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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。十九歳になりました。貴族社会で言えば、既に結婚して子供が居てもおかしくない年齢です。あの日が無ければ、今頃私は何処かの貴族と結ばれて家庭を築いていたのでしょうか。まあ、それはさておいて。

先ほど十四番街で頭角を現しつつあるトライデント・ファミリーから書状が届きました。

内容としては、挨拶から始まり重要な話し合いをしたいので使者を派遣したいのだとか。

突然ではなく事前に伺いを立てるのは初めてのパターンですね。

「それだけうちがデカくなったってことさ、お嬢様」

執務室で書状を読む私の疑問に答えてくれたのは、ソファーに座るベルでした。

エーリカの仕立てた黒いスーツを着ていますが、とても似合っていますね。

「あまり自覚はありませんが」

「エルダス・ファミリー、三者連合、血塗られた戦旗。大物をこれだけ潰せば有名にもなるさ」

「そんなものでしょうか」

「そんなもんさ。それで、どうするんだ?」

「そうですね」

相手は事前に手紙でお伺いを立ててきました。これまでのアポイントメント無しの来訪に比べれば好感が持てますね。

「話の内容は分かりませんが、好感は持てます。門前払いは避けたいと思います」

「分かった。でだ、先に聞いておきたいんだが」

「何ですか?」

「お嬢は十四番街の争いに関与するつもりか?」

「私自身に領土的な野心はありませんよ、ベル」

「だが必要なら介入することもあり得る、だな?」

「それが必要となれば。とは言え、返事を認めます。十四番街はマフィア関連……ベル、マナミアさんを呼んでください」

「分かった、待っててくれ」

ベルが部屋を出て少ししたら、マナミアさんが入室しました。相変わらず刺激的な服装ですね。

「呼んだかしら?主様」

「お忙しいところごめんなさい、マナミアさん」

「良いのよ。それで?」

「十四番街なのですが」

「あら、お薬に手を出すの?確かに儲かるけれど、あんまりお勧めしないわよ?」

「いえ、そうではありませんよ」

私はマナミアさんにトライデント・ファミリーからの書状を見せました。内容に目を通したマナミアさんは、視線だけを私に向けます。流し目ですね。

「情報が欲しいのね?」

「その通りです」

マナミアさん率いる工作部隊も拡大していて、人員も大幅に増えています。

ラメルさんには帝都や貴族絡みの情報収集を任せていて、マナミアさんには近郊の勢力についての情報収集と『黄昏』の防諜を任せています。

「十四番街は、麻薬関連の取引が盛んな区域よ。マフィア、カルテルが幅を利かせているけれど、今のところ絶対的な勢力は生まれていない。ある程度の規模を持つ組織はいくつもあるけれど、お互いに牽制しあってる状態ね」

「まさに群雄割拠ですか。トライデント・ファミリーは?」

「数年前から頭角を現し始めたマフィア組織よ」

「数年前、まるでうちみたいですね」

「そうよ。彼らの資金源が麻薬であることは知ってるわね?」

「はい」

「隣の十三番街。番号がふられているけれど、実態は大規模な農村よ。ただし、植えているものはうちみたいな食べ物じゃないわ。薬物の元になる植物よ」

「なるほど」

「で、トライデント・ファミリーは農場の中で、特に質の良い畑を手に入れたみたいよ。どうやったか知らないけれどね。質の良い薬物は高値で取引されるわ。中には貴族様も居るみたいね」

「ほう、興味深い」

「そんな新参者のトライデント・ファミリーが話を持ち掛けてきた。多分うちの後ろ楯を望んでいるのでしょうね。或いは取引か」

「遂にうちにも後ろ楯を求める組織が現れましたか。感慨深いものがありますね」

不思議な気分です。周りは全て敵でしたから、サリアさんやお義姉様の後ろ楯を得て何とか遣り繰りしていたのに。

しかし、貴族との取引もあるか。帝国では違法薬物の使用は厳罰に処されています。

……利用できるかもしれません。

「マナミアさんのお話を聞いて興味が湧きました。直ぐに返事を認めて会うことにします」

「そう、悪くない判断よ。それで、猶予は何日貰えるのかしら?」

「五日でどうでしょうか?」

「五日ね。分かったわ、四日以内に出来るだけ情報を集めてみるわ」

「十三番街にも人を潜り込ませてください。資金源を正しく把握しておきたいので」

「何なら焼き払う?」

「敵対した場合は、です。敵でないなら、私から手を出すことはありませんよ」

それだけは変わりません。敵は殲滅しなければいけませんが。

「そう、直ぐに取り掛かるわ。どうするつもり?」

「あちらは誠意を示してくれましたから、援助も吝かではありません。対応次第ですが」

これまでとは違った交渉が出来るかもしれません。

マナミアさんが退室して、私は政務を一旦区切りました。

「お嬢様、お茶が入りましてございます」

「ありがとう、セレスティン」

いつの間にか待機していたセレスティンが紅茶を用意してくれました。茶葉は農園産で、味も格別。うちの人気商品ですね。

ただ、帝国全体の食料生産に影響を与えないように出荷量は調整していますが。

おや?

「セレスティン、これは?」

用意されたお茶菓子は、何だかフワフワして良い匂いがします。

「レイミお嬢様より伝授していただいたパンケーキなるものでございます」

「レイミが考案したお菓子ですか。では格別でしょう」

十年あまりの研究の末、ようやく砂糖の生産が軌道に乗りました。ロウが頑張ってくれたお陰です。そのため休憩時間に砂糖を使ったお菓子が振る舞われるようになりました。

……パンケーキを口に含むと、甘い風味が口一杯に広がりました。うん、美味しい。

ただあんまり食べると夕食が食べられなくなりそう。

「美味しいのですが、これを食べてしまうとお腹が一杯になってしまいます。アスカ」

「……呼んだ?」

最近のアスカは神出鬼没、今も天井から降りてきました。深く考えないようにしています。

「パンケーキというお菓子です。一緒に食べましょう?」

「……食べる」

いつの間にかアスカの分の食器が用意されていました。

「執事の嗜みでございます」

……深く考えないようにします。私はアスカを膝の上に乗せて、のんびりと休憩時間を過ごすのでした。

……砂糖の生産を増やすように、ロウと相談しましょう。ついでに卵も。リナさんに連絡しないと。

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