テラーノベル
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夕飯をふたりで食べている最中、藍が自分のスプーンを持ったまま突然顔を上げた。
「なぁ、祐希さん」
「ん?」
「あーんして」
「は?」
「俺の好きなやつ、祐希さんの手で食べたいんや」
「わがままだな」
「誕生日ちゃうけど、俺にとっては『好きな人の日』やから♡」
「意味わかんねぇ」
と言いながらも祐希は黙ってスプーンを取り、藍の好きな煮込みハンバーグをすくって「あーん」。
「ん〜〜♡やっぱ祐希さんのあーんは最高やわ」
「何が違うんだよ?」
「好きって気持ちが詰まっとるから。味変わるもん」
「お前、ほんと甘え上手だな」
「祐希さん限定やもん♡」
「そうかよ」
祐希はわざとらしく肩をすくめてみせると、またスプーンを手に取った。
「じゃ、もう一口。藍、あーん」
「えっ、またやってくれんの?」
「嫌なのか?」
「いや、嬉しいけど……祐希さん、なんかノリノリやん」
「だってお前、かわいいんだもん。ほら、口開けろ。あーん」
「……んっ。……ん〜〜♡」
(噛みしめるように食べて)
「やっぱ幸せやなぁ。こんなん毎日してほしい」
「毎日?仕方ねぇな。じゃあ、朝も昼も夜も、全部俺が食わせてやろうか?」
「ちょ、ほんまにやられたら照れるって!」
「ほらほら、次。あーん」
「……っ、もうっ……!祐希さんのあーん、俺ずっと食べてまうやん」
「いいじゃん。俺も、お前が嬉しそうに食べてる顔好きだし」
「ずるいわ、祐希さん。そんなこと言われたら……もっと欲しなるやん」
祐希はにやりと笑い、さらにスプーンを差し出す。
「じゃ、遠慮すんな。藍、あーん」
藍は顔を赤くしながらも、素直にぱくりと口を開けた。
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好きすぎる