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夜のゾルディック屋敷は、あまりにも静かだった。壁に飾られた白い薔薇は、風もない部屋の中でただ沈黙している。
あなたは、ベッドの上で目を閉じたふりをしていた。
今夜、またイルミに会う。いや、“イルミに会わなければならない”。
「……キルア、ごめんね」
そう呟いて、あなたはひとつの嘘をついた。
「情報収集」と称して外に出る。それはキルアには言えない、旅団としての“仕事”だった。
それともうひとつ——イルミに呼ばれていたのだ。
ただし、兄としてではなく、支配者として。
「来たんだね、ユメ(夢主)」
白く冷たい部屋。イルミはそこで待っていた。
その瞳は暗い闇のように澱んでいて、以前よりも深く、そして狂気を孕んでいた。
「……兄さん、時間がないの。すぐに戻らないと」
「ううん、帰らなくていいよ。ここにいて。……ずっと、ね」
その言葉と同時に、扉が音を立てて閉まる。
背後で鍵が落ちる音がした。あなたの心臓が、ゆっくりと鼓動を速めていく。
「……イルミ?」
「ねえ、おれのこと……嫌いになった?」
あなたは言葉を失った。イルミの声はどこか幼く、けれど底知れぬ恐怖を抱かせる響きだった。
「キルアのところにいるときの君、笑ってた。おれの前ではもう、笑ってくれない」
イルミがそっと近づく。指があなたの髪を撫でる。
「……どうして……キルアに“嘘”をついたのか、教えてよ」