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#潔受け
「無礼者共が、まとめて我が刃の錆となれ!」
先頭の武士が刀を振り下ろした。
倍加された魔力が白刃を駆け巡り、赤色の百々目鬼の巨体を捉えた瞬間、凄まじい高圧の電流が周囲に炸裂した。
「ギ、ガァッ……!」
喰らった側に強烈な電撃が走り、神経を狂わせ、一撃で気絶へと追い込む武士の妖術。
流石は城の精鋭、凶暴な赤の個体すら一瞬で昏倒させ、消滅させていく。
だが、敵は十体以上の大群だ。
恐怖から生まれた紫の百々目鬼たちが、無数の目を血走らせて武士たちへ襲いかかった。
「うわあ、すごい数! でも、これならどうかしら!」
見た目のふわふわとした愛らしい印象とは裏腹に、葵は勇敢に一歩前へ出た。
彼女が鋭い口笛を吹くと、空を覆うほどの鴉の群れや、床を埋め尽くすほどの野良犬や野良猫たちが路地裏から一斉に飛び出してきた。
「みんな、お願い! 力を貸して――『鳥獣化の術』!」
葵の動物に関わる妖術によって、集まった獣たちに淡い桃色の魔力が宿る。
彼らは恐れることなく百々目鬼たちへと飛びかかり、その鋭い爪や牙で、百々目鬼の全身にある「目」を次々と攻撃してその視界を塞いでいった。
「よし、みんなナイス! 隙だらけだよ、正一!」
「あはは、流石は葵! 動物たちも葵のためなら大張り切りだね!」
いつもの明るい調子で、陽気に笑いながら正一が前に出る。
誰にでも好かれる彼のいつもの笑顔――。 しかし、次の瞬間、正一の笑顔から一切の体温が消え失せた。
その瞳の奥に宿ったのは、ドス黒く冷徹な、底無しの執着。
「……さあ、僕の葵に近づいた罰をあげようか」
正一は懐から、不気味な黒い呪符に包まれた小さな土壺を取り出した。
彼が得意とする『蟲毒』の呪いの媒介だ。
彼は無機物を操るような小細工は使わない。
ただ純粋に、対象を内側から腐らせる生粋の呪殺術。
「我が呪詛を以て、骨の髄まで腐れ落ちろ――『蟲毒・五月雨の呪縛』」
正一が低く呟くと、壺から溢れ出た目に見えないほどの無数の「呪いの蟲」たちが、黒い霧となって百々目鬼たちの身体へと吸い込まれた。
普段の明るい陽キャな姿からは想像もつかない、あまりに禍々しい呪詛の気配。
「ガ、アア……!?」
呪いを喰らった瞬間、紫の百々目鬼たちの肌がどろりと黒く腐食し始める。
骨の髄まで侵食するような激しい呪いの毒が、百々目鬼たちの巨体を内側から蝕み、その場に縛り付けた。
「な、んだあの術は……。あんなに明るそうだった少年が、これほど悍ましい呪いを使うというのか……」 武士の一人が、正一の放つ圧倒的な魔力とギャップに恐怖して声を漏らした。
だが、正一はそんな周囲の目など一瞥もくれない。
彼の視線はただ一点、葵の安全だけを捉えていた。
「武士の方! 動きが止まった奴から順に、刀で仕留めて!」
葵の声にハッと我に返った武士たちが、再び雷光を纏わせた刀を振るう。
完璧な連携によって、十数体いた百々目鬼の群れは、瞬く間に残りわずかとなっていった。
しかし、戦いが終わろうとしたその時。
葵の足元の影から、ぬうっと、不気味な「青色」の腕が伸びてきた。
戦闘に加わらず、息を潜めていた「孤独」の百々目鬼だ。
それは葵を攻撃するのではなく、そのふわふわとした身体をどこかへ連れ去ろうと、長い腕を彼女の胴体に巻き付け、強引に闇の奥へ引きずり込もうとした。
「きゃっ……!? なに、これ、動けな――」
「――あ?」
葵が引きずられそうになったその瞬間、正一の口から、地を為すような獣の声が漏れた。
その顔から表情が完全に消え去る。一途ゆえの狂気が、彼の理性を一瞬で焼き切った。
「僕の、葵に……何触ってんの……?」
正一の周囲の空気が、パキパキと凍りつくようにひび割れる。
彼の身体から限界突破の呪詛のオーラがドス黒く噴き出した。
正一は懐から十数枚の漆黒の呪符を同時に引き抜くと、青い百々目鬼の腕めがけて容赦なく叩きつけた。
「『怨詛・壊壊の蝕』。――死ね」
凄まじい呪気の奔流が、一瞬で青い百々目鬼の腕を骨ごと腐らせ、爆破した。
「ギ、アアアァァァーーーッ!?」
青い百々目鬼が腕を失って絶叫を上げ、のたうち回る。
引き剥がされた葵の身体を、正一はすぐさま左腕で強く抱き寄せ、自分の背中の後ろへと庇った。
その手つきは驚くほど優しく、しかし絶対に離さないという強い執着に満ちていた。
「葵、怪我はない? 怖かったよね、もう大丈夫だからね」
葵に向ける声だけは、いつもの明るい正一のトーンに戻る。
だが、その瞳は一切笑っておらず、どす黒い呪気を纏ったまま、千切れた腕から黒い泥を流して這いずり回る青い百々目鬼を、冷酷に見下ろしていた。
「あ、あの少年、何て強さだ……」 武士が、その圧倒的な呪いの力と、お嬢さんへの異常な一途さに完全に気圧されていた。
腕を失った青い百々目鬼は、恐怖に満ちた目で正一を睨むと、残された足でずるりと夜の闇の奥――「城」へと続く古い地下道の入り口へと、逃げるように消え去っていった。
「待ちなさい! 逃がさないわ!」 腕からすり抜けた葵が、勇敢に地下道の方を指差す。正一の背中の後ろからひょこっと顔を出した彼女は、いつものふわふわとした癒やし系の雰囲気に戻りつつも、その瞳には凛とした光が宿っていた。
「正一、あの妖、逃げる時に凄く悲しくて恐ろしい気配を遺していった。それに、さっき倒した奴らの場所にも、あの『刀の鍔』が落ちてる……。やっぱり、あの城の地下で、何かが起きてるんだわ」
「うん、葵がそう言うなら、そうだね。じゃあ、あの奥にいる奴らも……全部呪い殺しに行こうか」
正一はいつもの陽キャな笑顔を浮かべながら、さらりと恐ろしいことを口にする。
葵を害そうとした存在がいるかもしれない場所。
それを、彼は絶対に許さない。
「少年、待て! 我も行く! あの鍔の模様は、我が同胞たちのものだ。城の地下に何があるのか、我らの刀で確かめねばならん!」
武士が、刀を握り直して言った。
「ふふ、心強い味方ができたね、正一! よし、みんなで城の闇を暴きに行ましょう!」
葵の明るい号令と共に、少年と少女、そして城の武士は、すべての元凶が眠る不気味な地下道の奥へと足を踏み入れた。
コメント
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おお、第4話も熱かったな…! 正一の陽キャからのギャップえぐい。「僕の葵に触んな」でスイッチ入るの最高に癖になるわ。葵の動物使役も可愛いし、二人の連携がガチでかっこよかった。青い百々目鬼の不意打ちからの正一の『♡♡♡』、鳥肌立った。地下道に何があるか気になりすぎる! 続きめっちゃ待ってる🔥