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よし。

鞄を汚してしまった事は最大のハプニング。申し訳ないけど、今となっては結果オーライだ。

後で下に降りて、未早の鞄を洗うため母さんが取り出した中身を確認する。その中に小説があれば回収し、何事もなかった様に中身を仕舞って未早に返す作戦でいこう。大丈夫、俺ならやれる。自分を信じろ。

「未早、突っ立ってないで座れよ」

「あ……じゃ、失礼します」

部屋の中央に置かれているテーブル。彼はその前の座布団に腰を下ろした。

「紅本先輩の家ってすごい大きいですね。お母さんも何ていうか上品で綺麗だし。大事に大事に育てられましたー、って感じが隠しきれてませんね」

「だっ……まぁ、親父が稼いでるからな。ひとりっ子だし、この部屋も広すぎるぐらいだよ」

次いで部屋の中を見回した。パソコンデスクと長いラック、ベッドに衣装ケース、大きな水槽、楽器……それだけ置いても、走り回れるだけの面積がある。

「ゲームもあるけど。鞄綺麗になるまで暇だったらやるか?」

「いや、大丈夫ですよ。代わりにあれ見てもいいですか?」

「ん?」

ゆっくり立ち上がって未早が向かったのは、過去出場した演奏会の写真が並べられてるテーブルだった。

「たくさんありますね。いいなぁー、このホールでもやったんだ」

「場数ならお前も他の一年生より多いだろ」

「そうでもないんです。俺は何もできなかったから」

「え?」

意味が分からなくて聞き返したけど、未早は黙って写真を見つめている。……何だか、その横顔はいつもの彼と少し違っていた。


「……俺、ちょっと鞄見てくるな。座って休んでろよ」


一応声を掛けると彼は頷いたので、そのまま部屋から出た。階段をゆっくり降りながら首を傾げる。

何だろう。

威勢がよくて、ちょっとからかったらすぐ倍返しにしてくるような奴なのに。見るからに元気がなかった。


「ごめん母さん、鞄どう?」

「えぇ、泥は何とか落ちたんだけどね。乾くのはもうちょっと待てるかしら? もう二十時だからできるだけ急ぐけど」

「ありがとう。未早にも伝えとくよ。……ところで鞄の中身はどこに置いた?」

「お願いね。中身は、リビングのテーブルの上よ」


猛ダッシュで向かった。未早の物と思われるペンケース、サイフ、ファイル……。みんな汚れてないから良かった。けど小説が……


無いナリ。


探しても探しても、俺が書いたBL本は見つからなかった。母さんにもう一度確認をとったけど、間違いなくここに全部置いたらしい。

ということはコレ、完全に徒労に終わった……。




先輩にそのBL小説はまだ早いと思います

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