私の名は星街すいせい。Ωだ。
「そろそろ番作った方がいいですよ」
「えー、めんどうなんだよねぇそういうの…」
「だいぶ楽になりますよ?」
「そう言われてもなぁ…」
私はオメガで番がおらず、だれに向けてもヒートが起きてしまう、薬を飲むにしても副作用が辛い。
「うーん…」
「にゃっはろ〜!お疲れ様です!」
うーんと悩んでいると桜色の気心知れたやつがひょっこ
「あ、いいところに」
「へ?…ぐぇっ」
立っていたみこちを抱き寄せて頬に指さした。
「みこちを番にするわ」
「…へ?」
「あー、いいんじゃないですか?」
「でしょ、よろしくね、みこち」
「…にぇ!?」
私はパッと番を選んだ。といっても何もたまたま居たからという適当すぎる理由で選んだわけではない。
「ね、ねぇ、番ってさオメガにとって大事な事なんじゃないの?」
「そうだね」
「そうだねじゃないにぇ!みこでいいの…?」
「うん、なんかみこちがいいなって思った」
「本当にみこがおかしいのかな…」
そして私の部屋で私は項をみこちに差し出した。
「あ、その…見捨てないでよ?」
「…見捨てないよ、あむ」
「んっ…」
ふんわりと嚙みつかれた。
「…あれ?こんなもんなのかな」
「?、こんなもんって?」
「え、ほら雑誌でよく見る身体が熱くなるとか、そういうのあるかなと思ったけどあっさりしてたから…」
「体質じゃない?」
「そっか…ん、よろしくね、さくらみこさん」
「うん、よろしく星街すいせいさん」
私はこの日みこちと番になり、それからすぐに同棲生活が始まった。
「みこち、これどこに置けばいい?」
「洗面台の下!」
「おっけー」
お互いに引っ越し慣れしているからか、バタバタする事もなくスムーズに終わった。
「づがれだぁ〜!!」
「終わったにぇ~、お疲れ様よく頑張ったね」
そう言うと頭をぽんぽんとされ、頭と心が温まり、思わず目が細くなった。
(こうなっちゃうのは、みこちだけだからかな…それとも番になったから…?)
「ふふ、甘い顔してんでぇ」
「いいの、みこちにだけだから」
「そっかそっか」
その言葉が嬉しかったのか長く撫でてくれた。
「あ、そろそろご飯準備しないとだ」
「なら、撫でてもらえたしもっと撫でてもらう為にすいちゃんやるよ」
「言ってくれれば撫でるよ?でも、ありがと」
「ん!任せな」
本当はみこちには、座っててほしかったがみこちはじっとしてられなかったのか、掃除などを始めた。
(でも、助かるなぁ…番がいるっていうより、付き合うって楽ぅ…)
「みこち、ご飯出来たよ~」
「わーいっ」
食事を一緒にテーブルへ運んだ。
「いっただきまーすっ…はふ、おいひい!」
「ふは、それは何より…ふははっ」
「んぇ?そんなにおかしかった?」
「んーん、口元に付いてるから、可愛いなってね」
私は口元に付いたものを指で掬い口へ運んだ。
「ん、美味しい」
「な、な…」
「?」
みこちを見ると顔を真っ赤にさせた。
「あれ、辛いはずないんだけど…」
「おめぇが恥ずかしい事すっからだよ!」
「あれ、照れちゃったの?」
「照れるわ!」
「ふははっ」
そこからの同棲生活はとても居心地良くて甘えたり甘えられたりが続き、気づいた事があった。
「私なんでみこちがいいのかなって思ったんだけど」
「今更?」
「今更今更、今更だけどさ、私みこちの事好きなんだなってわかったよ」
「はっずい事言ってんよ?」
「いいの、みこちしかいないし、みこちにだけだもん」
「そっかそっか」
「私さ、みこちが番でよかった」
私はそっとみこちの太ももに頭を預けてつぶやいた。
「…そっか、そう思ってもらえてよかったよ」
みこちは頭を優しく撫でてくれるのでそのまま眠りに落ちた。
翌朝。
「んぁ…みこち…?」
ぽむぽむと寝る時いたはずの、抱き着いて寝ていたはずの相方を手探った。
「あ…」
みこちが起きたので目が覚めて玄関でお見送りした事を思い出した。
「んー…いない~…」
一人ベッドの上でみこちの定位置をぽむぽむと叩いた。
「…みこちの匂い」
叩いて舞うみこちの匂いに胸の中心がそわっとした。
「…作ろ」
私はみこちのブランケット、洗う予定だった服を集めてベッドの中心でドーナツのようにみこちのものを積んだ。
「んー、満足!」
パタリと真ん中に倒れると何とも言い難い心が満ちる感覚がした。
「ふは…幸せだぁ…」
私はみこちのカーディガンを抱き、顔を埋めて再び眠った。
