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愛 し き 我 が 子 .
人間の子を拾ってから
20年経った頃の話
鬼と人間の関係に亀裂は入るばかり
そして鬼の女帝である娘は
もう何年も怒りと悲しみに暮れている
荊棘「ドチャッ!」
mb「ぁあぁああぁ”ッ!」
荊棘「……汚らわしい…静かに死ぬこともできぬのか…ジトッ…」
mb「ヒッ!」
mb「壱播隊で最も強い頭がッ…!ガタカタッ…」
mb「ぁ”あぅあ”ぁッ…!」
蹲る女の人間
痛みのあまり言葉すらまともに出ない
腕は片方なく
背中に大きな爪痕
痛々しいのが伝わるほど
荊棘「全く…貴様ら人間とはこれ程愚かなものか…スッ…」
荊棘「夜の森には鬼が出ると赤子の頃に教えてもらわんかったかのぅ?ガシッ!」
mb「あぁぁあ”ッ…!ぅ”あッ…ポタポタッ…」
mb「隊長ッ!!」
荊棘「…貴様らの企など…はなから見えておるんじゃよ」
荊棘「例えば…その腰周りに刺さっているのは毒針じゃなかろう…ジッ…」
mb「ッ!!」
mb「たッ、隊長から離れろッ!」
相手の話など聞かぬ
自分の流れのまま淡々と喋る
荊棘「妾達は貴様ら人間に初代酒呑童子を毒殺されてから毒にははかなり警戒しておってのぅ…グチッ…」
鋭い瞳は
怒りで満ちている
抑え切ろうとしても
殺気が溢れ出るほど
mb「…ぁあ”ッ…ッ!!」
荊棘「…多方…お前たちは妾達妖怪を奴婢にでもする気じゃろう?」
荊棘「散々…妾達から山や川や海と…居場所を奪っておきながら…」
荊棘「まだ足りぬと?まだ欲望が満ちぬと?ググッ…!」
mb「…ゃッ…やめッ…!フルフルッ…!」
mb「隊長ッ!!ザッ!」
荊棘「何が被害者じゃッ…何が妖怪のせいじゃッ!!バチバチッ!」
怒り狂う鬼の娘
荊棘「皆殺しじゃ…生きて帰らすなどさせぬぞ…ギョロッ!」
mb「ぅッ、うぁあぁああぁ”ッ!ダッ!」
mb「退避ッ!一旦退却だぁ”ッ!」
人を嫌う理由を忘れられず
人を愛した記憶を忘れ
荊棘「逃げ惑えるものなら逃げ惑ってみよ!w」
その度に生み出される
憎しみと悲しみの連鎖
周りからかけられた
tm「バサッ!」
mb「あッ、新手の鬼が前方にッ!(((グサッ!!」
tm「女帝の御心のままに…我身を捧げよう」
mb「ぅあぁああぁ”ッ!ズサッ…!」
mb「馬鹿ッ!こんなところで腰を抜かすなッ!((((」
荊棘「ドゴォンッ!!」
mb「カハッッ……?!」
荊棘「フフッ…w」
荊棘「あっはっはははッッ!!w」
tm「……タッタッタッ!ズバッ!」
mb「ゴフッ…!」
歪んだ笑い声に
悲痛の叫びを混じえ
息しづらそうに天を見上げる
荊棘「ははッ!w」
荊棘「笑えるのぅ”ッ!笑えるのぅッ!?w」
荊棘「実に滑稽な種族じゃッ!!」
tm「……荊棘様…辺りの祓い屋の人間は全て処理できました…」
tm「ですからもうッ…」
荊棘「なぁ”ッ…w」
荊棘「なあッ…朋也ぁッ…」
高らかと笑っていた鬼
でも本当は
もう深い悲しみに
耐え切れず
傷ついていることに
今更気づいてしまった
そんな自分に嫌気がさす
荊棘「妾はッ…後どれだけ失えば良いのだッ…?」
荊棘「何を守れば良いのじゃッ?」
荊棘「何故奪われなければならないのだッ…ポタポタッ…」
tm「荊棘…ギュッ~…」
荊棘「あぁ”ッ!」
荊棘「希霧ッ…希霧ッ…ズルズルッ…」
tm「……荊棘ッ…ギュッ…!」
荊棘「返しておくれッ…お願いじゃからッ!」
荊棘「希霧をッ…愛しい人間の子をッ!」
荊棘「ぁああぁ”あッ!!ポタポタッ…」
泣いても叫んでも
戻らぬ時に
都合よく戻ってくれることなんてないのだ…
赤子を拾って早15年____
荊棘「~~♪」
小鳥が歌うように
母ちゃんの歌を気に入っている
zm「母ちゃんまた生け花してんるん?」
荊棘「ふふっw…これをしていると落ち着くのじゃよ…スッ…」
荊棘「お前はじっとするのが苦手じゃから嫌っておったのぅw」
zm「それいつの話やねん…汗」
荊棘「つい6年前の話じゃよw」
母ちゃんと俺の時間の感覚には
かなり大きなズレがあった
母ちゃんは6年前を
“ついこの前”のように言う
でも俺にとっては”結構前の話”と捉える
それはともさんや
他の周りの皆もそう
zm「……せやな…w」
辛い
苦しい
まるで
荊棘「希霧?どうしたんじゃ、熱でもあるのか?」
荊棘「お主はいつも無理をするからのぅ…ほれ、横になれポンポン…」
生け花をする手を止めて
俺のおでこにそっと手を当てて
頭を乗せろと言わんばかりに
膝を手で叩く
この歳になっても
何故か今は甘えたいと
すんなり母ちゃんの膝に乗る
zm「ポスッ…」
荊棘「…フフッw」
荊棘「お前が妾の膝で寝たのなんていつぶりじゃろうなぁ…ナデ…」
zm「ほんまや…いつぶりやろう…」
荊棘「…時間とは早いのぅ……」
ずっと母ちゃんに聞きたいことがある
心が落ち着かない
未だ分からない答え
“今話すべきか?”
