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マカロン
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#廃県ヒューマンズ
雨茶☔️📸
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コメント
3件
コメント失礼します…‼️ 言葉の一つ一つが綺麗で分かりやすくて、それぞれの子の性格がはっきり出ていたのがとても読んでいて楽しかったです‼️ 特にしろくまアイスで頭がキーンとなるのに親近感がすごく湧きました‼️

え?神???神ですか??? なんでそんなに文章書くの上手いんですか??泣きそう()
寺島あおいです🌷 九州を擬人化した設定、すごく好きです。宮崎くんの一人称だからこそ、鹿児島のおじいちゃんの優しさや福岡兄さんの豪快さが、じんわりと伝わってきました。特に「砂利の音」で来訪者がわかる演出や、しろくまアイスで頭がキーンとなる描写に、子供時代の感覚が蘇るようでした。紙風船で遊ぶ佐賀ちゃんとの時間も、言葉が少ないのに通い合う空気が美しくて、ほっこりしました。続きが気になります!
県境を越える電車は、ゆったりと僕の身体を揺らしていく。
長時間の移動、そして車内に刺さる夕の日差しのせいで、自分の意識が微かに微睡もうとする。
額を窓に預けるも、硝子がガタガタと揺れて、一睡もできやしない。
遠くの青い海が日の光を白く反射して、余計に目が冴えてしまった。
電車の車掌が鹿児島市へ着いたことを告げる。
宮崎とは随分違った訛り方をするものだから、彼の言った「鹿児島市」の抑揚を脳内で反芻しながら、電車を降りる準備をした。
駅の外へ一歩踏み出すと、夕暮れの街には足早に行き交う大人たちの姿があった。
その忙しそうな背中を見ていると、出発前に交わした大人たちとの会話が脳裏に蘇る。熊本の兄さんは確か、急な彼からの宴会の誘いに眉をひそめ、辛子蓮根や武者がえしがどうのこうのと、一人でその地の名産品を大急ぎで買い揃えていた。
一方で、この鹿児島の地での宴会を企画した福岡の兄さんは、今頃、お気に入りの地酒の瓶を両手に抱えて燥いでいるに違いない。
剽軽な大分や、いささか八方美人が過ぎる長崎、まだ僕と同じ様に幼い佐賀などの九州北部の連中たちを巻き込んで、お祭り好きの血を騒がせていたらしい。
そしてどうやら、宴会を企画した際の福岡の兄さんは、がっつり酒が入っていた様だ。
確か、前は大分のところで祝宴が開かれた。あの夜もひどい騒ぎだった。
熊本の兄さんは酒瓶を持ったまま机に突っ伏し、僕が恐る恐る顔を近づければ、何かを泣きながらぶつぶつと呟いていた。一方の福岡の兄さんは、理性とともに上の服を脱ぎ捨てて、「日本の首都を福岡に変えてやるばい!」などと大声を張り上げて言うのである。
宴会の騒然の中、僕は机の端で黙々と胡瓜の漬物や枝豆を大人しく食べていた。
甚だしく賑やかな幻聴を頭の隅で転がしながら歩いているうちに、自分の足は、いつの間にか目的の屋敷の前で止まっていた。
見慣れた重厚な門構え。
門をくぐると、そこには手入れの行き届いた広い庭が広がっている。
地面には白い砂利が隙間なく敷き詰められていて、歩くたびに静かな音が響いた。
庭のあちこちには、気の遠くなるような年月を生きてきたであろう立派な松の木が枝を伸ばし、苔むした巨大な庭石が、まるでこちらを睨みつけるかのように鎮座している。
確か、汚れた砂利を篩にかけていた鹿児島さんが、これらは防犯対策になると教えてくれた。
僕からすれば、掃除のほうが大変そうに見えた。
今日も、いつもと同じように窓から橙色の明かりが漏れている。
しかし、兄さんたちの声も聞こえない。
台所で宴会の準備をするために忙しく揺れている影も見えない。
少し早く着きすぎてしまった。
