テラーノベル
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同級生全員に殺害予告をしてこの先一生何かに怯えながら生きてもらおうと思ってた。
今日で学校を辞める。
今日でこんな学校を辞めることができる。
大学って結局、何も面白くない気がした。
何も面白くなかった。
何のために通っているのか、分からない。分かるわけがなかった。
……
……
……
パソコンのキーボード音を聞くのが、なんか嫌で、ヘッドフォンで環境音を遮る。
カフェのBGMも遮っている。店員の声も、まわりの雑音も、メロンソーダの炭酸が弾ける音も、遮る。
何を打ち込んでいるのか。
それは、先生に学校を辞める旨を提出するための、文書。
「何書いてるの?」
ヘッドフォンを外された。一気に、カフェのBGMと、店員の声と、まわりの雑音と、メロンソーダの弾ける音が聞こえてしまった。
……瑠花。
ヘッドフォンを外したのは、姉の瑠花。
高卒の会社員。
「あ!また大学辞めようとしてるね!」
瑠花は隣の席に座ってきた。
カウンター形式のカフェ。
「俺の勝手でしょ」
「そう言って、これ書くの何回目?」
…………
3回目。
「辞めない方がいいよ、って……何回も言ってるじゃん?」
黙れよ。
もう、黙れよ。
何が苦しいのかも分からないくせに、大学行ってない人に、そんなこと言われたくないんだってば。
気分が悪かった。
今はなにも耳に入れたくなかったのに。耳に入れたかったのはただ、俺を守ってくれる人の、俺を知ってくれている人の、声だけで。
とにかく早く歩いて、店を出た。
先払いのメロンソーダはもうきっと、美味しくないから。
何も味がしないだろうから。
「ちょっと待ってよ……!」
瑠花は追おうとしたが、大荷物だったので、それを置き去りにして追うことができなくて、追うことをやめた。
はぁ……
はぁ……
はぁ……
その場で俺は動けなくなった。
こんな現実が、受け入れられなかった。
大学生に、なってしまった。
もう、逃げられない。
言い訳ができないんだ。
成人。
18歳。
大人。
子供じゃ、ない。
ピーターパン症候群だってどうせバカにされるから、みんなに言えない。
みんなどうして、自分が大人になったことを受け入れられてるのか、分かんない。
怖くないのか?
将来に怯えることが、ないのか?
あんなに能天気で、スマホしかみていない人間たち、怖くて仕方ないよ。
俺だけずっとこの先の未来に、人生に、怯えていて、ほんとうにバカみたい。
これが普通だと思って入学したのに、これが異常だと突きつけられたら、何もかもがわからなくなった。
……
瑠花が、また、現れた。
現れたっていうか、追ってきた。
大荷物を抱えて、地面で動けなくなった変な俺を、眺めていた。
「……今日は、もう、美味しいものを食べよう?」
「何も食べたくない」
即答してしまった。
瑠花を傷つけることになるのは分かってたけど、傷つけたくなってしまった。
こんな自分のこと、みんな嫌いになればいいと思ってしまった。
異常なら、過去しか好きになれない自分のことなんか、。
「……どうせ、また、レストランで、言うんだろ。」
「なにが?」
「大学は辞めない方がいいって話だよ。大学の卒業資格をとらないと、この先苦しいって」
「……」
「じゃあ今苦しい俺は許されないんだろ。今の話してるのに、みんな先のことばっか……!!!」
「……そんなこと、」
自分がずっと誰かに殺害予告されてるみたいなんだよ。
大人になったら人生が終わりって、不思議とずっと頭の中でそればかり考えてしまう。
大人になったら誰も守ってくれないから、それじゃあ殺されてしまうんじゃないかって、怖い。
じゃあ何から守ってほしいのか?
俺はそれを早く知りたい、でも知れない。
だって怖いから、知りたくない。
ここにいる意味がない。
本当にもう、全部を突き飛ばしたい。
何も面白くない。
高校生に戻りたい。
中学生に戻りたい。
小学生に戻りたい。
簡単な絵を描いて褒められたい。
ちょっと賢い言葉を使っただけで褒められたい。
へにゃちょこなピースをして可愛がられたい。
滑って転んでみんなが俺を心配して、カラフルな絆創膏を貼ってほしい。
頭を撫でてほしい。
ずっと、
横にいてほしい。
もう何も、したくない。
「………………うん。そんなことないことは、ないね。」
瑠花は口を開いた。
………………
……………………
呆れる。
「言う通りだよ。大学の卒業資格がないと就職できっと苦労することになる。私も高卒だからって理由でなかなか仕事が回って来なかったりするから、結構不便だよ?
今はどうでもいいかもしれないけど、この先嫌でも思い知ることになるんだよ。」
これは、大人という俺に向けて言っている言葉で、
もう、
この世界に、
子供の自分がいないなんて、
たった数年経つだけで、
消えてなくなるなんて、
そんな悲しいこと、
突きつけないでくれよ。
バッ……
気づいたら俺はカバンに手を突っ込んでいた。
硬いものを探していた。
パソコンを取り出した。
……ッ!!!
ガシャアン!!!!!!
俺は自分の頭をパソコンで殴った、強く。
そしてパソコンは壊れたし、
俺の頭から血が垂れてきた。
痛い。
苦しい。
「ちょ、大丈夫……!?!!?!」
瑠花は俺の頭を撫でない。
携帯で、119を押している。
もう誰も俺の頭を撫でてくれない。
可愛がってくれない、褒めてくれない。
子供の俺はもういない。
ああ、パソコンで頭を殴ったことをすぐに後悔してしまった。
早くどんなに痛いことも楽しめるようになって、簡単に死ねればいいのにな。
そうすれば、こんな俺は、一刻も早くこの世界から消えるのに。
やっぱり自分を殺すことは、できなかった。
文書なんか、かけなかった。
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