人造人間となった当初、1億3000万あったドクターゲロの戦闘力は、4にまで下落していた。
野心の代わりに下心が芽生え、一般男性にも劣る戦闘力になったゲロは、当面は経過観察という事になった。
18号「まったく! とんだ油断ならないエロジジイだったよ!」
17号「まぁいいじゃないか。世界制圧にも、科学にも興味がなくなったようだし」
孫悟飯「いや、別の意味で恐ろしい存在になったんじゃ……。特に女の子にとっては……」
18号「悟飯の言う通りだよ! ったく。これからも奴の動向には、気を付けなきゃいけないよ」
17号「ハハハ! ……俺たちはゲロの命令だったとはいえ、沢山の街を破壊してしまった。罪滅ぼしに、人間たちの平和を脅かす存在がいないか、影ながら目を光らせとくなんてのも、悪くないだろ」
18号「フンッ! あんたは、どうするのさ?」
孫悟飯「僕は……そうですね。修行する道場も失い、勉強も最先端のものを習い終えてしまった。まだ見ぬ脅威に備えて、道場を探し回る日々に戻る感じですかね」
17号「孫悟飯……」
孫悟飯「はい、なんでしょう?」
17号「自分自身をどう評価しているか分からないが、お前は修行も勉強も十分にしてきたと思うぜ」
孫悟飯「いやいや、僕なんかまだ未熟者で……」
17号「その通りだ」
孫悟飯「えっ?」
17号「お前に足りてないもの……俺も偉そうに言えた口じゃないが、ムダが足りてないんじゃないか?」
孫悟飯「ムダ……ですか?」
17号「お前は、レッドリボン軍の支配に反対していたな。それは何故だ? 人造人間になれば、修行も勉強も仕事も、効率的にこなせると言ったはずだ」
孫悟飯「それは……そうか! 修行や勉強・仕事以外のことも、全部ムダじゃなかったんだ!」
17号「それをムダと捉える、かつてのドクターゲロのような人間もいるからな。そいつの歩んできた人生や背景によって、一概には言えんが……少なくとも、そのムダが楽しいんじゃないか」
孫悟飯「ありがとう17号! ……いや、ラピス!」
17号「孫悟飯……。フッ。久しく誰にも呼ばれていなかった俺の本名を、覚えてる奴がいたとはな」
孫悟飯「ラピス。僕はこれから、しばらく顔を見せに行ってなかった、実家に顔を出してくるよ。そしてお母さんに、ご飯を作ってもらって、パオズ山のハイヤードラゴンにも会いたいな!」
17号「そうか。俺たちはレッドリボン軍のアジトの一部を拠点に、人間たちの復興をサポートする活動をしていこうと思う。あとはそうだな、自然や動物たちを守るなんてのも面白そうだ」
孫悟飯「それはいいね!」
17号「ああ、何か困ったことがあったら、また俺たちのもとを訪ねるといい」
孫悟飯「そうさせてもらうよ、ラピス。じゃあまた!」
18号「バーイ」
それはそれは、温かいやり取りだった。
かつて、悟飯が経験した事のない程に。
あまりの嬉しさに、ダメ押しで問いかけてみる。
孫悟飯「あ、そうだ。18号さんの本名は、何て言うんですか?」
17号「え、ああ……18号の本名はラズリだ」
孫悟飯「僕に勉強の機会を与えてくれて、ありがとうございます18号さん! ……いや、ラズリさん!」
18号「その名前で、呼ぶんじゃないよーっ!」
孫悟飯「えぇーーーっ!?」
17号「孫悟飯、お前は本当に可哀想な奴だよ。良かれと思ったろうに、地雷を踏むんだからな」
孫悟飯「ラピス、僕は帰省するより先に、女心を勉強する旅に出るべきなのだろうか……?」
17号「いや……今のは、どう考えても悟飯のせいじゃない。ただただ、運が悪かっただけだ」
孫悟飯「そんなーーーっ!!」
この始末ぅ。さてさて、この先どうなることやら?
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