ふと触れた彼の指はひんやりと冷たくて、僕は思わず
「冷たっ」
と声に出した。
「あぁ〜末端冷え性なんだよね僕」
そういってしげしげと自分の手を見つめる涼ちゃん。
「え〜、僕も冷え性な方だと思ってたんだけどな。マジで氷のように冷たいじゃん」
そんなに?と苦笑する。それから僕の手を触って
「ほんとだぁ、元貴の方があったかい……」
と何故か少し悔しそうだ。
「冬だからね、余計に冷たくなっちゃうんだよねぇ」
そう続けながら、するりとその指先を僕の服の中に侵入させ、手首に触れる。その冷たさに僕は思わず、ひゃっ、と声を上げて肩を震わせた。
「わ〜あったかい、カイロだカイロ、あっためて〜」
「やだやめてー!つめたいつめたい!手首はよくない!」
じゃあ首?といって手を持ち上げた涼ちゃんに、フードを被って触らせまいと対抗する。
「首だったら自分だってあったかいでしょ、自分の触りなよ」
と口を尖らせながら文句を言うと
「そしたら僕が寒いじゃない、それに人のがあったかいし」
と同じように口を尖らせてくる。
「ひっど」
聞きました?彼は自分があったまるためなら人の体温を平気で奪うやつなのです!と彼のファンに声を大にして伝えてやりたい。
「首以外ならいいの?」
涼ちゃんが体を寄せて、僕の腰に手を回してくる。まさか、と思う間もなく服の隙間から差し入れられる手。腰のラインを涼ちゃんの冷たい指先がなぞる。
「ひぃっ!ぎゃあぁぁぁ!」
「ちょっ、元貴暴れないで」
「暴れるわ!冷たいんだよ馬鹿ッ!あぁぁぁ!お腹はダメっ!本当に無理っ!」
構わずに腰やらお腹やらを冷たい手で撫で回してくる涼ちゃんの頭を、遠慮なくべしべしとはたく。僕の反応が面白いのか、珍しくSっ気をだしているのか知らないが頑なに離そうとしない涼ちゃんに、このやろ、と言って背中に手を回して服の中に手を突っ込む。
「うおわっ、元貴冷たいっ」
「てめぇよりマシだっ」
怯んだところで、押し倒されかけていたところを足を使って彼の肩を押し返して体勢を逆転させる。右手を使って涼ちゃんの肩をソファに押し付け、そのまま左手でわき腹を撫でると、くすぐられるのに弱い涼ちゃんは、やめて〜と顔を真っ赤にしながら暴れた。
「仕返しだ」
にやりと口の端を釣りあげてわらう。たぶん今の僕はすごく悪い顔をしている。涼ちゃんはくすぐられて笑い転げたせいもあって涙目だ。
「悪かったよ元貴、ごめんって、許して〜」
「だめ」
体重をかけて彼が動けないようおさえこみながら、遠慮なくくすぐりをかける。冷たさとくすぐったさが相まって、涼ちゃんはぎゃあぎゃあひぃひぃ笑い転げている。
思う存分仕返しをして満足した頃には2人とも息が上がって、なんなら汗までかいていた。
「あっつ……」
涼ちゃんが着ていた薄緑色のカーディガンを脱ぎ、シャツのボタンを開けてぱたぱたと手で顔をあおぐ。あらわになった鎖骨にはうっすら汗が浮かんでいる。僕もパーカーの袖をまくって大きく息をついた。
「つっかれた、ほんと何してんだよ」
「元貴がくすぐるから〜」
「最初に仕掛けたの涼ちゃんじゃん!」
あれ、そうだっけ?と首を傾げる涼ちゃん。本当にこの男は。
「あー、手が冷たいって話からか。はは、こんなに動いたらさすがにぽかぽかだね」
ほら、と僕の頬に触れる手は確かに温かい。
これなら触れても怒られないね、と涼ちゃんはこちらに顔を近付ける。唇がふれあって、彼は僕の唇を啄むようにキスを重ねる。やがて、それはだんだんと深いものへと変わり、先程落ち着かせたはずの息はまた上がってくる。
冷え性で、基礎体温も低めの涼ちゃんの舌はいつもちょっとだけぬるい。僕はそれがどこか心地よくて、たまらなく好きだ。
こんなに息や肌が熱くてもそれは変わらないんだな、と深い口づけに溺れながら、頭の片隅でそんなことを思った。
※※※
センシティブに含めるか否かを最後まで迷いながら、まぁこれくらいならセーフかしらと思いこちらの短編集へ……
今週は寒波が厳しいらしいので、皆さん体調にはお気をつけてお過ごしくださいね!
コメント
5件
2人が可愛いჱ̒✧°́⌳ー́)੭ こっちが幸せになりますね
ぶっ飛びそう🥰
なんですかこれ…最高じゃないですか