ふわっと頭に温かい感触がして目が覚めた。
「ごめん、起こしちゃった」
「みこち…んーん、大丈夫、おかえり」
「ん、ただいま…巣作りしたんだね」
「そ!作った!」
「ふふ、よく出来てるよ」
「へへ、でしょ」
「っ…ん、可愛い、ありがと」
温かく優しく微笑んで撫でてくれ、私の胸が温かい感情で満ちた。
そんな甘い日々が続いたある日。
「みこち、たい焼き屋さんあるよ」
「おーっほんとだ!食べる!」
手を繋いでいたので犬にリードを引っ張られるようにぐいっと手を引っ張られた。
「ふはは、焦らんでもたい焼き屋さんは逃げんよ~」
「で、でも、売り切れちゃうかもしれないじゃん!」
「大丈夫だって、焦ってると転ぶ、よ…あれ?」
引っ張られるのに軽く抵抗しようとしたらそのまま膝から崩れてしまった。
「すいちゃん?…大丈夫?」
慌ててみこちは駆け寄ってきてくれたが、そんなみこちの匂いがふわっと香ったのと同時にアルファのフェロモンだろうか甘いものも感じた。
「…ぁ…みこちぃ」
差し出された手を頬に寄せてすり寄った。
「っ…ごめん!みこのせいだ」
「ぇ?」
「帰るよすいちゃん」
「ん…」
私はみこちに支えられ、家に帰った。
「…いったん、ベッド行くよ?」
「ん」
ベッドに着くとそっと下ろしてくれた。
「すいちゃん、ごめん」
「なに、が…?」
「私とすいちゃん番になってないんだ」
「へ…」
ぼやける思考で上手く処理できなかった。
「あのね、ぱっと選んだとしても、大事な相手だし…みこよりももっと良い人たちがいるだろうし、こういう選択は大切にしてほしくて…」
その言葉に少し苛立ちを感じた。
「はぁ?私は、私は…みこちだから、番になってもらいたいんだよっ」
ぎゅっと襟を掴んで寄せるが、上手く力が入らなかった。そんな私の手に手を重ねてきて、悲しそうな顔をした。
「それは一時の感情かもしれない、一緒に暮らしてるからかもしれないよ?ほら、あくたんとかいるじゃん…」
私は苛立ちではなく怒りに変わった。
「ふざけんな!私は、私は…みこちだからいいんだよ!」
「すいちゃん…」
「みこちといると、居心地良いし、言ったよ?みこちの事が好きだって気付いたって!」
頬を温かい雫が伝っていくのを感じた。
「誰かじゃなくて、私はみこちがいいの!…いいんだよぉ…うぅ」
みこちにすがり、頭を胸へ埋めた。
「…ごめんね、すいちゃんが心変わりするかもしてないとか考えてた」
温かい手で頭を撫でてくれた。
「私も、番はすいちゃんが良いって思っててさ、始めは適当に選ばれた感じがしたから、は?とは思ったけど…」
「ん…」
「私も、すいちゃんの事好きだったからさ……改めて番になってくれる?」
「当たり前でしょ、話聞いてた?」
「聞いてたけど念押ししたくて、大事な事だから」
その言葉に少し嬉しくなった、やっと大事にされているのがじんわりと身体に溶け込んできたから。
「もっかい言う、みこちが良い」
「……わかった」
「ほら、早く噛んでよ」
私は項をみこちに見せるとみこちの喉が鳴った。
「本当に良いん…だよね?」
「良いって言ってるじゃん、はたくよ?」
「ごめん、それじゃあ…あぐ……」
項へ少しずつ力が入り、ぶちぶちと音が鳴る。
「ぐっ…」
痛みと一緒に温かいものが流れてきた。
「ぷは…すいちゃん、もう戻れないよ?」
「良いって言ってんじゃんばかちが…」
「っ…そのさ」
みこちの表情が、翡翠が獲物を見る目に変わり他では感じられない匂いをぶつけられた。
「いいよ、もっとみこちで埋めて?」
私は誘うようにみこちの唇に唇を重ねた。
翌日私は言いふらした。
「みこちは私の番!よろしく~!」
そんな事を他のホロメンに言って回っていると、どたどたと足音がした。
「おめぇ!恥ずかしい事やめろ!」
「やだよぉ~みこちは私のって知ってもらわないと」
「何の為のそのチョーカーだよ!」
「えー、だって、嬉しいんだもん」
「うっ…」
「あ、今可愛いな、それならいっかって思った?」
「うっさい…」
「よっしゃもっと言いふらしてくる~!」
「ちょっと待て!」
私は首元に付いた桜を揺らしながら、幸せな追いかけっこをした。
コメント
4件
ハッピーエンド....(尊)こういう系に弱いんよなぁ😭 てか言葉選び最高すぎません!?本当にエモい👍
このクオリティでこの投稿頻度...神か... 習い事行く前に見れてよかったぁ!リクエストありがとうございます!!