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彼の言葉が、俺の心に深く、深く刻み込まれていく。
俺は、この男の底知れない愛情と執着に、抗うこともできず、ただ身を委ねるしかなかった。
この先、俺の人生は、この男によって完全に支配されるのだろうか。
その問いは、答えが出ないまま、俺の心に重くのしかかった。
その翌日
碧の溺愛は、まるで堰を切ったかのように始まった。
朝、目覚めると、碧はすでにベッドサイドに座り、俺の顔をじっと見つめていた。
その視線は、まるで宝物でも見るかのように優しく、俺は少し居心地の悪さを感じた。
碧は俺の意識が戻ったことに気づくと、すぐに柔らかな笑みを浮かべ、俺の額にそっと唇を落とした。
温かい、そして少し甘いキス。
それは、昨日までの悪夢のような出来事を忘れさせるかのような、安らぎに満ちたものだった。
「おはよう、遼くん。よく眠れた?」
その声は、朝の光のように穏やかで、俺の警戒心を少しずつ溶かしていく。
まだ全身の痛みは残っていたが、碧の隣にいるという事実が、不思議と俺を安心させた。
朝食は、碧が作ってくれたらしい。
焼きたてのパンの香ばしい匂いが部屋に満ち、温かいスープが胃に染み渡る。
碧は俺の食べ具合を気遣いながら、時折、俺の口元についたパン屑を指で拭い
そのまま親指で唇をなぞるような仕草をした。
そのたびに、俺の心臓は小さく跳ねた。
昨日、彼に助けられたという事実が、俺の感情を複雑にしていた。
憎しみと、そして、かすかな感謝と、理解できない感情が混ざり合っていた。
食後、碧は俺をソファに誘い、優しく抱きしめた。
彼の腕が俺の体を包み込む。
温かく、心地よい抱擁。
しかし、その瞬間、俺の体はびくりと震えた。
昨日、あの薄暗い部屋で、見知らぬ男たちに体を触られ、拘束されていた時の記憶が
フラッシュバックのように脳裏をよぎったのだ。
碧の体温が、あの時の不快な感触と重なってしまい、俺は無意識のうちに体を硬直させた。
碧はすぐに俺の変化に気づいた。
彼の腕が少し緩み、俺の顔を覗き込むように視線を下げる。
「怖い?」
碧の声が、優しく、そして少しだけ心配そうに響いた。
その問いかけに、俺のプライドが激しく反発した。
こんなにも情けない姿を、こいつに見せるわけにはいかない。
特に、俺をこんな目に遭わせた元凶である碧に
怯えているなんて絶対に認めたくなかった。
「こ、怖くねぇし……!」
俺は掠れた声で、精一杯の強がりを言った。
顔は碧の胸に埋めたままで、彼の顔を見ることはできなかった。
けれど、俺の震える声は、紛れもなく恐怖を物語っていた。
碧は何も言わず、ただ、俺の背中をゆっくりと撫で続けた。
その手が、まるで俺の心を落ち着かせようとしているかのように
優しく、そして執拗に、俺の背中を上下する。
やがて、碧の腕が俺の体を持ち上げ、俺はあっという間にベッドに押し倒された。
柔らかなマットレスに体が沈み込む。
碧の顔が、すぐ目の前にあった。
瞳は、俺の全てを見透かすかのように
深く、そして熱かった。
逃げ場のない状況に、俺の心臓は激しく脈打った。
全身の痛みに加え、昨日の恐怖が再び蘇り、俺の目にはじんわりと涙が滲んできた。
「っ……」
俺はたまらず、両手で顔を覆い隠した。
碧に見られたくなかった。
この情けない姿を、誰にも見られたくなかった。
特に、碧には。
俺の指の隙間から、熱い涙が頬を伝うのを感じた。
「怖いね……でも、大丈夫だよ」
碧の声は、今までに聞いたことのないほど、優しく、そして穏やかだった。
彼の手が、俺の手首にそっと触れた。
その手は、まるで壊れ物を扱うかのように優しく
しかし確実に、俺の手を顔から引き剥がした。
目の前には碧の顔があった。
その瞳は、まるで慈しみに満ちた聖人のように穏やかで
俺の心の奥底にある恐怖を溶かしていくようだった。
かと思えば、優しく唇を奪われて
その温かく柔らかな感触に、俺の全身の力が抜けた。
碧の手が俺の頬を包み込み
「もう怖いことなんてないから、安心して」
そう囁いた。
その言葉は魔法のように、俺の恐怖心を和らげた。
涙でぼやけた視界の中、碧の顔が近づいてきて、再び唇が重なった。
今度はもっと深く、長いキス。
そのキスに、俺は完全に身を委ねてしまった。
碧はまるで俺の全てを理解しているかのように俺の反応を見ながら
優しく、そして時に少し強引に俺の体を触ってきた。
「……っ」
「大丈夫、痛いことなんてしないから」
その手つきは決して乱暴ではなく
むしろ、俺の体に刻み込まれた恐怖を優しく解きほぐすかのようだった。
俺は抵抗することもできず、ただ碧の愛撫を受け入れるしかなかった。
碧の唇が俺の首筋を伝い
「っ……碧」
俺は掠れた声で名前を呼び、気付くと碧の背中にしがついていた。
碧の手が俺の髪を優しく撫でる。
その感触に、俺はついに抵抗をやめた。
体の奥から湧き上がる熱に身を任せ、ただ碧に全てを委ねた。
◆◇◆◇
翌朝
「遼くん、おはよ~。起きてる?」
碧はまるで恋人のように俺の顔を覗き込み、おはようのキスをした。