テラーノベル
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「……んっ、く……ッ」
口を塞がれたままのチャンスの喉から、くぐもった、しかし甘く切迫した呻きが漏れ出た。
マフィオソの指先がベルトを外すと同時に、上質なスラックスの生地が擦れ合い、互いの距離がさらに狂おしく縮まる。
地下室の冷気が露出した肌を撫でるが、熱を帯びたチャンスの肉体が、その冷え切った空気を一瞬で跳ね返していた。
床に広がった赤ワインの湖は、二人の足元で波立ち、跳ね返った滴がマフィオソの磨き上げられた革靴を、そしてチャンスの足首を赤く汚していく。
「いつもなら……、ここで私をからかう言葉の一つでも吐くのだろう?」
マフィオソはチャンスの顎を掴んでいた手を、ゆっくりと、しかし確実な力でその喉元へと滑らせた。
親指の腹で、頸動脈の激しい拍動を感じ取る。
「喋れないお前は、酷く従順に見えるな。ペテン師」
「……っ、ん、う……」
チャンスのサングラスの奥の瞳が、暗闇の中で肉食獣のように光る。
口元をシルクのネクタイで縛られ、両腕をワイン棚に押し付けられているという圧倒的な劣勢。
それにもかかわらず、彼の獰猛な情欲は、少しも衰えていなかった。
むしろ、いつもは冷徹な「ボス」が、自ら自分を組み敷き、支配しようとしているという事実に、彼の本能は震えていた。
マフィオソは片膝をチャンスの腿の間に割り込ませ、その身体を自らの重みで圧倒するようにして、深く距離を詰めた。
「ぁ……っ!」
衣服越しであっても伝わる、互いの高い体温と剥き出しの衝動。
マフィオソの身体が微かに震える。
彼自身、コンシリエーレに「ルートを封鎖しろ」と命じたはずだった。
自分がこの地下室で、この不遜な男とこのような不埒な真似に及ぶことなど、微塵も想定していなかった。
すべては、この男が自分の聖域に忍び込み、その耳元で不敵に囁いた瞬間から狂い出したのだ。
「お前を……完全に屈服させるまで、ここから出してはやらん」
マフィオソは自らのコートを乱暴に脱ぎ捨て、床のワインの海へと落とした。
数百万の仕立てが泥濘へと沈む。
シャツの袖を乱暴に捲り上げ、露わになった腕で、チャンスの腰を強引に引き寄せた。
「んんっ……、……ぁ, ッ」
チャンスの背中が再びワイン棚の木枠に激しく打ち付けられ、ボトルたちがガタガタと悲鳴を上げる。
だが、チャンスはその拘束された両手のうち、わずかに自由の利く指先を伸ばし、マフィオソのシャツの背中を、引き裂かんばかりの力で掴み返した。
(――捕まえた)
チャンスの目が、ネクタイの奥でそう言っていた。
追っているのはマフィオソの側だ。
だが、その罠に自ら進んで飛び込み、ボスの牙をその身に受け止めながら、チャンスはその冷酷な捕食者を、さらに深い情欲の底へと道連れにするつもりだった。
二人の衣服が擦れ合い、熱を孕んだ肌が引き寄せられる。
ワインの赤に染まったチャンスの胸元に、マフィオソの容赦のない指先が深く沈み込み、その皮膚をなぞり上げていく。
滴る液体が二人の体温で温められ、さらに甘く、毒々しい香りを放ちながら、地下室の最も暗い奥底へと溶け落ちていった。
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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