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「えー旧石器時代人は、打製石器を使い……」
森 結葉(もり ゆうは)は、公立高等学校に在籍する歴史教師で、2年2組の担任。
「次のページを見てください。旧石器時代の人々はこの打製石器と呼ばれる石器を使い、ナウマンゾウなどの動物を狩って食料を得ていたわけですね…………。」
肩に切りそろえた暗い茶髪。
眉毛ぎりぎりまで伸ばした重たい前髪と、その下にある丸く黒い瞳は、まるで誰も寄せ付けないようだった。
だが、その容姿は学校全体から生徒、教師、男女問わず人気を帯びていた。
ある朝、結葉が職員室で書類のコピーをしていると、結葉の側に、背の低いロングヘアの黒髪の女性が立った。
「結葉せんせー。おはようございます。」
結葉に話しかけてきたのは、同僚で結葉の隣のクラスで、2年3組の担任をしている数学担当の組山 瑠菜(くみやま るな)だった。
「あっ。瑠菜先生。おはようございます。」
「先生って、多分知らないですよね?今日転任してくる先生。」
「えっ?」
「研修にいらっしゃった時先生お休みでしたもんね。体調はもう大丈夫なんですか?」
「はい。大分良くなりました。ありがとうございます。」
「いえいえ。私がその人のこと研修で見た限りは、真面目で親切で誠実で、その性格もそうなんですけど顔までイケメンで。オシャレな男の雰囲気で、レディーファーストって感じしました!完全に好印象ですね。」
「そうでしたか。っていうか、転任してくる先生男なんですね。瑠菜先生狙ってるんです?」
結葉が冗談交じりに言うと、瑠菜はニヤリと笑い答えた。
「狙うわけないじゃないですか〜。あの時初めてみたばかりですし。それに最近__」
瑠菜が何かを言いかけると、それを遮るように職員室のドアが開いた。
ガラリと音をたてて開いたドアの向こうから、お互い背の高い校長と教頭が入って来た。
「みなさんおはようございます。一旦、手を止めてください。」
校長のほんの少し重たい声に、職員室に居る人々が手を止めた。
「今日から、我が校に転任してきてくれた新しい先生を紹介します。入っていいよ。」
校長とは対照的な軽やかな教頭の声の後に、ドアからまた人が入ってきた。
「あ、結葉先生。あの人ですっ」
瑠菜が結葉に小声で話した。
その声を聞き取った後、視線を職員室のドアの方に向き直した。
「真面目で親切で誠実で、その性格もそうなんですけど顔までイケメンで。オシャレな男の雰囲気で、レディーファーストって感じしました!」
そのドアから入ってきたのは、いかにも瑠菜が話していた印象の男性だった。