テラーノベル
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「――っ!」
はっと息を呑んで、目を開けた。すぐ隣に横たわるアレクは、苦しそうに胸を上下させ、荒い息を吐いている。
「アレク……?」
縋るように名前を呼ぶと、彼の睫毛が揺れ、閉ざされていた瞼がゆっくりと持ち上がった。
「……バイオ、レッタ?」
張り詰めていたものが、ぷつりと切れる。
「……よかった……本当に、よかった……っ」
泣くつもりなんてなかったのに。視界が涙で滲んでいく。
彼は傷の痛みに耐えるように眉をひそめながらも、ゆっくりと身体を起こす。
「ちょっと、まだじっとしてないと……」
言い終える前に、肩を引き寄せられた。
「……!」
背中にまわされた腕は、強いのに、驚くほど優しかった。
伝わってくる体温に、胸の奥がじんわりとほどけていく。
生きている。
ちゃんと、ここに戻ってきてくれた。
涙を拭い、ようやく少し落ち着いて顔を上げると、アレクはそっと腕の力を緩めた。
――と、その瞬間。アレクの視線が、止まった。
魔力交換のためにまとっていたシルクの祈祷衣が、少し乱れていたからだ。
端正な顔が、みるみるうちに赤く染まっていく。彼はあからさまに目を逸らした。
そもそも、仮面舞踏会の夜に──。でもこうして改めて意識すると、やっぱり恥ずかしい。私は慌てて毛布を引き上げた。
アレクは私から目を逸らしたまま、呟いた。
「……記憶を見たのか」
私は毛布を握る手に、少しだけ力を込めた。
「少し、ね」
そう答えると、アレクの顔がわずかに強張った。
「……そうか」
彼はそれ以上、何も言わなかった。いつものように表情は読みにくい。
「……すまなかった」
「何が?」
「……お前に、ひどいものを見せた」
「あなたのせいじゃないわ」
私は顔を上げた。
金色の瞳と目が合う。
「ねえ、アレク」
「なんだ」
「戻ってきてくれて、ありがとう」
そう言って、私は彼の頬に手を添えた。そして自分から彼に口づけた。触れた瞬間、唇からあたたかなものが流れた。おそらく私からアレクへ魔力が流れ込んだのだろう。
アレクの身体が、びくりと震えた。
「バイオレッタ……」
彼は私の肩に手を置き、かろうじて距離を取った。
「私、魔導書を読んだの」
私は枕元から、大神官が置いていった古い魔導書を取り出した。
「……何を読んだんだ?」
「信頼で結ばれた相手同士が行う、より深い魔力交換の方法よ」
アレクの顔が、爆発しそうなほど赤くなった。
「っ……! そ、そこまでする必要はない」
「どうして?」
「俺を助けるために無理をしなくていい」
「無理なんかしていないわ」
「魔力交換はそもそも心身の負担が大きい。これ以上は――」
私は毛布を握っていた手を離し、アレクの手に重ねた。
「まだ身体もきつそうだし……あなたの魔力、まだ不安定なんでしょう?」
「……」
「でも、それだけじゃないわ」
私は彼を見つめた。
「私が、そばにいたいの」
アレクの瞳が、大きく揺れた。
「……本当に、いいのか」
「ええ」
彼の手が私の頬に触れる。
「バイオレッタ」
「なに?」
「お前は本当に、俺をどうにかする天才だな」
「ふふっ。褒め言葉として受け取っておくわ」
私は目を閉じた。触れた唇から、もう一度、魔力が流れていく。
これは治療だけど、それだけじゃない。
その夜──私は彼の魔力が安定するまで、静かに寄り添い続けた。
コメント
1件
よかった…本当に戻ってきてくれたんだね。アレクが目を覚ました瞬間、一緒に息を呑んだよ。バイオレッタが「無理じゃない、そばにいたいの」って自分の気持ちをまっすぐ伝えるところ、すごく胸にきた。触れるたびに魔力が流れて、二人の絆が深まっていくのが愛おしい…。この距離感、たまらないな。
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ひより
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鷹槻れん@コノカレコミカライズ

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百はな🍑
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