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「……おい霊夢、あれを見ろ! 雲の間を巨大な船が飛んでるぜ!」
魔理沙が指差した先には、夕焼けの空を悠然と泳ぐ巨大な木造船。星蓮船だ。 地獄の底から這い上がってきたばかりの俺たちは、若返った体力の回復を待つ間もなく、次なる異変……いや、「新しい味」の予感に突き動かされていた。
「宝船か……。中に金銀財宝があるなら、神社の修理費くらい余裕で稼げるわね」 「霊夢、お前の目的はそれかよ。俺はあの船の調理場がどうなってるのか気になるぜ」
不老不死のバネを活かし、俺たちは魔法と空飛ぶ箒、そして気合で雲を突き抜け、船の甲板へと降り立った。
「――おやおや。騒がしいお客様ですね」
静かに現れたのは、虹色のグラデーションがかった髪をなびかせる、慈愛に満ちた瞳の尼僧、聖白蓮だった。
「私は聖白蓮。この船の主です。……おや、あなた方からは『死』の気配が全くしませんね。それどころか、非常に芳醇な……大豆と魚介の徳(いぶき)を感じます」
「尼さん、こいつは博麗神社の料理人だ。地獄の火で煮込みを作ってきた帰りなんだぜ」
白蓮は俺が抱えている「白だしの瓶」を見つめ、そっと微笑んだ。
「なるほど、それがあなたの法力……いえ、調理の源なのですね。ですが、この船は仏の教えを尊ぶ場所。殺生を禁じております。……魚の成分が含まれるその『だし』を、この船で使うわけにはいきません」
「なっ……!? 白だしから魚(カツオや煮干し)を抜いたら、ただの塩水になっちまうぞ!」
俺は窮地に立たされた。白蓮の放つ圧倒的な「聖なるオーラ」に、不老不死の力さえも静まり返っていく。
「ですが、もしあなたが『殺生をせず、命の輝きを損なわずに、魚の出汁以上の慈悲』を表現できるなら……この船での調理を許しましょう」
「無茶苦茶言うな! 魚を使わずに魚を超える出汁だと!?」
その時、船の陰から一人の少女――虎丸星が、巨大な宝塔を構えて現れた。
「白蓮、無理を言ってはいけません。……ですが料理人よ、私も興味があります。毘沙門天の使いとして、あなたの『精進料理』の限界、見せてもらおうではありませんか!」