テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
それから数日後。私はカイル殿下を伴い、公爵家の門を叩いた。出迎えたのは、ソフィアを役立たずと蔑み続けた養父、ヴァンクロフト公爵。そして、ぶよぶよと肥った身体を礼服に押し込み、菓子を口に放り込んでいる長男、ポー。
「これは、これは殿下と妃殿下」
ポーはクチャクチャと音を立てて咀嚼しながら、私の胸元を舐めるような目つきで見回した。
「……あ、ソフィアだぁ。前よりずっと美味そうになってなーい? ぼくちゃんの新しい愛人にしてあげてもいいよぉ。……んぐ、ムシャムシャ」
カイル殿下の拳を握りしめ、周囲の空気が一瞬で凍りついた。
オリジナルのソフィアの記憶によれば、ポーは彼女に卑猥な視線を向け、寝室に侵入しようとするなど、執拗に付きまとっていたという。さらに、使用人を虐待し、それを庇ったソフィアを「生意気だ」と殴りつけた――そんな男だった。
私は努めて優雅に、微笑みを浮かべた。
「お久しぶりですわ、お義父様、お義兄様。今日は素晴らしい良い報せを携えて、里帰りいたしましたの♡」
「ほう、報せだと……?」
「ええ。私、新しい命を授かりましたの。……この国の、次なる太陽となる子を」
「おお、おおお! でかしたぞソフィア! 我が息子を皇室上級職員にねじ込んだ甲斐があった!出世は確実だな!」
公爵とポーは醜く顔を歪めてニヤついた。これで皇室との縁は盤石、自分の権力は永遠だと確信したのだろう。
「はっはっは! さあ、中へ入れ! 祝杯を挙げようではないか!」
公爵が私の肩を抱こうと手を伸ばしたその時──私は扇を「パチン!」と閉じ、その手を遮った。
「……あら。触らないでくださる? 汚らわしい」
「……は?」
「祝杯は必要ですわね。お腹の子の『敵』を、この手で一人残らず排除できる……その記念すべき門出に」
「何を……何をたわけたことをっ!」
「シェリーは、すべてを吐きましたわ。あなたが黒魔法師を匿い、領民を生贄にしたことも。……それからお義兄様。あなたが横領した公金の証拠、そして私や使用人への暴行記録も、すべて揃っていますのよ?」
「で、デタラメだ!」
「ぼくちゃん悪くないもぉん!」
二人が叫ぶと、カイル殿下が一歩前に踏み出した。
「……見苦しいぞ。貴様の書斎の証拠書類はすべて押収した」
聖国ルミナスを滅ぼした帝国の敵国・バハムート王国。公爵軍が彼らに手を貸す見返りに、帝国への反逆を支援するという軍事密約書。ソフィアを引き取ったことを隠蔽するための偽造出生証明書。そして――「しつけ」と称して幼いソフィアの肌を鞭で打ち、無理やり聖力を引き出そうとしていた狂気の日記。
殿下の合図とともに、騎士たちが一斉に二人を組み伏せた。 公爵とポーは腕を振り回して抵抗するが、瞬時に大理石の床へとねじ伏せられる。
「がはっ……! 育ててやった恩を仇で返す気か……っ!?」
「パパぁ、助けてぇ! 痛いの嫌だぁぁ!!」
這いつくばる醜い親子を、私は氷のような眼差しで見下ろした。
「恩……? ふふ、面白い冗談ですわね。地獄の底で、親子仲良く泥を啜りなさいな」
#溺愛
88