「……お前は俺のもんだから」
その言葉が頭の中で何度も反響して、ひよりは真っ赤になった。
「なっ……! そ、そんなの、勝手に決めないでよ!」
言いながらも、心臓は爆発しそうなくらいドキドキしている。
桐生はそんなひよりを見下ろし、ふっと口の端を上げた。
「勝手じゃねぇよ」
「え?」
「俺が決めたんじゃなくて――お前がそうだったんだろ?」
ひよりは言葉を失った。
だって、図星だったから。
ずっとずっと、桐生のそばにいて、彼のことが好きで――
気づけば、桐生のことばかり目で追っていた。
「それとも、違うのか?」
桐生が静かに問いかける。
その視線に射抜かれて、ひよりはどうしようもなく顔を伏せた。
「……ち、違わない、けど……!」
「じゃあ、もういいだろ」
桐生がぽんっと、ひよりの頭を軽く撫でた。
犬系女子の本能が、その手の温もりに喜んでしまう。
しっぽがあったら、たぶん今、ちぎれるくらいに振ってる。
「桐生くん、ずるい……」
小さく呟くと、桐生はくすっと笑った。
「犬は単純で助かる」
「むっ……! 単純とか言わないで!」
「でも、そういうとこ、嫌いじゃない」
「~~~っ!」
耳まで真っ赤になったひよりは、たまらず桐生の腕をぎゅっと掴んだ。
「……責任とってよね」
不満げに言うと、桐生は少し驚いた顔をして、すぐに目を細めた。
「言われなくても」
静かに囁かれたその言葉に、ひよりの心は完全に撃ち抜かれた。
――もう、この猫から離れられない。
犬系女子の本能が、そう確信した瞬間だった。
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