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勇斗 side .
俺が好きになったのは、柔太朗だった。
笑うと少しだけ目が細くなるところとか、
無意識に距離が近いところとか、
誰にでも優しいくせに、たまにだけ見せる弱さとか。
全部、ずるいと思った。
仁)勇斗ってさ 、分かりやすいよな
ある日、そう言ってきたのは仁人だった。
勇)何が?
仁)柔太朗のこと 、好きなんだろ?
ドキッとしたのを、笑って誤魔化す。
勇)別に 。普通だろ
仁)ふーん
仁人はそれ以上何も言わなかったけど、
あの時の目は、なんか全部見透かしてるみたいで嫌だった。
付き合い始めたのは、その少し後。
柔)俺 、勇ちゃんといると落ち着く
放課後、誰もいない教室でそう言われた。
心臓がうるさくて、何も言えなかった。
柔)好きだよ
その一言で、全部が決まった。
俺は頷いて、笑った。
それだけでよかった。
それ以上は求めなかった。
…求めちゃいけない気がしてた。
でも、違和感はずっとあった。
柔)今日、先帰るね 。勇ちゃん
柔太朗は、たまにそう言っていなくなる。
そのあと決まって、仁人もいなくなる。
偶然だと思ってた。
思いたかった。
勇)仁人ってさ、好きなやついんの?
昼休み、パンをかじりながら。
仁人は少しだけ間を空けて、笑った。
仁)いるよ
勇)え 、マジで ?誰 ?
仁)言うわけねーだろ 。笑
勇)うっわー…仁人さんケチ
そう言いながら笑ったけど、
なぜか胸の奥がざわついた。
仁)でもさ
仁人はこっちを見ずに言った。
仁)気づかないやつも 、悪いよな
勇)…は、?
意味が分からなくて聞き返したけど、
仁人はもう何も言わなかった。
その日の放課後。
柔太朗に「先帰る」って言われて、
なんとなく、足が止まった。
帰る気になれなくて、
校舎の中をふらつく。
そして、見つけた。
使われてない空き教室。
ドアは少しだけ開いていた。
中から、声がする。
仁)ねぇ 、勇斗にはいつ言うの
仁人の声。
心臓が、一気に跳ねた。
にくまん小娘
柔)言えないって
柔太朗の声。
仁)言えないじゃねえだろ
柔)だって…
言葉が途切れる。
静寂。
その沈黙が、やけに重かった。
仁)お前さ
仁人の声が、低くなる。
仁)俺といる時と、あいつといる時、顔違いすぎ
柔)…わかってる
仁)じゃあなんでやめねえの
柔)やめたら 、勇ちゃん壊れちゃうでしょ
その言葉で、頭が真っ白になった。
仁)…俺はどうなんだよ
仁人の声が、少しだけ揺れた。
仁)俺は壊れてもいいのかよ
柔)そんなわけないでしょ
柔太朗の声が近づく。
柔)仁ちゃんは 、特別だよ
その“特別”って言葉が、
耳の奥でぐちゃぐちゃに響いた。
覗いた。
見ちゃいけないって分かってたのに。
柔太朗が、仁人の頬に触れてた。
そのまま、キスした。
躊躇いもなく。
慣れたみたいに。
体が震えてたのか、ドアから音が立った。
2人が一斉にこっちを見る。
柔)…!…勇ちゃん 、?
柔太朗の声が震える。
仁人は、何も言わない。
ただ、まっすぐこっちを見てた。
逃げ場なんて、どこにもなかった。
勇)…いつから?
自分でも驚くくらい、冷静な声だった。
勇)答えろよ
沈黙。
勇)いつからだって聞いてんだよ!!
声が勝手に大きくなる。
喉が痛い。
仁)……中学の頃から
仁人が答えた。
笑った。
もう、笑うしかなかった。
勇)じゃあさ
一歩、近づく。
勇)俺は何?
柔太朗が、目を逸らす。
それが答えだった。
柔)…好きだったよ
柔太朗が、ぽつりと呟く。
柔)今も 、嫌いじゃない
勇)..は?
思わず笑う。
勇)なにそれ 、都合よすぎだろ
胸の奥が焼けるみたいに痛い。
勇)お前さ
仁人を見る。
勇)気づかないやつが悪いって言ったよな
仁人は黙ったまま。
勇)じゃあさ 、教えてくれよ
一歩、さらに近づく。
勇)どうやったら気づけた?
仁人の目が揺れる。
初めて見た顔だった。
勇)毎日一緒に帰ってさ、好きって言われてさ
声が震える。
止められない。
勇)それでも気づけって 、?無理だろ
空気が重い。
苦しい。
仁)勇ちゃん 、ごめん
柔太朗が言う。
その一言で、何かが切れた。
勇)謝んなよ 。笑
笑って言う。
勇)謝られたらさ 、許さなきゃいけないみたいじゃん
勇)無理だよ
はっきり言った。
勇)無理に決まってんだろ
静寂。
誰も何も言わない。
でも、それでよかった。
もう何も聞きたくなかった。
勇)…もういい
背を向ける。
勇)好きにすれば
ドアに手をかける。
でも、止まった。
振り返る。
2人が並んで立ってる。
その距離が、全部を物語ってた。
勇)ちゃんと付き合えよ
絞り出すみたいに言う。
勇)俺みたいなの 、もう作んな
廊下に出た瞬間、足が震えた。
息がうまくできない。
視界が滲む。
でも、止まらなかった。
外に出ると、夕焼けだった。
いつもと同じ景色なのに、
全部違って見えた。
勇)… 最悪 。
呟く。
でも、本当は分かってた。
最悪なのは、
ずっと気づかないふりしてた、自分だ。
次の日。
教室に入ると、2人は普通にいた。
でも、もう“普通”じゃない。
もう戻れない。
それでも時間は進む。
笑うやつは笑うし、
授業はあるし、
世界は何も変わらない。
柔)勇ちゃん
呼ばれても、振り向かなかった。
好きだった。
本気で。
だから、こんなに痛い。
でも、
全部、嘘だったら楽だったのに。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
つづく ??
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