玄関の前でどうしようかと、小さな小石の粒たちを眺めながら佇んでいると、内側から静かに扉が開いた。
「おや、やっぱり宮崎か。砂利の音がしたから、そうじゃないかと思ったよ」
そこには、いつもと変わらない融けるような笑顔を浮かべた鹿児島さんが立っていた。
彼が何気なく口にしていた砂利を敷く意味が、今になってようやく腑に落ちた。
「ほら、暑かったじゃろ。早う上がんなさい」
骨張った大きな手で手招きをしてくるものだから、僕はおじゃまします、と小さな声で言い、玄関の中へ足を踏み入れた。
歩き疲れてじんじんと痛んでいた足に心地よい冷気が触れる。
靴を脱いで、美しく磨き上げられた欅の床に足を乗せた。ひんやりとした木の温もりが、足の裏から伝わってきた。
思い切りその場に寝転がり、三時間分の体の熱を床の向こうへと逃がしたかったが、ぐっと堪えた。
居間に上がると、おじいちゃんは僕の火照った顔を見て小さく笑った。
「お前が一番乗りだ。一人で偉かったねぇ。
ほら、みんなが来る前に、冷たいものでも食べなさい」
大きなスプーンとともに差し出されたのは、よく冷えたしろくまアイスだった。
僕は手を合わせ、スプーンを掴むように手に取った。あまりの暑さと喉の枯渇により、それをカップの中へ深く突き刺す。ぎっしりと容器に詰まっていた、練乳の染みた氷を掬い取り、飲むように嚥下する。
途端に、頭が痛くなった。
おでこを押さえる僕を見て、鹿児島さんは声を立てて優しく笑った。
「そんなに急いで食べるからだよ。ほら、治してあげようねぇ」
そう言って、骨張った大きな手のひらで僕の額を包み込むように撫でてくれる。
彼の手の温かさに触れているうちに、頭の芯の痛みはいつの間にか消え去っていた。
アイスを食べ終えて一息ついた僕を見て、おじいちゃんは満足そうに目を細める。そして、僕の小さな手の平に、ずしりと重い紙包みを握らせた。
中には、子供の私には多すぎるほどのお小遣いが入っている。
「これで、また好きなものを買いなさい」
僕は毎回受け取ることに躊躇して、控えめに首を横に振る。今時の一般的な子供の娯楽といえば、携帯ゲームのカセットや……
否、それ以外思いつかない。
視力を保ちたかったので、僕はこのお小遣いで、まれに駄菓子屋の隣にあるガチャガチャを回したり、好物の胡瓜を買ったりしていた。
逆に言えば、それだけが唯一の使い道だった。おかげで、彼から与えられる小遣いは貯まっていく一方なのである。
しかし、目前の柔和な笑顔を曇らせたくなくて、僕はその紙包みを両手で受け取った。
鹿児島さんは満足そうに笑う。きっと誤った選択はしていないと思う。
紙包みを自分の小さなリュックに収めた、まさにその時だった。
それまでの静寂をすべて叩き割るような、賑やかな大声が遠くの玄関から響き渡った。
「じーちゃん! 待たせたばい!」
すでにがっつりと酒の入った福岡の兄さんの声だ。
それに続いて、重い荷物を床に置く音や、大分や長崎の賑やかな笑い声が、津波のように屋敷の中へと流れ込んできた。
けたたましい挨拶とともに襖が開いたかと思えば、急に己の身体が宙に浮いた。
「宮崎も、元気にしてたか?」
福岡が僕の体を抱き上げて、猛烈な勢いで頭や背中を撫で擦ってくる。
僕は落ちるのが怖くて、彼の首元にしがみついた。
鹿児島さんが慌てた声で、「福岡、乱暴はやめんか」と腕を伸ばすも、兄さんは僕を離すどころか、抱き上げたまま数分は地面に下ろしてくれなかった。
ひとしきり可愛がられて、ようやく畳の上に足が着いたときには、僕の目はすっかり回ってしまっていた。
助け舟を出してくれた鹿児島さんは、首をすくめる僕を大きな手のひらで庇いながら、福岡の兄さんを低く、不機嫌そうな声で睨みつける。
「だいたい、お前たちは何が『じーちゃん』だ。
俺はまだ百五十だ。じーちゃんじゃなか」
