テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,794
にこちゃん
139
#osyn
にこちゃん
502
yn視点
ある日、ふとおさでいがかっこよくなったと感じた。
いや、元から顔は整ってると思っていたし、かっこいいとも思っていたが、その日はいつにも増してかっこよく見えた。
「おさでい、なんかかっこよくなったね」
ある日の動画撮影終わりに本人に伝えてみると、
「え、まじで!?ちょっと痩せたからかな?」
なんて言って、たまらなく嬉しそうな顔をするものだから、俺は胸の奥がじんわりと暖かくなるのを感じた。それと同時に、この気持ちがバレてしまうのではないかと少しの不安を覚えた。
その日以降、おさでいはどんどんとお洒落に目覚めていったように思った。
いつものサンダルがお洒落なスニーカーや革靴に変わっていたり、前のおさでいだったら絶対に持たないような黒の小さなレザーバッグを持っていた時は驚いた。
化粧だってしっかりするようになっていて、正直、今まで以上におさでいを前にすると心臓が落ち着かなかった。それはもう、本人に聞こえてしまうのではないか思うほど。
でも、急になんで。そんな考えが2人きりの帰り道の途中、不意に頭に浮かんだ。
好きな人でも出来たのかな、と一瞬だけ考えてしまった。
「おさでい急にお洒落になったよね、なに、好きな人でもできた?」
できるだけわざとらしく、自分の気持ちを隠し通すように口角を無理矢理上げてそう言った。
「っ、……なわけないじゃん!」
おさでいの顔は夕焼けみたいに綺麗な赤色に染まっていた。分かりやすい。でも、そこも好き。
もう、胸が引き裂かれるんじゃないかと思うほどの痛みだった。
その時に、俺の想いはもう終わらせようと決めた。きっと傷つくことになるから。
でも、心に決めたはずなのに、動画編集をしても、配信をしても、お風呂の時なんて1番考え込んでしまって。
こんなにしっかり恋愛することなんて、学生時代だけのことで、大人になったら無いと思っていたんだけどな。
俺はベッドに寝転がったまま、今の俺には明るすぎる部屋の照明をぼんやりと眺めた。
お酒は大人の特権だ。ふと、やけ酒でもするかと思い立ち、とある人に連絡をした。
pro視点
boysの頃からの友達のやなとから、深夜に急に連絡が来た。
今から一緒に飲みに行こうとのこと。急にどうした!?と思うが、大切な友達の誘いだし、こんなこと今までになかったので心配もあり、迷いなくOKとスタンプを送った。
――
待ち合わせ場所で合流したやなとは酷く元気が無いように見えたので、その時の俺は、深刻な悩みでも聞かされるのかと身構えていた。
――
やなとの悩みを聞かされ、俺は思わずため息をついた。
内容はこうだ。
やなとの友達に好きな人が出来たらしい。諦めたいのに諦めきれないそうだ。明らかにやなとの話だし、なんなら途中で思いっきりおさでいと言っていた気がするのだが。本人は気づいていないのだろうか。俺が気づいていないと思い、やなとがなかったことにしているのだろうか。
やなとがおさでいのことを好きなことは薄々気づいていたので、そこまで驚きはなかった。しかし、おさでいの気持ちに気づいていないことは衝撃だった。
すにすてととぅるりぷのコラボ動画撮影中、やなとがおさでいとそあらが楽しそうにくっついているのを見て、眉間に皺を寄せていた。こいつめちゃくちゃ分かりやすいな、なんて軽く思っているくらいはまだ楽しかった。
面白いとは思うが、やはり友達なので、俺にはやなとにあの2人のことは何とか気にせずに過ごしてほしいという思いがあった。
