テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「み、碧様っ。なぜ、ここに!?」
「それはこっちの台詞ですよっ。葵からのテレパスで環様が病院に行ったから迎えに行ってくれって、言われたんですっ」
「葵様が……」
碧様の強い語気と表情に、私はびくっとしてしまった。これは怒られても仕方ないことだ。でも、私は生半可な気持ちでここに来たわけじゃないと、碧様を見つめ返す。
「勝手なことをして、すみません。でも、私は」
そこまで口にすると、碧様はいつものように微笑んだ。
「葵から経緯は聞いてます。まぁ、葵が環様のお願いを断るなんてできないから、仕方ない」
環様が金髪で良かった。お陰ですぐに見つけられましたと、胸を撫で下ろしている碧様に尋ねる。
「葵様が私のお願いを断ることが出来ない?」
なぜと思うと碧様は首を慌てて、ぶんぶんと横に振った。
「っと。なんでもないです。さて、ここまで来た環様を追い返すことなんてしません。いっそ、杜若様のそばにいる方が安全です」
碧様はそう言うと私の手を掴んで「こっちです」と、横道の細い通路を走り出した。
私もつられるように走り出す。
「環様、走りながらですが今大聖病院で行われていることを話します。それを知った上で自身の振る舞いを、どうするか決めてください」
「ありがとうございますっ」
「あと、このお礼はそうだな。おいなりさん、百個でお願いします」
私の顔を見てふっと笑う碧様。
私も笑顔で応える。
「──はいっ。頑張って百個でも、二百個でも作りますっ!」
そう言うと碧様は「葵の気持ちがわかるなぁ」と、苦笑したあと。
キリッと真面目な表情で、私に現状を教えてくれるのだった。
碧様に手を引かれながら教えて貰ったことは、葵様が言っていた土蜘蛛が人を吸収していると言う、恐ろしい事実に間違いはなかった。
しかし、病院内の救出作戦は滞りなく進み、死人はなし。
あとは杜若様が土蜘蛛に吸収された人を助けて、トドメを刺すに違いないと碧様は言った。
その報告に鷹夜様なら、碧様が言ったように誰も死なずに土蜘蛛を倒すのではないかと、考えが過ぎったとき、細い裏路地からぱっと広い大通りへと出た。
碧様が静かにと、ざっと物陰に隠れる。私もはぁはぁと息が切れて声が出ずに頷く。
肩を揺らしながら、私も静かに大通りをみると、そこは大聖病院前。
病院の正面だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!