そうやって大真面目にぼやいてみせる鹿児島さんが可笑しくて、僕は目を回しながらも、小さく声を立てて笑ってしまった。
するとそこへ、両手に大皿を持った長崎の兄さんが、騒がしくなる部屋の真ん中をすり抜けてやってきた。僕の隣にいた、同じようにちいさな佐賀の背中を優しく押しながら、長崎の兄さんは困ったように微笑む。
「兄さんもじいちゃんも、準備の邪魔ばい
……佐賀ちゃん、宮崎くんと一緒に、向こうの部屋で遊んできたら?」
「あ、うん。宮崎くん、いこ?」
佐賀が蚊の鳴くような小さな声で返事をしたあと、僕も頷いて、佐賀についていく。
熊本の兄さんが「おい福岡、お前が持ってきた酒、どこに置くとたい!」と大声を張り上げている賑やかな広間を背に、僕たちは廊下を歩き出す。
「その……、久しぶりだね」
佐賀が口を開いた。大人たちの前では人見知りの酷い彼だが、僕の前では割と大きな声で話す。
僕は頷いて、久しぶり、と同じ言葉を返した。
男の子であるはずの彼を、長崎の兄さんは当たり前のように「ちゃん」付けで呼ぶ。
そんな大人たちの適当な呼び方に、正直僕は密かな違和感を覚えている。
しかし、目の前で少しはにかむ彼の顔を見ていると、それもまあ良いかという気になってしまうのだった。
大人しくて、鉄道やゲームよりかはビー玉遊びや折り紙を好むから、もしかしたら兄さんたちは佐賀が女の子に見えているのかもしれない。
僕よりも一回り小さな身体で、懸命に僕の前を歩く佐賀を見ていると、やはり兄さんたちは本当にそうだと勘違いしているとしか思えない。
小さな彼の姿を追ううちに、僕たちは目的の小さな和室へと辿り着いた。
襖を開けると、そこは藺草の香りが敷き詰められた、小さめの和室だった。
畳の真ん中に座り込むと、佐賀が嬉しそうに、おじいちゃんの家の引き出しから見つけてきたという、平べったい紙の塊を広げた。
「宮崎くん、これしよう! 引き出しの中にあったと!」
佐賀が手で形を整え、最後に小さな口で息を吹き込むと、赤や青の鮮やかな縞模様が、少し歪な丸い形へ膨らんだ。懐かしい、軽い音を立てる紙風船だった。
両手で投げられた紙風船を、潰さないようにそっと受け取る。そして、佐賀の胸を目掛けて、僕も投げ返した。
「落とさなかった方が、勝ちだからね!」
縦に弧を描かせるように、今度は大きく紙風船を投げる佐賀。
天井に届きそうなほどふわりと舞い上がった赤と青の球体を、私は息を詰めて見上げる。落ちてくる位置を予測し、畳を滑るようにして両手で真上へ弾き返した。
叩くたびに、和紙が空気を孕む乾いた音が静かな部屋に小気味よく響く。
「あはは、宮崎くん上手! 負けんけんね!」
頬をほんのり林檎のように赤くした佐賀ちゃんが、夢中になって小さな身体を弾ませている。
言葉をあまり交わさなくとも、私たちはただ一つの紙風船を介して、確かに同じ楽しい時間を分け合っていた。
ラリーが十回を超えたあたりで、紙風船の小気味よい音を遮るようにして、襖が滑り開いた。
「子供組の二人、ご飯の準備ができたから、こっちの部屋に戻っておいで」
覗き込んできたのは、まるで給食の調理員が身につけるようなエプロンを纏った、長崎の兄さんだった。
……確か、佐賀は長崎の隣に位置していた。
佐賀が女の子に見えるのは、長崎の兄さんに似たのか、それとも元々そういう性格なのか
佐賀が名残惜しそうに紙風船を抱きかかえ、先ほどの小さな声で返事をする。
僕も小さく頷いて立ち上がった。廊下の向こうからは、すでに福岡の兄さんの豪快な笑い声と、熊本の兄さんの呆れたような声が混じり合って聞こえてくる。私たちはその賑やかな光の渦へと、足取り軽く戻っていったのだった。
長崎のお兄さんに連れられ、僕たちが定位置である座卓の端へ腰を下ろすと、ちょうど宴の始まりを告げる時間がやってきた。
福岡の兄さんが、すでに半分空いた酒瓶を片手に、座卓の真ん中で勢いよく立ち上がる。
「よし! 全員揃ったけん、乾杯するばい!
