「碧が美容師として頑張ってくれたおかげで、私はずっと髪を切ってもらえてるから本当に有難いよ。大人気のカリスマ美容師だから、美容院だとなかなか予約取れないし」
「カリスマ美容師は言い過ぎだから。逆に俺は、ずっと琴音に練習台になってもらって助かったよ」
「ねえ、琴音ちゃん。お店じゃないなら、いったいどこで切ってもらってたの?」
絵麻ちゃんが怪訝な顔で聞いた。
「えと、碧君のご実家だよ。練習用の道具が全部揃ってるしね。友達の特権を使って甘えてます」
「うちは家族みんなが琴音大歓迎だから、顔パスなんだ」
昔からずっと、碧のおじさんとおばさんには本当にお世話になっている。碧と同じで2人ともすごく気さくな良い人達で、たまに髪を切りに行けば、まるで自分の実家に帰ったみたいに色々話したり笑ったりして楽しく過ごしている。
「へぇ、そうなんだ~。琴音ちゃんは碧君のご両親にも気に入られてて、いつかは結婚しちゃったりして」
絵麻ちゃんがちょっと意地悪そうに笑った。
お願いだから龍聖君の前で変なことを言わないでほしい。
「違う違う。みんなも知ってるでしょ? 私達は全然そういうんじゃないから。ただの友達。とにかく碧の腕は一流だし、美容師になって正解だよ。これからも私の髪、よろしくね」
慌てて話を戻したけれど……
「もちろん。いつでも言って、大歓迎だから」
何だか少し空気が重くなったのを感じたのは私だけだろうか?
「ねえねえ、そんなことより、やっぱり鳳条君のスモールフォワードは最高だったよね~」
そんなことよりって……
会話を掻き乱して、結局、龍聖君の話題にしようとする絵麻ちゃんの自由さには毎回驚かされる。
まあ、今に始まったことではないけれど。
龍聖君……
何だか嬉しそう?
絵麻ちゃんにこんなにも褒められて気分が上がらないわけがないよね……
屈託のない可愛い笑顔で、素直に自分の気持ちを伝えられる絵麻ちゃんが、すごくうらやましい。
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