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「フランス、私に料理を教えてくれませんか?」
「は???」
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妙に生ぬるい風が吹き付けるいつも通りの日。されど少しだけ幸せな休日の午前11時。
休日と言えど特に予定も無く、のんびりとこんな時間になるまで眠っていた。
だが、こんな素敵な日をこの目の前の男は突然の訪問で破壊したのだ。とんだ不遜。なんて傲慢。
未だに彼の頬を叩いて罵倒する事をしない私は、なんて淑女なのだろうか。
そんな考えを他所に、目の前の彼は、イギリスは話を続ける。
「えぇ、ですから、私に料理を教えてほしいのですよ。」
「急に言われても困るわ。まぁそもそも、貴方が料理を作りたがるなんて不思議だけど!」
だって、この男は食の芸術には毛程も興味が無いのだ。あぁいや、紅茶と共に食べる菓子には興味があるか。
そんな私の考えを見透かしたように彼は答えた。
「⋯別に、ホテルで出るようなフレンチを教えろと言うわけでは無い。ただ、貴女が日常的に食べる様な料理を教えて欲しいんです。」
「何それ、余計に不思議ね。というか⋯」
「なんです?」
「そういう事なら私教えられないわ。だって、貴方が求めているのは美術としての料理じゃないもの。」
私は美しいものが、美術が好きだ。芸術が好きだ。高級レストランのフレンチはまさしく美を突き詰めた芸術だ。だから、そういうモノは作れる。だけど⋯
「私、家庭料理には無頓着なの。いつも適当な食材を合わせて、不味くないモノを作って食べるだけよ。」
「それで良いですよ。フランス料理じゃなくて、貴女が普段食べるモノを知りたいだけですから。」
「ふーん⋯なんで?」
「愛する人が普段食べるものを私も食べたいから、それ以外の理由なんてありません。 」
何てことを真顔で言うんだ彼は。いやまぁ確かに、一応彼と私は恋人関係だ。だからってこんな事を真顔で言われると心臓に悪い。狡い男だ。
「⋯本当、イヤなヒトだわ!」
「ははっ可愛いですね。で、教えてくれるんですか?料理。」
「ごめん、それは無理。」
そう言うと、彼はニヤついた顔を一気に驚愕の表情へ変えた。 当たり前だが、料理を教えられる位の食材を、常に用意しているわけは無いのだ。
それどころか、今日は食事を1回しか取らないつもりでいたし。(久しぶりにアブサンでも飲みながら絵を描いてやろうと思っていたの。)
あぁ、でも
「一緒に買い物に行けば良いかも知れないわ。 」
「成る程⋯いってらっしゃいフランス。」
「はぁ!?なんでそうなるのよ!⋯まぁ私と一緒に出かけるのが嫌なら別に良いけれど。」
「なっ⋯そうは言ってません。わかりました、行きましょう買い物。」
わざとらしい位にしおらしくしてやれば、彼は案外簡単に折れてくれる。プライベートの彼は案外優しいのだ。
「これで荷物持ちが出来たわね。」
「せめてそう言うのは心の中に仕舞っておいてください。」
「あらごめんなさい。てっきり照れ隠しぐらいは分かってくれるものかと。 」
だって、荷物持ちだ位に言わないと心が真っ赤に破裂してしまいそうなんだもの。コミューン国家になる気はまだ無いし。
なんて言葉を込めた目で彼を見つめていると、彼は顔を背けてしまった。
「⋯まぁ、とりあえず行きましょうか。これ以上貴女が可愛い事をし過ぎたら、どうしようもなくなってしまう。」
「あははっ何よそれ!でも、そろそろ行くって案には賛成。今回は反対しないであげる。」
そんな軽口を叩き合いつつ、私達は買い物に向かった。
「(あぁもう、何を買おうかしら。既に悩むわね。)」
コメント
2件
お久しぶりです。私は生きています。
あら、素敵な掛け合いですね!イギリスの「愛する人が普段食べるものを私も食べたい」という台詞、心臓に悪いです(笑)。フランス側のツンデレっぽい反応も可愛くて、お互いの距離感が絶妙に描かれているなと感じました。家庭料理に無頓着だと言いながら、一緒に買い物に行く流れになるのも自然で、日常の温かさが伝わってくる第1話でした。続きが気になります!
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