なのでいつも以上にテンション高めで絡みにいった。やなともそれに乗ってきてくれて、今思い返すと確かにいつもより若干距離は近くなっていた気がする。
少しの悪ふざけで俺がやなとに抱きつくような形になった。すると、急に後ろから誰かの大きな手で肩を掴まれ、凄い力で引っ張られた。
あれよあれよとやなとから引き剥がされた俺は、手の主を見上げる。そこにはムッとした顔のおさでいがいた。
「はいはーい!!これからショート動画撮影するんで、”俺の”やなとさん借りまーす!」
なんて、やなとの体に腕を回し、とんでもないマウントを取られ連れてかれてしまった。
遠くから2人の撮影を見ていたが、おさでいはやなとにありえないくらい甘い顔を向けていた。
やなとも分かりやすいと思っていたが、おさでいはそれを難なく飛び越えてきた。
2人はとっくに付き合っているものだと思っていた。
今回のやなとの話を聞くまでは、そんなに拗れているとは思わなかった。
やなとはやなとで、なんであの感じを向けられて気づかないんだよ。とおさでいを少し可哀想に思う。
当の本人は、
「パルオぉ、俺どうしよう…!」
なんて、俺に抱きついてくる。こいつ隠す気ないな。てか、おさでいがいたら、俺めちゃくちゃ嫉妬されてるんじゃね?なんて思う。
おさでいがいたら……あ、そうだ。
俺は自分のスマホを起動した。
os視点
その頃のおさでいは、動画編集のためパソコンの画面に張り付いていた。
部屋のロッカーには今までの俺なら考えられないようなお洒落な服が数着入っている。やなとに「かっこよくなった」と言われ、もっとそう思って欲しくて買った服。
動画編集がひと通り終わりそろそろ寝るかと思い電源を落とした。真っ黒な画面に反射する俺は、パッと見でも分かるくらいの寝癖がついていた。
これじゃ、あの服は似合わないな、まぁ誰にも会わないからいいんだけど。
「あ、さいあく」
顎に小さなニキビを見つける。早く治らないかな。
そういえば、顎に出来るニキビは思われニキビと言うらしい。誰かに思いを寄せられていると出来るそうだ。
やなとが俺のことを想ってくれてたらいいのになぁ。
なんて、そんなことを思いながらベッドに向かう。
すると、俺の片手にブーッと振動が届く。手の中にあるスマホからだ。
パルオからメッセージが来ている。珍しいなと思いトーク画面を開く。
「は、」
俺は思わず息を呑む。そこには、おそらくパルオらしき腕に、少し酔っているのか顔を赤くして抱きついているやなとの写真が送られてきていた。
それと共に位置情報も送られてきた。ここにいるということなのか。俺は居ても立っても居られず、家から急いで飛び出し、店まで全力で走った。
店の前までつき、俺は上がった息を整える。
店に入り、店員さんに先に友人がいると伝え案内してもらう。
案内されたのは1番奥の個室だった。外からでも微かにやなととパルオの声が聞こえてくる。
「ーーおさでいには別に好きな人がいるんだって!、ー」
俺の好きな人の話?なんでやなとがそんな話を…?
「ーー!ー?ーー!」
パルオが何かを励ますような声が聞こえる。
「俺は、すきだよ…?おさでいのこと……でも…流石に伝えるのはむり…!」
…………え?
幻聴かと思った。もしくは全部夢なのかもしれない。そう思い俺は自分の頬をつねる。ちゃんと痛かった。
襖に手をかけるがなかなか開ける勇気が出ない。
「おさでいのどこが好きなの?」
とパルオの声。声でかいな。なんて一周回って冷静にそう思う。
「……ぜんぶ、」
やっぱり、やなとは俺のこと……!