今日は屋敷を貸してくれたおじいちゃんに感謝して、泥酔するまで飲むぞ!」
その大声に答えるように、大分や長崎の兄さんたちが掛け声と共に盃を掲げる。
鹿児島のおじいちゃんも、目尻の皺を好々爺らしく歪めて笑っていた。
「……まあ、今日は宮崎も来てくれたことだし、無礼講としようかね。
皆、ゆっくりしていきなさい」
鹿児島さんのその穏やかな一言を合図に、広間に「乾杯!」という全員の声が重なり、響き渡る。
僕は、事前に用意してもらっていたグラスを掴むと同時に、鹿児島さんと目が合った。
そして、瓶に入っていたマンゴージュースを、並々と注いでくれた。
熊本の真似をして、腰に手を当てて、グラスに入ったジュースを一気にごくりと飲み干してみる。
僕も、盃をかわす兄さんたちの仲間になれた気がした。
しかし、大人の宴会というものは、子供の私が想像していたよりも遥かに無秩序で、凄まじいものだった。
「おい長崎! お前のところの皿、ちょっと小さかばい! もっと持ってこんね!」
福岡の兄さんは、すでに赤くなった顔で、人様の家でありながら、礼儀を忘れて座卓をバンバンと叩く。
長崎の兄さんも、今日ばかりは彼もしっかり地酒を煽っていたらしい。
「あぁん? 何ば言いよると、福岡! これは長崎の誇る最高の器ばい。文句のあるなら、一滴も飲ませんけん!」
蕩けたような呂律で、長崎の兄さんも顔を赤くして福岡を睨みつけている。
常に正座をしている彼が、思い切り畳の真ん中で胡座をかいて、「ね〜、佐賀ちゃん」と彼の頬を引っ張りながら、小さな佐賀の反応を楽しんでいた。
尤も、佐賀は頬を膨らませながら、「兄ちゃん、お酒の匂いがする…」と彼の胸を押し返していた。
その横では、大分が「まあまあ二人とも」と宥めるフリをしながら、自分の盃を並々と満たしているし、熊本の兄さんに至っては前回と同じように、机に半分突っ伏して何かをぶつぶつと呟き始めている。
いつもの定位置からそのひどい有様を眺めながら、僕は黙々と胡瓜の漬物を齧っていた。
しかし、漬物ばかり食べていると、やはり喉が渇いてくる。一口で飲める量のジュースをグラスに注ぎ、それを再び飲み干した。
先程は気づかなかったが、今日のジュースはほんの少し、いつものと味が異なる。酸味か苦味かは分からぬものの、たまたまそういう品種のものを搾ったのかと合理化し、そのまま全てを飲み込んだ。
途端に、なんだか少し眠くなったような気がした。
元々眠かったのかもしれない、何しろ三時間も電車に乗っていたのだ。
既に泥酔している熊本の兄さんと同じように、僕は机に突っ伏して、そのまま寝息を立てながら、眠ってしまった。