テラーノベル
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高校2年生、冬。窓の外では、冷たい風が吹いていた。
教室の隅で、仁人はスマホの画面を眺めていた。
そこには、勇斗から届いたメッセージ。
🩷『今日もレッスン!終わったら連絡する!』
そのメッセージが届いたのは、午後4時。
現在、午後8時半。
俺は小さく息を吐いた。
💛「……忙しいんだろうな」
はぁ、ため息をつき机にうつ伏せる。
最近、勇斗と会える時間はほとんどなかった。
学校では話せるものの、勇斗は休み時間も先生に呼ばれたり、事務所との連絡をしたりと、忙しそうにしている。
それでも、仁人は何も言わなかった。
勇斗が頑張っていることを知っているから。
その頃、勇斗は事務所のレッスン室にいた。鏡の前で、何度も同じ振り付けを繰り返す。
🩷「もう一回お願いします!」
スタッフが頷く。
🩷「……っ、はあ」
汗が滴り落ちてTシャツで拭った。
きつい。
息を切らしながらも、俺は踊り続けた。
自分よりも上手な人がいる。
自分よりも歌が上手い人がいる。
悔しかった。
でも、負けたくなかった。
仁人に夢を叶えると約束して来たから。
そのとき、担当スタッフが声をかけてきた。
「佐野くん、ちょっといいかな」
🩷「はい!」
「実は、今度のプロジェクトで、デビューを視野に入れた選抜メンバーを決めることになってね」
俺の目が大きく開いた。
「君にも、ぜひ参加してほしい」
🩷「……本当ですか?」
「もちろん。これから忙しくなると思うけど、頑張ってみない?」
一瞬、言葉を失った。
ずっと夢見ていた場所が、少しずつ近づいている。
🩷「……お願いします!」
頭を下げた顔には、隠しきれない笑みが浮かんでいた。
翌日。
放課後の廊下。
俺は久しぶりに仁人を見つけた。
🩷「仁人!」
💛「あ、勇斗」
🩷「今日、一緒に帰ろうぜ!」
仁人は驚いたように顔を上げた。
💛「え、いいの?」
🩷「もちろん!」
その言葉に、仁人の表情がぱっと明るくなる。
久しぶりの二人きりの帰り道。
それだけで、少しだけ心が軽くなった。
夕暮れの帰り道。
二人は並んで歩いていた。
🩷「聞いてよ、仁人」
💛「何?」
🩷「俺、選抜メンバーに選ばれるかもしれない」
💛「……え?」
嬉しそうに話し始めた。
新しいプロジェクトのこと。
レッスンのこと。
事務所の人に褒められたこと。
仁人は、何度も頷きながら話を聞いていた。
💛「すごいね、勇斗」
🩷「だろ?」
💛「うん。本当にすごい」
🩷「……仁人?」
💛「ん?」
🩷「なんか、反応薄くない?」
足を止めた。
💛「え?」
🩷「いや、なんかさ。もっと喜んでくれると思った」
その言葉に、少し困ったように笑った。
💛「喜んでるよ」
🩷「本当に?」
💛「……うん」
少しの沈黙。
仁人は、勇斗の顔を見つめた。
💛「ねえ、勇斗」
🩷「ん?」
💛「最近、全然会えないね」
勇斗は一瞬、黙った。
🩷「……ごめん」
💛「いや、謝ってほしいわけじゃなくて」
俺は視線を落とした。
💛「ただ、ちょっと寂しいなって」
その言葉は、思ったよりも小さくこぼれた。
勇斗は仁人の手を握った。
🩷「……ごめんな」
💛「ううん」
🩷「でもさ、今が頑張りどきなんだよ」
💛「……うん」
🩷「俺、絶対に夢叶えたい」
仁人は笑顔を作った。
💛「知ってるよ」
🩷「だから、もうちょっとだけ待ってて」
その言葉に、俺は頷いた。
💛「……わかった」
本当は、待っているだけでいいのか、わからなかった。
でも、勇斗の夢を止めたくなかった。
だから、笑った。
それから数週間後。
勇斗は、ついに選抜メンバーに正式決定した。
事務所では、デビューに向けた準備が本格的に始まることになった。
そして、勇斗の生活はさらに忙しくなっていった。
学校が終わるとすぐにレッスン。
休日も仕事や練習。
帰宅するのは、日付が変わる頃になることもあった。
俺との連絡も、少しずつ減っていった。
それでも、二人は恋人だった。
たまに会えた日は、以前と変わらず笑い合った。
ただ、一つだけ変わったことがあった。
俺は、勇斗に「会いたい」と言わなくなった。
勇斗は、その変化に気づいていなかった。
ある日の夜。
仁人は、ベッドに座ってテレビを見ていた。
画面には、芸能事務所の新人特集。
そこに、勇斗が映っていた。
まだデビュー前の特集企画だ。
画面の中の勇斗は、笑顔でインタビューに答えていた。
🩷 『将来は、たくさんの人に夢を与えられるアイドルになりたいです』
その姿を見て、俺は嬉しくなった。
💛「……かっこいいな」
思わず呟く。
しかし、次の瞬間、胸の奥が少しだけ痛んだ。
画面の中の勇斗は、自分の知らない顔をしていた。
自分の知らない人たちに囲まれて。
自分の知らない場所で。
自分の知らない夢を語っていた。
仁人は、テレビの音量を少し下げた。
そして、スマホを手に取る。
💛『テレビ見たよ。すごくかっこよかった』
送信。
すぐに既読がついた。
🩷『マジ?ありがと!』
💛「相変わらず、既読早、」
忙しいのに、と内心ではとても嬉しかった。
そのあと、もう一通。
🩷『今度の休み、会えたら会おうな』
画面を見つめた。
💛「……会えたら、か」
その言葉が、妙に心に残った。
同じ頃、勇斗は事務所の帰り道を歩いていた。
スマホを見ながら、仁人のメッセージに笑みを浮かべる。
🩷「……仁人」
大好きな人。
自分を一番に応援してくれる人。
だからこそ、もっと頑張りたい。
もっと大きなステージに立って、仁人に自分の姿を見せたい。
勇斗は、まだ気づいていなかった。
自分が夢に近づくたびに、仁人との距離も少しずつ広がっている。
そして、そんな二人の未来を大きく変える知らせが、すぐそこまで迫っていた。
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コメント
1件
みぅです🤍🥀 第4話、読み終えました……。仁人が「会いたい」って言わなくなったところ、すごく胸に刺さりました。勇斗が夢に向かって頑張るほど、二人の距離が広がっていく感じが切なくて。でも、勇斗が忙しい中でも仁人のメッセージにすぐ既読つけるとことか、まだちゃんと想い合ってるのが伝わってきて……。次の展開、気になりすぎます。続き、楽しみにしてますね🌙