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人々は崇める
依存のように呪いのように永遠に崇め続ける
腕が喰い千切られようと足が捥がれようと死んだとしても祈り続ける
神を信じぬものは虐殺された
「神を信じよ」
「神こそ全てを支配する者」
「信じれば救われます」
「崇めればあなたに救済が訪れる事でしょう」
「神さえ信じれば良いのです」
今日も神からのお告げとか言いながらくだらないことを述べる村長がいる
「神からのお告げがありました」
「霊灰山に子供を供物として捧げなさいと」
それを聞くと村民達は
「それはすぐにしなければ」
「子供を集めろ」
などと言い始める
この村は全てが異常だった
住民の神への信仰心の高さ
神を信じない人は皆吊し上げられ殺された
俺は神なんて信じない
そんなことを思っているからかいつの間にか供物にする子供は俺に決められていた
「神の一部となるのだから羨ましいなお前は」
「神の役に立てるのですから喜ばしいことですね」
「神の子になるのだ」
周りの子供や大人からそう言われる
俺は住民たちに気絶させられ縛り上げられた
次に気がつくと霊灰山の山頂付近にある祠の前で寝かされていた
体を起こし周囲を確認する
辺りは暗く夜だった
木々が生い茂っていて月は見えない
烏の鳴き声と木の葉が掠れ合う音
そして何かが動く音
俺は今全身の毛が逆立っている
何かはわからないが今目の前の茂みの中で動いているものはやばいと俺の勘がそう告げている
息を潜めその何かが見えるようになるまで俺は隠れ待つ
何かが茂みの中から出てきた
その何かはヒトの腕や脚頭などを無理矢理にくっつけたような生物だった
肩?や脚?から生える無数の頭
腕は6本…以上ある
脚も数えられない程ある
一つの頭の目がギョロっと俺の隠れている茂みを見た
俺は背筋が凍りつく
金縛りのように体が動かせなくなる
今まで味わったことのないように死にも勝る恐怖
俺は無意識に体を動かしていた
音を立てないように静かに早く逃げようとした
その選択が間違いだった
枯れた枝を踏み音が鳴る
振り返ると先程のキメラが無数の腕を伸ばしながら俺に向かって走って来ている
「まっで…」
「いぐな……」
「一緒にいよお“?」
「おいでかないで」
一つ一つの頭から言葉が発せられている
無数の脚はぞろぞろと動いている
腕は俺の方へ伸ばされている…
こんなのを見ている場合ではない走って逃げなければ
逃げないと…
俺は山を下るように走った
途中で転びそうになったり躓きかけたりしながら走る
キメラは木々を飛び移り毒を吐く
キメラが追いかけてくる音が少しづつ遠くなり
もう少しで逃げ切れるそう思った瞬間目の前にキメラが落ちて来た
俺は急に目の前に現れたキメラから逃げようと急旋回しようとすると
キメラの体?から木の枝のようなものが生えてきた
その枝は物凄い速度で成長し一直線に俺に向かって伸びてくる
俺はその枝に右腕を掴まれた
枝は俺をキメラの方へと引き摺っていく
俺はその枝をなんとか腕から外そうと左手を使って引き千切ろうとするが
左腕も枝に掴まれた
両腕を掴まれた俺はどんどんキメラに引き寄せられる
抵抗しようと踏ん張るがキメラに近づきたたび枝は増えていき
右脚と左脚も枝に絡まれた
四肢が枝によって動かせなくなった俺は死を悟る
どんどんキメラに近づいていき遂にキメラの目と鼻の先に俺は来た
無数の頭にじろじろと見られる
さっき全力で走ったからか呼吸が荒く今俺は自分の呼吸音しか聞こえていなかった
「こっちにおいで」
「一緒に行こう」
「同じくなろう」
「一つになろう」
耳元でそう囁かれる
俺は首を横に振った
首に激痛が走る
「あ”ぁ“っ‼︎」
俺の掠れた叫び声が山に響き渡る
顔を動かし痛む首元を見るさっき囁いて来た顔が俺の首に噛み付いている
その顔の口元は赤く染まっている
鉄の匂いがする
痛みを堪えようと歯を食い縛るギリリ…と歯が軋む
次々とキメラについている他の顔も俺に噛み付いて来た
まるで俺を取り込もうとするように
俺は全身に走る電撃のような痛みに我慢しきれなくなり意識が遠くなる
が痛みのせいで気絶する前に意識が覚醒する
痛みで気絶しそうなのに痛みのせいで気絶しない苦しみ
「あ”あ“あ”あ“ぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」
少しづつ体が壊されていく恐怖
視界は赤一色
俺の体が喰い千切られる
血飛沫が地面に鮮やかに飛び散る
肉片が転がる
骨が露わになる
痛い痛い痛い痛い___________
喉を喰い千切られた
声が出ない
意識が遠くなる全身の力がゆっくりと抜けていく
なにも考えられない
無になっていく
意識が消える
俺は多分幻覚を見ていたんだ
なにもないただ真っ白い空間に俺はいる
目の前には見たこともないような服を着た青年が立っている
「哀れな人の子」
そう言われた
哀れ…か
謎の青年は俺に手を伸ばす
彼の手が俺の額に触れる
彼の手は暖かくて
優しくて
包まれて
安心した
何故かわからない
俺は突然眠くなる
体がぐらっと前に倒れる俺の体は彼に寄りかかる
彼は俺を抱き上げどこかへ歩いていく
俺は彼の腕の中で眠りについた
気がつくと一面花畑だった
空は晴れ渡り心地よい天気だ
辺りには綺麗な蓮の花が咲き乱れている
花弁が風に吹かれ舞い上がる
なんとも幻想的だ
幼く哀れな少年は無に還る
蓮の花言葉は「救って下さい」