『最後に、あなたの夢はなんですか?』
出た、私の大嫌いな言葉、一文。
ここで『ない』なんて答えたら、
何ごとにも意欲的でなく、継続力がない
無責任な奴だと思われる。
まぁ即答できない時点で、すでにそう
思われているに相違ないが。
『ーえっ、えと、昔は、声優さんに憧れて
そういう感じの学校には行ってました。』
我ながら、情けない回答だ。
苦肉の策で、とうの昔に捨てた夢を出すなんて。
『なるほどー、そうなんですね。
今は声優になりたいとかは…』
『いえ。声優業ってとても難しくて…
今はアニメとかを観る専門ですかね。』
質問を最後まで待たずに、口走ってしまった。
自分には苦しかない人生を他人に
覗かれるみたいだったから。
合否の通知は、後日メールでと言われ
私は挨拶を述べて席を立った。
ー こんなはずではなかったのに。ー
口には出さないが確かに声に出した言葉。
誰にも聴こえない、声。
私は高校卒業後すぐにアパレル会社に就職した。
配属先は、自宅近くの百貨店で当時は
そこそこ有名な婦人服ブランドだった。
就活もせず、この1社だけを受け見事採用。
あわよくば何かしらの役職につけると思い
働いた。
年末年始。
元旦。
クリスマス。
世にいう大イベントこそ稼ぎ時なのだ。
三年間そんな調子で働いて、結局
先輩社員とうまくいかず辞めた。
日に日にそれがヒートアップした結末だった。
私もまだ学生気分だった事もあり
好きにやっていたのも気に障ったのだろう。
次は見つかっていた。カラオケ付きのバー。
幸い面接した日に採用を知らされ、
次の日から働いた。
が、歌えと強制される事が怖くなり
辞めてしまった。
その時は、泣きながら辞めたい。向いてないと
オーナーに直談判した。
次もすぐに採用。一年半で退職。
その次もすぐに採用。約二年で退職。
商店街に小規模の雑貨屋があり
次はそこに勤めた。
そんな調子だから、辞めてもすぐに
採用になるだろう。だって強運の
持ち主だからと、自負に酔っていたのだ。
雑貨屋は契約社員という事もあり、
まぁまぁ安定した日々を送った。
でも、ある日店長が辞めて
別の人が店長になった。
そこからは、雪崩の様に崩れていった。
まず、毎日の様に業務連絡がくる。
休みの日など関係ないのだ。
かと思えば、休みに既読や返信をするな
労働基準が…と言われる次第。
業務ミスなどあれば、鬼の様に
メールがきた。そういう人に限り
直接は言わないのも重々承知していたから、
特に気にもとめず、働いた。
ある日、店の閉店作業を終え
自宅に帰り次の日を当たり前に迎えた。
朝からやけに携帯画面がうるさく、
仕方なく既読をつけない様に開いた。
店のシャッターに鍵が…
終わった。
この文脈の続きはどうせ
かかっておらず、誰かが入った。
この辺りだろう。
すぐさま社長に謝罪と今後ない様にと
厳重注意を受け、その日出勤していた
店長にもメールで謝罪した。
次の日の出勤。店長に再度謝罪した。
だが、その日の夜、別社員から
軽く適当に謝っていたが、ありえない。
そう連絡がきた。
雪崩が加速してきた。
その日から更に連絡頻度が増え、
私は世にいう”うつ”になった。
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