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「ぐ……郡司くん、ど……どうしたの? 仕事はきょうは3時までだけど……」

 

未央は周りからの痛烈な視線を感じながら、そつなく会話をするのが精一杯だった。

 

「あと2時間か……そのあと予定ありますか?」

 

「いや、ないけど……」

 

「じゃあ、3時過ぎに迎えにきますね。一緒に行ってほしいところがあるので」

 

あとで迎えに? 

じゃ、と軽く手を振って亮介は隣のお店に入っていった。

 

キャーキャー周りで騒ぐ声がまったく耳に入らないほど、何が起こったのか理解するまでに時間がかかった。

 

──3時。なんとかきょうの仕事は終えた。

 

「先輩、あのイケメン、彼氏ですか?」

 

「あの人、一階のコーヒースタンドの店員さんだよね? ファンも多いみたいだよ」

 

玲奈にも後輩や先輩にもあれこれ聞かれたが、ただの知り合いとしかいまは言いようがない。なんとかみんなの口撃を振り切ってスタジオを出ると、向こうから亮介がニコニコ手を振って歩いてきた。

 

「未央さん、お疲れさまです。じゃあいきましょう」

 

 

「行くってどこへ?」

 

「パンケーキショップの潜入捜査です。駅ビルの一階に新しくできたんですけど、ひとりじゃ入りにくくて。一緒に来てください」

 

「は、はぁ……」

 

駅ビルの一階。亮介の勤めるコーヒースタンドの斜め前に、新しいパンケーキショップがオープンした。行列ができていたが、亮介が先に名前を書いておいてくれたので、すぐ店内に案内された。

 

「未央さん、何にしますか?」

 

「この抹茶クリームパンケーキにしようかな」

 

「僕は明太子パンケーキにします」

 

変わったもの頼むなと思ったけれど、イケメンのことはわからない。毎度のその解釈でさらりと流す。

 

胸の鼓動が、静かで重い。亮介とはmuseで顔馴染みではあったが、こんなふうに一緒にお茶を飲むなんて嘘のよう。そうなるとはとても思えないくらいの薄い関わりだと未央は感じていたからだ。

 

毎日コーヒーを買って、彼から英気をもらっていただけだったのに、いまは目の前にいる。美しすぎる顔立ちが直視できず、未央はうつむいたり、窓の外を見たりしていた。

「ごめんなさい、急に誘ってしまって。迷惑でした?」

 

しゅんとした様子の亮介を見て、未央は慌てて、風が吹きそうなくらいの勢いで首をブンブン横に振った。

 

「ごめんね、私男の人とこういうところに来るの久しぶりで。というか郡司くんがその……あの……」

 

かっこよすぎて直視できないなんて言えるか! ますます顔は赤くなり、体がカチカチに固まっていく。

 

「もう、体調はいいんですか? そうだ、お菓子ごちそうさまでした」

 

はっと未央は顔を上げた。体の力がふっと抜ける。そうだ、お礼。ちゃんと言わなくちゃ。

 

「うん、もう大丈夫。あのとき朝から調子が悪くて、無理して出かけたのがいけなかったんだ。郡司くんがいなかったら死んでたかも。本当にありがとう」

 

未央はペコリと頭を下げた。

すき、ぜんぶ好き。

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