体温も上がり、食欲もあるので体調は問題ないと言われた。
帰宅してキャリーから出してあげると、阿部ちゃんは身体を小さくしてイカ耳になった。
それを見て、抑えていた気持ちが一気に溢れる。
🖤「阿部ちゃん、俺が不安なのわかっちゃったんだね。ごめんね。でも、こんな事して欲しくなかったよ。なんでいなくなったの?どうして俺が悲しむってわからなかったの?」
猫に話しかけながら涙を流すなんて、傍から見れば異様な光景だろう。
🖤「俺、阿部ちゃんに傍にいて欲しい。もし人間に戻れなくたって阿部ちゃんが好きだよ。阿部ちゃんが責任を感じる事なんて何もない、お願いだからもう俺のそばからいなくならないで。ほんとにお願い……俺阿部ちゃんがいなかった時、生きた心地しなかったよ……」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらまくし立て、それでも気持ちが収まらなくて、床に突っ伏して嗚咽した。
何かが落ちる物音がして、それから小さな脚が髪に触る。
顔を上げると、阿部ちゃんがテーブルにあったティッシュを引っ張ってきていた。
ミャーと一声鳴いてすり寄ってくるのを、顔を拭って抱き上げる。
🖤「ほんとに、ほんとに無事で良かった……」
抱っこでソファに座って、そのまま眠っていたようだ。
まだ微睡みながら膝にいる阿部ちゃんを撫でる。
🖤(……?)
やたら毛足が長い。
視線をやると、そこには見慣れた姿の阿部ちゃんが膝枕で寝息を立てていた。
🖤(戻っ…た……?)
🖤「阿部ちゃん!」
慌てて肩を叩くとゆっくり目が開く。
視界に自分の手が見えたんだろう、『えっ!?』と叫んで飛び起きた。
💚「えっ、俺、えっ??」
まだ状況が飲み込めていなさそうな様子だけど、戻ったのは事実だ。
🖤「良かった……」
しっかり抱きしめるとやっと実感が湧いたんだろう、阿部ちゃんが肩に顔を埋めて鼻をすすり始めた。
💚「めめ、心配かけてごめん。叱ってくれたの、ちゃんと聞こえてた。ほんとにバカな事した、ごめんなさい」
🖤「もう終わった事だから」
そっとキスをして、また抱き合う。
お互いの体温を、存在を確かめるように、これが当たり前じゃないんだという思いも手伝ってなかなか離れられなかった。
日が落ちてきて、みんなに連絡しないと、夕飯の用意もしよう、とやっと立ち上がる。
せめてフードばかりじゃなくご飯に人間と同じ食材を使ってみようと試行錯誤していたので、冷蔵庫を開けたらささみがたくさん入っているのが目に止まった。
今日は猫の時には食べられなかったフライにしようか、でも胃の負担は大丈夫かなとか色々考える。
阿部ちゃんが後ろからやってきて背中にくっつく。
💚「俺、めめのささみフライが食べたい」
🖤「ふふ、ちょうど思ってたとこ」
💚「やった!」
大葉とチーズたくさん入れるね、と言うと更に喜ぶ。
日常が帰ってきたと実感して、ささみを揚げながらこっそりまた泣いた。
コメント
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一個前に書こうと思ってたコメ思い出しました。猫飼ってます?詳しいなあと思ってwwwもとに戻った時は服を着ていたのかが気になってます。私は頭がおかしいですね笑