テラーノベル
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⚠自傷表現等あります
夜風がカーテンを揺らし自分の頬を撫でる。
ネイビーのスーツをベッドに投げ捨て、赤いネクタイは椅子の背もたれに絡まっている
淀んだやや青みがかった瞳で自分の腕を眺めカミソリを手に取る。
最近はこれが習慣となっていた。
自分の寂しさを埋める唯一の行為。
昨日切った傷の上にまた新しく傷を増やす。
寂しいとかそういう感情が胸のうちに渦巻いて苦しくなる。
涙をこぼしながらまた一つ、また一つと傷を増やしていった
後ろからドアの開く音がする
振り返るとそこにはシャオロンがいた。
「な、にしてんの…大先生…」
「ッ…」
咄嗟に腕を隠して何もなかったかのように振る舞おうとした
が、そんな嘘見抜かれないわけもなく、切っていた腕を掴まれた。
「またやってたん…、?なんでこんな……」
瞳を揺らしながらそう呟き怪我を治療しようとしてくれた
それにも関わらず腕を振り払い距離を取ってしまった
その行動にびっくりしたのか目を大きくして
「どしたん、大先生…痛かったんか、?」
と心配そうに此方を見つめる。
その視線が胸に突き刺さる
「も、だ、大丈夫、やから…」
言葉がうまく伝えられない。
声が詰まる
ようやく吐き出した言葉にも心配そうに眉を下げて。
「もう、やめてや、こんなこと」
そう口を開き詰め寄ってくる。
何も言い返せずに狼狽える僕にシャオロンはまた言葉を紡ぐ
「見てられへん…クスリでパキってんのも、腕から血ぃ流しながら寝てるんも…」
その言葉に涙が出た
嗚呼、どうせ誰もわかってくれない
この寂しさを埋めるには”これ”しかないのに。
「シャオちゃん…俺、寂しいんよ…」
「クスリもリスカもあかんねんなら…俺…俺どうすればいいん、?」
ぼろぼろ涙をこぼしながらそう言い嗚咽を漏らす
きっと、シャオちゃんには伝わらない
「だれも、誰もわかってくれへん…俺のこと」
そういいしゃがみ込んで傷がある腕をかばうようにして。
これが無くなったら、僕は何で満たせばいいん
そんな思考がぐるぐる回って吐きそうになる
シャオロンはそんな僕を見下ろして
「そんな、悲しいこと言わんでや大先生…」
床に転がったカミソリを手にとってそう呟く
「シャオちゃん…俺、ずっと空っぽや…」
心も身体も
僕に目線を合わせてしゃがみ込み
「もう、こんなんやめてぇや…」
今にも泣き出しそうな顔で此方を見る
声を震わし、僕の肩に手を置いて
嗚呼、僕は、シャオちゃんのことも傷つけてもうて
なんて屑なんやろう。
「大先生の傷も薬も全部知ってるよ…俺じゃあかんの、?」
「その傷は俺じゃ埋められんの、?」
僕の手をぎゅっと握りしめそう呟く
「こんなん見るのなんて…俺も辛くなるわ…」
床に涙がこぼれる。
貴方の溢れ出しそうな瞳を眺めながら
嗚呼、綺麗だなぁと…心のうちで考えてまた自己嫌悪に至った。
「ごめんなぁ…シャオちゃん…」
弱々しく消え入りそうな声でそう呟く
皆に迷惑をかけている
その事実が自分の胸に鋭く突き刺さった。
「ええよ、すぐじゃなくてええねん…ゆっくり二人で辞めような」
包帯を巻く手つきが妙に優しくて
また涙が零れそうになる。
こんな僕にすら優しくしてくれるなんて
「シャオちゃんはお人好しやね。」
「はあ、?お前二度と治療したらんからな、!?」
「冗談やん、怒らんといて」
ゆっくり、辞めれるように
僕なりに努力してみるのもありだと思った。
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