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み ん と
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閑話休題 「黒瀬の構成」
B級隊員用訓練室。
「……いや無理だろこれ」
個人戦ブースから出てきた隊員が、 開口一番そう言った。
周囲が笑う。
「またか」
「何人目だよ」
最近、 少し増えていた。
――黒瀬構成を真似する隊員。
ダブルハンドガン。
カメレオン。
グラスホッパー。
バッグワーム。
最近のランク戦で結果を出している、 黒瀬の近接奇襲型構成だった。
「いや理論上強いんだよ?」
端末を見ながら隊員が言う。
「消えて近づいて横取って逃げる」 「しかも銃だから射程あるし」
「あー」
周囲が頷く。
「アタッカーみたいに真正面で斬り合わなくていいんだよな」
「反撃圏入る前に削れるの普通にズルい」
「距離感バグってんだよアイツ」
別の隊員が苦笑する。
問題は。
“出来ない”ことだった。
「まずトリオン足りねぇ」
「それ」
弓場さんみたいな高威力のハンドガン二丁。
カメレオン。
バッグワーム。
さらに、グラスホッパー。
見た目以上に消費が重い。
結果。
トリオン量が足りない隊員だと、 どこかを削る必要が出る。
「俺ハンドガン弱くなったんだけど」
「威力足りなくなるよな」
「削り切れねぇ」
黒瀬は近距離で、 一気に削り切る。
だが。
トリオン量が低いと、 単純に火力が落ちる。
結果。
仕留め切れない。
撃ち合いになる。
普通に負ける。
「あとカメレオン維持キツくね?」
「途中で切れた」
「草」
笑いが起きる。
実際、 かなりシビアだった。
カメレオンは継続的にトリオンを消費する。
しかも黒瀬構成は、 グラスホッパーと併用する場面も多い。
普通ならかなり重い。
「いや黒瀬よくあれ維持できるな」
「そもそもトリオン量おかしいんだよ」
「玉狛の千佳くらいあったろ確か」
「だからあんな贅沢構成出来んのか……」
ダブルハンドガン。
カメレオン。
グラスホッパー。
全部積んだ上で、 火力まで維持している。
真似すると初めて分かる。
――あれは、 かなりトリオン量前提の構成だった。
「しかも索敵ムズすぎる」
「それな」
「黒瀬なんであんな位置把握できんの?」
見えない相手。
入り組んだ地形。
逃げ道の確保。
全部同時に追う必要がある。
だが。
普通は追いきれない。
「俺そもそもカメレオン起動前に見つかったわ」
「分かる」
「そもそも敵より先に見つけられないわ」
かなり致命的だった。
しかも。
「隠れるのもムズいんだよな」
「黒瀬全然見つかんねぇの意味分からん」
カメレオンを使えば消える訳じゃない。
位置取り。
止まるタイミング。
ルート選択。
全部必要。
「あとレーダー確認した瞬間に横取られるの怖すぎ」
「あれ対応無理だろ」
「視線切れる瞬間狙ってくるの嫌なんだよ」
真似しようとして、 初めて分かる。
黒瀬は、 ただ消えている訳じゃない。
かなり特殊だった。
その時。
訓練室入口。
黒瀬本人が入ってきた。
「あ」
空気が少し止まる。
端末には、 黒瀬構成のシミュレーション画面。
完全にバレていた。
「……すみません」
隊員が若干気まずそうに言う。
黒瀬は画面を見る。
少し考える。
「いや、普通に難しいと思います」
「本人が言う?」
「結構トリオン使うので」
かなり他人事だった。
その横で、 見ていた隊員が苦笑する。
「もうこれ黒瀬専用構成だろ」
「分かる」
「真似すると弱ぇ」
「本人だけ強いタイプ」
その時。
後ろから三上が入ってきた。
画面を見る。
隊員達を見る。
そして即答した。
「だから言ったろ」
深いため息。
「アイツ参考にしちゃダメなタイプだって」