※もっくんが片思いのお話です
※※※
「涼ちゃーん、大好きー」
楽屋でもスタジオでも、ちょっとおちゃらけた感じで腰に抱きつけば
「ふふ、ありがとう〜」
って頭を撫でてくれる。
「僕、藤澤のこと大好きなんですよね」
とスタッフに真面目な顔をして話していると
「えぇ〜、急に何〜」
って照れくさそうに笑ってみせる。
疲れている時や落ち込んでいる時に
「大好き……」
といいながら頭を彼の背に押し付けると
「大丈夫?」
って僕の心配をしてくれる。
でも、
「涼ちゃん、大好きだよ」
あの日、袖を掴んで微かに震えながら伝えた言葉には。
ただ黙って少し困ったように微笑んでみせるだけだった。
今朝のニュースはある話題でもちきりだった。どのチャンネルをまわしても、同じようなテロップで同じことを報道している。
キャスターもコメンテーターも皆揃って同じような笑顔で、祝福の言葉を並べる。
「いや〜、衝撃ですね。あの人気バンドの……」
「おめでたいですね、なんでも藤澤さんの仕事関係で出会われたそうで」
テレビ画面の下半分に大きく示されたテロップには
『電撃結婚!!大人気バンド ミセス キーボード藤澤涼架さん』
「お相手は一般女性ということで……」
「それではこちらご覧ください。昨晩藤澤さんが自身のSNSに更新した___」
やけに大きく響くキャスターの声が耳に障って、ニュースの途中でテレビを消した。
「……大好きだよ」
小さく呟いた言葉は静かな部屋に虚しく響く。
なにか反応を返してくれるはずだった君はもうここにはいない。
コメント
3件
久しぶりに読みにきました。 めっちゃ切ないお話でした…💦
泣いちゃう…😭切ない…