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エレノアだよ。四回目の交易でもバカみたいな利益を叩き出して、意気揚々と帰って来たらシャーリィちゃんが出迎えてくれた。嬉しい反面なにか厄介事が来るんじゃないかと警戒してしまうね。

私はシャーリィちゃんに誘われるまま港湾エリアにある事務所にやって来た。

「人払いを」

入って早々シャーリィちゃんが人払いを命じて、事務所に居た奴等は皆外に出た。こりゃ勘が当たったかな?

「そう身構えないでください。内密なお話ではありますが、悪いことではありませんから」

シャーリィちゃんは椅子に座りながら私にも座るように促した。突っ立ってるのも変だから、向かいに座らせて貰ったよ。

「先ずは、お疲れ様でした。皆さんがご無事で本当に良かったです」

「なぁに、慣れたもんさ。それに今回で四回目だ。いつもより更に早く帰れたけど、何かあったかい?」

「まあ、少しばかり」

シャーリィちゃんが言うには、私達が不在の間マーサの姐さん達を巡って、旧市街で派手なドンパチをやらかしたとか。

なぁんか私達が留守の時に荒事が起きてるような気がするよ。

「幸いこちらに損害はありませんでした。完璧とは言えませんが、目的は達成しています。それで満足していますよ」

……この言い回し、満足できる結果じゃなかったな。どこぞのバカがシャーリィちゃんを泣かせたって訳だ。魚のエサにしてやりたいよ。いや、それだと魚に失礼か。あいつらだって食べるものを選ぶ権利はあるからね。

「それについては、また後で。エレノアさん、次の出港は何時になりますか?」

「そうだねぇ、船の整備と手下達を休ませてやりたいから半月後かな」

アークロイヤル号は良い船だけど、蒸気機関やスクリュー何かはしっかりと整備しないと大変なことになるからね。

「分かりました、半月後までに次回の交易品の選定と用意を済ませます」

「そうしておくれ。けど、それだけじゃないんだろう?」

「分かりますか?」

「シャーリィちゃんとも三年以上の付き合いだからね」

いつもなら密輸関係は私に丸投げしてるのがシャーリィちゃんだ。

信頼の証だと思ってるけど、わざわざ予定を聞いてくるのは何かあるはずだよ。

「以前からエレノアさんに依頼されている件を実行に移そうと思っているんです」

ほう。

「つまり、シャーリィちゃんが南方に来てくれるって思って良いかい?」

「話が早くて助かります。個人的な用事が出来ましたし、今回を逃したら暫く向かうことが出来ないと考えています。だから、次回の航海でご一緒しようかと。構いませんか?」

「大歓迎だよ。ただ、どんなに急いでも二ヶ月は帰れないよ。留守の間の用意は出来てるのかい?」

「それはエレノアさんが戻ってからと考えていました。明後日の幹部会で議題に出します。根回しなんかはしないのでご安心を。二ヶ月空けても大丈夫なように組織を作っていますから」

「それなら良いんだけど」

次の幹部会は荒れそうだね、こりゃ。正真正銘の敵地にシャーリィちゃんが行くのをシスターが簡単に認めるとは思えないし。

「それと、今回の売り上げですが」

「金貨の詰まった樽が舟倉に山積みしてるよ。星金貨で言うなら、十枚分は硬いね」

「それはまた、たくさん稼いでくれていますね」

「まだまだ稼ごうと思えば稼げるが、物が増えすぎると値段が下がるからね。それに、目をつけられたくはないよ」

まあ、既に手遅れだとは思うけどね。相手もうちから買い付けた薬草を売り払うんだから、それなり以上の儲けが出ているはずだからねぇ。

「では、次回は多少値崩れしても構わないので、倉庫に保管されている交易用の薬草を全部売り払いましょう」

「良いのかい?」

「はい、直ぐにでも大金が必要になりますから」

「そりゃそうだろうけど、別に……」

うん?シャーリィちゃんが紙を差し出してきた。これ、『ライデン社』のカタログ?これは……はあ!?

「なんだいこれは!?」

戦車一両星金貨二十枚だぁ!?

「それ、あくまでも戦車単体の購入金額です。これに弾薬なんかを足せば凄い金額になるでしょう?しかもこれ、友情価格なんですよ」

「……あはは、バカみたいに高いや」

一両買えば今回の売り上げが消し飛ぶのかい。そりゃシャーリィちゃんが乗り込むわけだ。もっと取引の幅を広げて儲けを増やさないと。

「これは戦車だけの値段です。軍備拡張はもちろん、『黄昏』の更なる拡大にも莫大な資金が必要になりますからね。頑張って稼がないと」

「あいよ。ところで、個人的な用事ってのは聞いて良いかい?」

「はい、『飛空石』が欲しくなりまして」

「『飛空石』ぃ?あんなもんただの石ころ……ああなるほどね」

魔力を込めなきゃただの石になるって話だったけど、シャーリィちゃんなら話は別か。

「その通りです。取り扱っている商人を探すか、直接手に入れるために同行しなければいけません」

「商人については心当たりがないなぁ。『飛空石』を活かせるのは飛空挺を取り扱う奴等だけだ。現地で探してみるかねぇ」

そもそも魔力を込めないと三日も持たないのが『飛空石』だそうだ。飛空挺ってやつは便利だけど、魔石をバカみたいに消費するから軍や金持ちしか持っていない。けど、シャーリィちゃんにその心配は無用と来た。

……こりゃシャーリィちゃんの特殊な力は隠さないとね。捕まって人体実験なんかされちゃ堪らないよ。

「公言するつもりはありませんよ。ロザリア帝国でも異質なんです。魔法文明からすれば、私の力は何よりも価値がある。私自身がロクな目に合わないのは確実ですからね」

「その方が良いよ。それと、幹部会で何人か連れていくことを決めるんだよ?私一人じゃちょっと自信がない」

「ご謙遜を、エレノアさんの実力は理解していますよ」

「いやまあ……よし、ハッキリ言おうか。シャーリィちゃんの奇行を制御できる自信がない」

うん、無理。突拍子もないことを思い付くのがシャーリィちゃんだ。私一人で見ろ?無茶言うんじゃないよ。海の魔物を相手にするほうが気楽さ。

「奇行とは失礼な、ちょっと思い付いたことを試しているだけです」

「それがどれも突拍子もないことなんだよ、シャーリィちゃん。せめてベルモンド辺りを連れてきておくれ。あと可能ならルイス君を」

贅沢を言えるならカテリナを連れていきたいよ、本当に。

エレノアは来る幹部会で必ず同行者を募ることを心に決めるのだった。

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