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本話「その人形に魂のこりたるか。」は稲川淳二さんの有名な怪談「生き人形」を元に書いております、前話同様、当人は差別・侮辱を意図するに基づくものではございません。そこをご理解の程いただけますようお願いします。
「こんにちはー!取材いいですか!?先生!」
明るくドアを開けて執務室に入ってくるのは万魔殿の書記、元宮チアキであった、執務室で業務を進めている小林先生は全身を伸ばし
「チアキちゃん好きだねぇ〜取材、いいよ別にぃ〜」
チアキはガッツポーズを決めながら隣にどさっと座り、カバンからペンとメモ帳、カメラを取り出す。彼女が普段出版している「週刊万魔殿」は彼女自身の趣味で行っているが、万魔殿の議長から予算から賄っている、理由はゲヘナに万魔殿の名が知れるのは悪くないとのことらしい。中の記事は幅広いジャンルがあり、ニュースからクスッと笑えるような記事まである、そんな「週刊万魔殿」は定期購読はなんと無料だ、当の本人は収益を考えておらず「手に取って読んでほしい」という気持ちが見て取れる。
「ではでは先生〜まずはこれから…」
チアキが質問を投げかけようとすると目線の端にとある人形が映る、実は執務室に入った段階で少し気になっていたらしく、本人は何の人形か聞いてみることにした、小林先生はこう返す
「ああ、あの人形?あれはね、生き人形って言うんだ〜…初めて見る?本物」
小林先生は腰を上げ、生き人形が入ったガラスケースを目の前に持ってくる、チアキが興味津々に写真を撮りながら質問を続ける。
「へぇ!こんなものがあったんですね!これって買ったんですか?」
「いや…これは友人から預かってほしいって言われてさぁ〜…」
「ほうほう!ご友人さんからのお願いで一時的に預かってるんですねぇ…」
チアキはスラスラとメモをしながら質問は続けているとどこからか視線を感じる、気づかれない程度に目で周りを見渡しているが誰もいない、それなのに誰かに見られている感覚がある。いつもならそこまで緊張を感じないはずだが今回は違う、まるでカゴに閉じ込められたネズミを見る目で見られている気がする。何かがおかしい、それでも先生には心配をかけたくない一心で耐え、記事のネタを集め切る頃には月が昇っている時間だ。
「あれ?もう夜か…今日泊まってく?」
小林先生からの誘い、正直断りたかった、逃げたかったが先生と夜を共に過ごせると考えると少し楽かもしれないと考え首を縦に振った。そして生き人形に何があるのではないかと思い、質問を投げかける
「先生?その…その人形を預かってから何かおかしいことありませんか?私実はさっきから視線を感じてて…」
「あらら、やっぱかぁ…数週間前から借りてるんだけど超常現象が起きやすいんだよねえ…」
小林先生は苦笑を浮かべながら耳をかく、やはり先生も感じていた、あの異変は気のせいではなかった。だがこれはまだマシらしいと小林先生は言う
「前にフウカちゃんに料理を作ってもらってる時に突然火がつかなくなったり…別の日に当番の子作ってもらってる時に調理器具が落ちたりすることがあるんだよねぇ、怖いよ怖いよ〜…」
そうしっぽをわざとらしく両足の間にズボッと入れる小林先生にチアキは少し安心感を覚える、言い方は少し悪いかもしれないが別に被害者がいたと言うことを聞けたからなのだろう。
「あはは…じ、じゃあ少しシャワーを借りますね?」
そうチアキは休憩室から着替えを取り、シャワー室へ向かう。
シャワー室なら安全だろうと思っていたがやはり怖いのは怖いので小林先生に付き添ってもらうことにした
「何だかすみませんね…こんなことに付き合わせちゃって…あはは」
「仕方ないよ〜、怖いものは怖いんだからさ〜」
小林先生は安心させようとそう声をかける、シャワー室に着くと流石にプライバシーを守ってくれるのか入口で待機してくれるが百%安全とは言えないのがまた怖い。
「チアキちゃんが入ったらオイラが入るからねぇ〜」
入り口からそう声をかけ、ドアを閉める。その間に衣を脱ぎ、シャワーを浴びる。いつもならパパッと終わるはずが長く感じる、時が遅くなった感覚だ。すぐに動けるはずの足も鎖が結ばれた感覚、そんな悪いことを考えないように今日あったことを一生懸命に考えるとシャワー室の扉付近で音がした。
「先生?私忘れ物しちゃいましたか〜?」
返事がない、不思議に思ったチアキは仕切り板から顔をのぞかせる、誰もいない。何かが落ちただろうと自分に思い込ませ体を洗う。また音が鳴る、ラップ音だ。そう確信する、なぜなら先生は一言言って入ってくるはずだ、それなのに声も姿もない。やはりあの生き人形が原因だろう。そう考えながら急ぎ足でシャワー室を後にする。その後の先生の番ではラップ音があったものの、それ以外は何もなかった。
数日後、週刊万魔殿の記事をシャーレで書いているとふとあの人形を思い出し、探してみたものの見つからなかった。そこで小林先生に聞いてみたら意外な返事が返ってきた
「あ〜あれね〜、もう供養されたよ…初めて聞くよね?オイラの友達に人形供養の人がいるんだけど多すぎて保管できないから預かってって言われたからあの時預かったんだよ〜…どこかのおばあちゃんの形見だけど超常現象が多くて結局供養に出したんだってさ…」
やはりあの生き人形に何かがあると思った、そして霊が憑いていることは本当だった。噂程度にしか聞いていなかった霊が人形に憑く話は。チアキはなるほどと答え新しく記事を作る、題名は
「衝撃!シャーレに放置されていた人形の正体は!?」
人形に霊が憑りやすい話は本当だ、有名なところだとアナベル人形だろう、日本にもお菊人形という髪が伸び続けるという怪奇現象があるらしい、きっとあなたの身近にある人形にもナニカがいるかもしれない。
その人形に魂のこりたるか。 終
コメント
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古書研究のリオンです。第6話、読み終わりました。 「生き人形」の怪談、実話っぽい語り口がじわじわ怖いですね。特にシャワー室でラップ音が鳴るのに先生の声がしないところ、ゾッとしました。チアキが「忘れ物しました?」と聞く返事のない間合いが絶妙です。あと、後から「あの人形は供養済みだった」と聞かされるオチも、怪談としての余韻が効いてます。日常に潜む違和感を丁寧に積み上げる書き方が、13ed1さんらしいなと感じました。続きも楽しみにしています。