いつもそのタイミングを伺ってる
でもそろそろ蹴りをつけなくては
今ここで
zm「なあ…かあちゃん?」
荊棘「ん~?どうしたんじゃ?希霧…ニコ」
zm「俺…かあちゃんに聞きたいことあんねん…」
荊棘「……良いぞ、申せニコ」
綺麗に微笑む母ちゃん
強く優しい眼差しは俺を捉えてた
zm「…ッ……俺ッ…ってさぁ”ッ…カタカタッ…」
怖い
言ってしまえば戻れなくなると
何処かでそう思っているから
唾を飲み込むと同時に
言いたかったことも流れていきそうだ
荊棘「…希霧……」
でも言わないと
だって
先に母ちゃんが死ぬなら
俺は誰かも分からず母ちゃんの後を
zm「…ッ俺は…母ちゃんの子やッ…ないのッ…?」
荊棘「………」
部屋は無音に包まれ
表情をひとつも変えず
母ちゃんが俺を見つめていた
荊棘「……すまんのぅ…ニコ」
zm「ッ!!」
そして母ちゃんは
今まであったことや
本当は俺が
鬼から憎まれる存在
“人間”ということも
色んなことを打ち明けた
それを近くで聞いてたともさんは
いつもなら見せない
悲痛で
苦しそうな瞳を母ちゃんに向けていた
荊棘「……これが以上の話じゃ…嘘偽りのないお前の本当の存在じゃ」
荊棘「……まあ…違和感を覚えるのは当然のことじゃニコ」
荊棘「周りと違うと妾でもお前の立場なら思うからのぅ…w」
zm「……」
tm「のッ、希霧くんッ!荊棘様は確かに初めは君を食べようとしてたけど今はッ!(((」
荊棘「朋也、下がれ…それは弁解の余地などなかろう…」
tm「でッ、でもッ!!」
zm「……俺は…ボソッ…」
それは透き通った声
凛とした立ち振る舞い
強くやわらかな眼差しをして
いつもの母ちゃんなのに
いつもの母ちゃんじゃない
荊棘「…お前が……お前が妾を怖いと思うのなら…」
今この場から逃げても良いのだぞ
zm「ぇッ…?」
tm「何言ってんのッ!!そんな事したら君がッ!」
荊棘「図々しいと思うが、これでも妾は”まだ”お前の母親じゃ」
zm「…母ちゃん……」
荊棘「子が行く道は…」
zm「!!」
いつだって変わらない
例えどういう時でも
母ちゃんの瞳は前しか向いていない
荊棘「…ただし、応えを出すなら今ここでせよ」
荊棘「これは長々と伸ばしていい話ではない」
tm「荊棘ッ!希霧くんもなんか言ってよッ!((((」
荊棘「!!」
tm「…ぇッ…?」
zm「確かにッ…血は繋がってへんしッ…周りと見た目がちゃうのは嫌やッ…!」
zm「でもッ…それでもッ!」
zm「俺を叱ったりッ!」
zm「褒めたりしてッ!」
zm「色々教えてくれたんはッ…」
zm「愛してくれたんはッ!」
zm「…はぁ”ッ…はぁッ…ゴクッ…」
荊棘「…その言葉に…偽りはないか?」
zm「ないッ!」
tm「希霧くんッ…」
荊棘「フフッ…w」
荊棘「あっはっはははッ!w」
荊棘「その応えを心待ちにしておったぞ…ニコ」
zm「へへっ…w////」
本当に嬉しそうに
俺の頭を優しく撫でた
荊棘「……あぁ、それと…」
zm「…?」
荊棘「お前がもし…もし望むのならば…」
zm「ぇッ…?」
tm「ッ!!」
zm「人間が…鬼に…なる方法…?w」
荊棘「ニコ…」
荊棘「さぁ…これが最後の問い掛けじゃ…」
荊棘「選ぶが良い…妾は待つぞ…ニコ」
その選択の先を見据え…
「 鬼 に な る 方 法 .」
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