと、重鎮と呼ばれる高官やその子息が多数参加している。
その中には、暁明皇太子の姿も。
狩猟大会なんて、暗殺にはもってこいよね。
皇宮の中は警備が厳しいし、人も多いので怪しい人がいれば見つかりやすいが、山の中ではそうもいかない。
木の影や藪の中、ちょっとした地面の窪みなど、隠れるところなら幾らでもある。
もちろん腕利きの護衛を連れているのだろうけど、皇太子殿下は大丈夫なのかしら。と暁明皇太子の方へと目を向けると、そのすぐ側に馬に跨った煜峰がいた。
煜峰も皇子として狩猟大会に出るということ?
弓矢と剣も持っているし、皇太子の一行に混ざっていることから、一緒に行くのかもしれない。道理で動きやすい服装をしていたわけだ。
麗霞が思った通り、狩りが始まると煜峰は、暁明皇太子と共に森の中へと消えていった。
しばらく狩りの様子や山の中を見て回っていた姜弘だったが、野営地に戻るとおもむろに筆を手に取り、紙の上で滑らせ始めた。
姜弘が頼まれているのは鑑賞用の作品であって記録用ではない。イメージさえ固まってしまえば、あとはひたすら描き起こしていくのみ。
集中している時は無闇に話し掛けてはならないので、呼ばれるまで麗霞は天幕の外で待機することにした。
「動けそうか?」
「うぅ……っ」
女性のうめき声が近くで聞こえてきて目をやると、雲嵐と官女が救護用に張られた天幕から出てくるところだった。
「どうされたのですか?」
「ああ、麗霞か。雨涵が足を挫いてしまったんだ」
見ると、官女の左足首に布が巻かれている。医官に診てもらって、天幕から出てきたところだったらしい。
「大丈夫です……痛っ!」
歩こうとして、すぐに苦悶の表情を浮かべた。結構派手に捻ってしまったようだ。
「参ったな。手の空いている官女はいないし。下女か下男に代わりをやらせるしかないか」
狩猟大会に来た官女は画人一人につき一人だけ。下女や下男なら大勢いるが、官女はギリギリの人数だったので代わりがいない。
「麗霞、どうした?」
話し声が気になったのか、天幕から姜弘が出てきた。
「姜弘様、お騒がせして申し訳ありません。雲嵐様に付いていた雨涵が足を捻って動けなくなってしまったのです。代わりに下男か下女をと話していた所です」
雨涵の足を見ると、姜弘が「ふぅむ……」と白い顎髭に手をあてて唸った。
「仕方ない。麗霞、お前さんが雲嵐に付いてやりなさい」
「え?」
「いえ、姜弘様の官女を借りるわけには参りません」
「記録画をきちんと残す必要がある。茶汲みなら下女でも務まるが、補佐となると支障も出るであろう。儂の方は麗霞が事前にしっかりと準備をしておいてくれたし、記録画ではないから後でゆっくりと描けば良い」
「左様ですか……それならばお言葉に甘えて、麗霞をお借りします」
あれよあれよという間に、雲嵐の補佐をすることになってしまった。
どうしよう……。煜峰殿下に雲嵐様には近付くなと、きつく言われたのに。
とは言えここで「出来ません」とは到底言えない。
煜峰があんなことを言ってきたのは何かしらの事情があっての事だろうけど、今は緊急事態だ。雲嵐付きの官女が怪我で動けなくなるなんて、想定外だったのだから。
だいたい煜峰は秘密めいたことが多すぎる。
皇子という立場上、仕方がないのかもしれないが、春画を描くしか脳がない麗霞に察しろという方が無理がある。しかも、その春画の方だって最近では上手くいってないし。
煜峰のことを考えたらまたイライラしてきた。
「分かりました」と返事をした麗霞は画材道具の詰まった持ち手つきの木箱を片手に、雲嵐と狩りの様子を見に行くこととなった。