俺は勇気を出して襖を開けた。
「へ?え、おさでい!?」
やなとが大声を出す。視界の端のパルオがニヤリと笑っているのが目に映る。
「もしかして、今の全部聞いて…!」
と、やなとの顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。
やなとが震えている間に、パルオはお金だけを置いてこっそりと部屋を抜け出した。
「やなとは、俺のこと、その…好きなの?」
テーブルの向かい側にいるやなとにそう聞くと、言い訳を探すように周りをキョロキョロと見回して、それから覚悟を決めたようにキュッと口を結んだ後、ゆっくりと頷いた。
俺は嬉しさに少し視界が滲む。しかし、やなとが不安そうな顔で俺を見上げ続けてるのを見て、まだ気持ちを伝えていないことを思い出す。
いざ伝えるとなると、緊張で言葉が少し詰まる。俺は大きく息を吸った。
「俺も好きだよ。」
勇気を出して一言伝える。やなとを見ると、目を見開き、固まっている。やなとさん?と声をかけると、ハッとしたような顔をして、
「……本当に?」
なんて嬉しそうな顔をして笑う。
「もちろんでしょ」
恥ずかしくて顔が直視できなくて、壁を見つめながらそう言った。
やなとがこちらに近づいてくる。
ふと、自分が今酷い見た目をしていることを思い出す。髪も服もニキビも今は全てダメダメだ。
「まって」
俺は手で顔を隠す。
「今、かっこよくないからダメ。」
そう、やなとに伝える。
しかし、やなとはそんなこと一切聞かずに、逆に俺に近づく足を速めた。
「おさでい?」
優しくそう話しかけられる。
「なに、やなとさん」
「手、どけてみて?」
俺の大好きな柔らかく暖かい声でそう言われると、俺はその通り手を退かしてしまった。
「確かに、俺は頑張ってお洒落してるかっこいいおさでいも好きだけど、そのままのおさでいだって大好き…なんだよ?」
なんて、目を見て真っ直ぐに伝えられる。
「うわ、はっず。今のなし」
やなとはそう言って赤くなった顔を自分の手で仰ぐ。
そこまで真っ赤になるのに、真っ直ぐ素直に伝えてくれるのが嬉しくて、愛されてるんだって安心して、涙が溢れる。
「……おさでい?泣いてる?」
なぜだかちょっと嬉しそうなやなとにそう聞かれる。
「泣いてない」
誰が聞いても泣いていると分かるほどの鼻声で、そう返してしまう。
するとやなとにフワッと抱きしめられる。頭をポンポンと撫でられると、鼻にいつものやなとの香りと、ほんの少しのアルコールの香りが届いて、安心とドキドキが混じり合う。
「大丈夫?」
離れた後にそう話しかけられると、愛おしさが溢れ出して、やなとの手をぎゅっと握った。
「今日、やなとの家泊まる」
「え!…どうしよう、俺片付けしてないよ?」
迷ってる感じを出しつつ、きっとやなとの答えは一つだけなんだろうなと感じとれる。多分、あとひと押しだ。
「俺、やなとの家泊まれないと、また涙出そう」
「えー、しょうがないなぁ」
そう、ふにゃっと笑うやなとを見るだけで、俺の心は満たされた。
この人はきっと、かっこ悪くても愛してくれるんだろうなと思うと同時に、それでもかっこいい姿を、色んな姿をもっと見せたいとも思う。それが男というものだ。
カシャッ
急に目の前でシャッター音がする。
「え、やなと今撮った!?」
「うん」
なんて、ドヤ顔で言われる。流石に今の姿を撮られるのは恥ずかしい。
「ちょっ、なんで?消して!消して!」
「だって、目腫れてて可愛かったから」
やなとはニコニコでそう答えた。
「あ、そうだ!今日、俺のことドキッとさせられたらいいよ?」
と、とんでもない提案してくる。今日、あなたの家に泊まるんですよ?
絶対、後悔させてやる。と思い俺はやなとの家に向かう途中、やなとをドキドキさせる作戦を練りながら、想像の中のやなとにドキドキさせられる、なんてなんとも惨めなことをしながら、期待に胸を膨らませた。
その隣で、やなとが俺以上に真っ赤になっていることを俺はまだ知らない。
コメント
4件
がち最高!!低浮上でも続き楽しみにしてます!
みぅです🤍🥀 第5話、読み終わりました…! やなとがおさでいの変化に気づいて、でも「好きな人できた?」って無理に明るく聞くところ、胸がぎゅってなったよ。おさでいが夕焼けみたいに赤くなるのも、やなとが「もう終わらせよう」って決めるのも、すごくリアルで切なかった。 でもパルオの策略で一気に進展して、最後の「俺も好きだよ」からの「かっこよくないからダメ」っておさでいの照れ方が可愛すぎる…!やなとの「そのままのおさでいだって大好き」に私も泣きそうになったよ。2人の距離が縮まる瞬間、すごく丁寧に描かれてて、読んでて幸せな気持ちになった🌙