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「ではこれより第……何回目でしたっけ?まあ良いや。幹部会を開始します」
『黄昏』中心にある『領主の館』にある会議室に『暁』の主要メンバーが集まり、気の抜けたシャーリィの宣言によって幹部会が開始された。
参加メンバーは以下の通りである。
『暁』代表
シャーリィ=アーキハクト。
代表補佐
シスターカテリナ
護衛長
ベルモンド=バロン
護衛長補佐
ルイス=ロッテ
執事長兼『黄昏』統括
セレスティン=ビレッジ
農園担当
ロウ=キャン
軍務担当
マクベス=カニンガム
ドワーフチーム統括
ドルマン
被服担当兼『黄昏』統括補佐
エーリカ=ブリュン
海賊衆頭目
エレノア=ロンド
『黄昏商会』会長
マーサ
『黄昏商会』会長補佐兼財務担当
ユグルド
遊撃班
獣人族?アスカ
医療担当
ロメオ=ロンド
以上である。この内アスカは早々に眠りについた。まだまだ幼く自由な彼女を咎める者は居ない。
「さて、『黄昏』は順調に発展していますが、同時に問題も発生しています。具体的には治安の悪化ですね。セレスティン」
「はっ。流民に紛れて犯罪者の類いが入り込んでございます。これらはマクベス殿と協議して自警団を組織、治安維持に当たらせます」
「訓練以外の時間、手空きの隊員達に町の見回りを命じております。それに合わせて司令部もこの屋敷に移したく思いますが、宜しいでしょうか?」
「余っている部屋はたくさんありますから、自由に使ってください。中心部のほうがマクベスさんも指揮を執りやすいでしょうから」
「感謝します、お嬢様」
「次に農園ですが、ロウ」
「ご報告させていただきます。農作物の生産は順調。更に『大樹』の効果範囲が拡大しましたので、農地の拡大を予定しております。つきましては、更なる増員をお嬢様にお願いしたく」
「住民から適性のある人を優先して採用することを許可します。ただ素性には十分に注意してください」
「畏まりました」
「ドルマンさん、詳細は不要です。順調ですか?」
「問題ない。強いて言えば、お嬢ちゃん個人からの依頼が難航しているだけだな」
「それについては、解決策を考えています。引き続きお願いします」
「任せてくれ」
「エーリカ、順調ですか?」
「はい、お嬢様。農園の綿から作った生地は評判が良くて生産が追い付いていません。それと、マクベスさんから依頼された制服についても、もう少し時間をください」
「構わないぞ、エーリカ嬢」
「エーリカのところにも人材を派遣することにしましょう」
「ありがとうございます」
「次は、シスター。教会を館周辺に移設する話ですが」
「わざわざそんなことをしなくても構いませんよ」
「いえ、町の外にあるので不便です。信仰の対象は町の中にあるほうが便利ですし、シスターと会うのが大変で寂しいです」
「またきっぱりと……分かりました。ただし、優先順位は低くしなさい。私は館で寝泊まりしますから」
「分かりました」
「あー、良いかな?医療担当からだ。いくつか薬草を無駄にして良いか?」
「どうしました?ロメオ君。無駄遣いとは?」
「薬草を煎じて、|回復薬《ポーション》を開発したい」
「回復薬?」
「あー、南方で使われている薬さ。薬草を何種類か調合する飲み薬でな。新陳代謝を活性化させて……まああれだ、身体の回復力を高める薬だ」
「塗り薬とは違うのですか?」
「手間が減るな。それに、塗り薬だと身体の内側には効果が薄い。軽い怪我なら塗り薬だけど、重傷なら回復薬のほうが効果が高い。問題は、製法が手に入らないから試行錯誤することになる」
「だから無駄にすると。構いません、研究のためなら存分に。ロウ、薬草園を更に拡大してください」
「畏まりました、お嬢様」
「助かるよ、ボス」
「マーサさん、『黄昏』の財政はど
うですか?」
「残念ながら今はまだ大赤字よ。この調子で人口が増えたとしても、まだ数年は赤字のままね。投資した分を回収するとなると、どれだけ掛かるか」
「構いません。安定した税収を得るまでは、他で稼げば良いのですから」
「交易については安心して良いわよ。他に比べたら治安も良いから、外部からの商人の出入りも頻繁で稼げているわ」
シェルドハーフェンは暗黒街故に治安も悪く、支配する組織によって独自のルールがある。
だが『黄昏』は郊外にあり独自のルールも少なく、税も安いので商売が容易いため外部からの商人の出入りも多く活気に満ちている。
「人と者の出入りは、同時に情報の出入りを活発化させてます。引き続き情報の収集もお願いしますね?」
「もちろんよ」
『黄昏』に訪れる商人は必ず『黄昏商会』に顔を出すことを義務付けている。その代わり直営の酒場や宿での割引を付与しているのだ。
商人を優遇して商売を活性化させるのもあるが、それ以上に彼等の持つ情報を収集することが狙いである。商いを生業としている者は情報にも敏感なのだ。
そしてマーサ指揮下の『黄昏商会』はその手の情報収集に慣れている。
「各種割引などの優遇は好評だ。外部にも良い噂が流れて、更に商人や流民が増えることになるだろう。引き続き情報収集を抜かるつもりはない」
ユグルドも言葉を加える。
「お願いしますね、ユグルドさん。さて、次は本題に入りますよ。次の密貿易に私も同行することになりました。留守はシスターとセレスティンを中心に任せるつもりです」
「前からエレノアの言ってた件か?」
ベルモンドが発言する。
「その通りです。個人的な用事もありますが、何よりも更なる商売拡大のために必要なことです」
「シャーリィ、次の航海を選んだ理由はありますか?」
カテリナがシャーリィを見ながら質問する。
「はい、シスター。新しい敵の存在、『血塗られた戦旗』への備えを優先していますが、彼等が動くのも時間の問題です。むしろ、今を逃したら下手をすれば年単位で行けない可能性があります」
「それで、次回の航海にと」
「はい。軍備拡張はもちろん『黄昏』の更なる拡大には莫大な資金が必要になります。その為にも、必須です」
「……分かりました。誰を連れていくつもりですか?」
「そうですね、先ずは……」
「俺は当然ついていく。お嬢の護衛だからな」
シャーリィがなにかを言う前に、ベルモンドが当然とばかりに志願。
「俺もだ。流石にシャーリィを危ない場所に行かせるんだからな」
ルイスも志願する。
「二人については、そのつもりでした。後は……アスカ」
「寝てるぜ?」
「起きてから伝えます。エレノアさん」
「あいよ。どんなに急いでも最低でも二ヶ月はかかる。あっちでの案内は任せな」
「つまり、二ヶ月不在にします。基本的には計画通りに動いてください。不測の事態には、臨機応変に対処を。どうしても私の判断が欲しい場合は、レイミを頼ってください」
「レイミお嬢様にお任せすると?」
「セレスティン、ちょっとした手段があります。その時はお願いしますね」
「御意のままに。お嬢様も道中お気を付けて」
「シャーリィ」
「はい、シスター」
「……怪我をしないように、無事に帰りなさい」
「……はい、シスター。必ず」
カテリナの心配する言葉を最後に、幹部会は荒れることもなく終了した。